第11話分岐路2

「お、王様も、もうす」

「もう話は終わりだ。会話というのは2名以上いて成り立つものだ。お前は誰と会話をするのだ?」

「え?そ、それはま」

「相手がいないなら、会話にはならん。

 我が話してもいいだろうか?」

「…」

「いいな?では話すぞ。

 勇者諸君。よくこの世界に来てくれた。

 だが、この世界はこれと言った窮地に陥っている訳ではない」

「はぁ!?」

「まあ、落ち着いてくれ。

 確かに、これといった理由もないのに呼んでしまったことは申し訳なく思う。

 ただ単に、神々の啓示通りに迎え入れただけなのだからな。

 だが、許して欲しい。

 我々も神々に言われたからには、行動しなくてはならない。

 昔に一度神々の怒りに触れ、世界が滅びかけたことが有り、

 神々の意思は絶対なのだ」


…。理由がないことはそのまま説明するのか。でも、神々が世界を滅ぼしかけたってなんだ?何が神々の怒りに触れたんだ?ちょっと、後で聞く暇があったら聞いてみよう。すぐにここからは出ていくつもりだから…。


「質問ならば受け付けよう」

「どのような待遇になるんでしょうか?」

「国賓扱いになる。

 これは、すべての国々において、同じことだが、

 此方は、呼ばせてもらった身だ。

 流石に、野放しにするようなことはしない」

「そうですか。ありがとうございます」

「此方からも質問をさせてもらってもいいだろうか?」

「はい」

「君は先程教えてくれた子だろう?

 君だけではないが、落ち着いている人が多すぎる。

 怒ったりするものだと思っていたのだが、これは何故だ?」

「移動中に、怒っても何も変わらない。と、教えましたから。

 聞かなかった人には物理的に…ですが」

「…そ、そうか。他には質問はあるか?」

「僕達は何をすれば良いのでしょう?」

「そうだな…。

 君等が望むのなら、悪いことではない限り、なるべく叶えるようにしよう」

「例えば、どんなことが?」

「学校に行きたいのなら、手続きは此方でするし、冒険者になりたい場合も、此方で武器などの様々なものを用意しよう。別に、何もしたくないから。と言う理由で此処にいてくれてもかまわない。

 ただ、勘違いしないでほしいのが、なんでもしていい。というわけではない。

 犯罪を行った場合は、この世界の法で取り締まらせてもらう」


 まあ、それは当たり前だろうな。勇者だからって犯罪が許されるわけがない。


「この世界の法律はどのようなものなのでしょうか?」

「前にこの世界に召喚された勇者によって作られたものだ。だから、君等の世界とさほど変わらないと思う」

「法律について書かれたものをください」

「それは一応全員に配る予定だ。と言っても、法律の本はどこにでもあるがな」


まあ、さっさと此処を離れるために少しお願いをしよう。


「王様」

「な、なんだマサハル」

「魔法が書かれた本をもらえませんか?」

「…な、なんで欲しいんだ?」

「すぐにでも此処を出て、冒険者になりたいからです」

「何故此処を…いや、なんでもない。

 …そうか、ならすぐに用意させよう。

 それと、行くならば、迷宮都市にしてくれ。そこならば何か起きてもすぐに連絡を取ることが出来る」

「王様!なら俺も冒険者になりたいです!」

「駄目だ」

「あいつは良いのに、なんで俺は駄目なんですか!」

「先程の模擬戦のような事が、君にも出来るのならば、許可しよう」

「…」

「だろう。まずは、ある程度の戦闘能力をつけなくては、冒険者になることは許可できない」

「ならっ!」

「勿論、王城で騎士の訓練に参加をすることは構わない」

「ありがとうございます!」


迷宮都市…。どんなところなんだろう?やっぱり、シーフとかそういう人が仲間に必要なのかな?でも、2、3回一緒に潜れば、俺か妹ができるようになってる気がする。まあ、何も分からないのにこんなことを考えてても意味ないか。


「では、一度君達が考える時間を取ろう。ついでに、今日君達が寝る部屋も案内させよう」

「「「お願いします」」」

「マサハルと妹の方は残ってくれ」


「ふざけんなよっ!」って言うテンプレを見てないな…。いや、さっきやったのかな?

男子達にはメイド。女子達には執事が案内してるあたり色々としっかりしてるな。

遥斗は…いや、いいか。きっとたいして気にしてないだろうし。


「それで…。マサハルと妹の方だが、此処は何時出たい?」

「何時でも良いです」

「今日中には出たいです」

「今日中か…」

「無理言ってすみません。唯、お兄様の精神上今日中の方が良いかと思いましたので」

「優恵?」

「そうだな。我もそう思う。なら、手配を始めるか。一時間程待っていてくれ。すぐに準備を済ませよう」

「はい。お願いします」

「…王様。一時間って、それも勇者によって伝えられたものなんですか?」

「ん?ああ。そうだな。昔に召喚された勇者は、法律や時間。単位や製紙法まで教えてくれている」

「そうですか。ありがとうございます」

「じゃあ、此処で模擬戦を再開するなりして時間を潰していてくれ。ただ、魔法や精霊術は使わないでくれると助かる」

「分かりました」


時間軸が違うのか?

それと、王様が俺等のことを何だと思ってるのかが凄い気になる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る