第10話分岐路1

「お兄様。皆さんのところへ行きましょうか」

「あ、ああ。それより優恵の精霊はどこだ?」

「取り敢えず、顕現を止めてもらいました。顕現させている間はずっと魔力が取られていくみたいなので」


魔力が取られてく?俺はそんなことはないんだけど…これも、この精霊に何かあるのか?


「なあ。お前は俺の魔力を取ってないよな?」

「魔力?」

「ああ。魔力」

「何?初めて聞いた」


…。そうきたか。


「こう、力を使う時に消費されるやつだ」

「?」


でも、見た目は魔力使ってないんだよな。どうやってあの攻撃を消したんだ?

もしかして、外に出てる魔力も消してるだけか?

それだったら厄介だな。本当に厄介ごとの宝庫だ。


「まあ、それならしょうがない。俺の中に戻れるか?」

「?多分?」

「じゃあ戻ってくれ」

「…消さないように気をつけないと…」


!?もしかして触られるだけで消えるのか!?いや、怖すぎるのですが!?


「なんで逃げるの?」

「いや、そりゃ逃げるでしょ!?」

「大丈夫。問題無い…多分」

「優恵!止めて!?」

「精霊さん」

「何?」

「消してしまった後でも人間じゃなくすることで、生きさせることはできますか?」

「出来るよ?契約者なら魂までは消せないって神様は言ってたから」

「じゃあ、やっちゃってください。それで失敗しちゃったら私も人間じゃなくしてください」

「優恵!?」

「ん。わかった」

「これで無理矢理ではなく…」

「無理矢理だよ!?それ無理矢理と大差ないからね!?」

「あ、問題なかった」

「いつの間に!?」

「そうですか…」

「じゃあ戻ってる」

「お、おう」


心臓に悪すぎる。気付いたら消されてたとか起きないよね?割りとありそうで怖いな。これは最重要案件が妹の制御者から、精霊の力の制御に変えないと…


「じゃあ優恵行くよ。それと、あとで少しお話をしような」

「…お気持ちはありがたいのですが」

「断られた…死のう」

「ありがたくお話を受けさせてもらいます!」

「是非そうしてくれ」


 言い方が悪いが、あの精霊と違って扱いやすくて助かる。

取り敢えず、俺等以外全員…いや、不思議生物以外集まってるっぽいから、さり気なく集まりに入っていきたいんだけど…

 なんで全員此方を見てるかね?


「おーい遥斗!」

「お、おう」

「(おい、呼ばれてるぞ、いけよ)」

「(あれ見た後だぞ!?怖くて近寄ることすら出来ねえよ!?)」


 なんか精霊に強化してもらったからか、聞こえるんだよね。この強化っていうのも割りとご都合主義のような気もするし。意識すれば強化状態がどういった物かほとんど分かるんだよな。

 何ていうんだろう。例えるなら、ゲームで初見でも操作方法が分かっちゃうような感じだ。

便利なんだけど何か違う気がする。もうすこし、こう、自分で編み出していく感が欲しかった。


「別に怖がる必要はないと思うぞ?」

「い、いやだってしか…ん?ん!?(あれ!?俺声大きかったか!?)」

「(い、いやそんなことはないと思う)」

「聞こえてるぞー」


さっきと同じ大きさで喋っても聞こえるに決まってるだろ…。


「い、いや、うんさっきのは、うん、じょ、冗談だ。冗談ですよ?」

「動揺しすぎだろ」

「い、いやそんなことはないですよ。そ、それより、空が綺麗だと思いませんか?」

「え?おい!馬鹿か」

「え?なんで?」

「空が綺麗な理由を考えろ!」

「あっ…」


 此方を見てから顔を青くしていくのは止めてもらえないかな…そんなにやばかったか?確かに刀を振っただけで地面が削れたのはおか…いや、それじゃないのか。空が綺麗な理由…。あの実験をしていた時か。けど、花火とかで見慣れてると思うんだけどな?他の人もそこまで変にはなってないし。


「なんでそんなに怖がってんだ?」

「い、いやだって、普通の人が魔法を使えるようになるのに一ヶ月ほどかかるって王様が…。あと、なんか、あの変なやつを普通の人がやったら死ぬって王様の近くにいた人が言ってたから…」

「優恵だってあのぐらいは出来るぞ?」

「お兄様。私ではあのようなことは出来ません」

「でも、あの魔法陣なら作れるだろ?」

「一応それなら出来ますが…」

「出来るんじゃん!夜咲さんも出来るんじゃん!怖っ!?兄妹揃って化物!?」

「化物…」


 だよな…そんな物だよな。冗談で言っているようには聞こえないから本気で言っているんだろう。

 何回も経験してるけど、友達だと思ってた人からそういった事を言われるのは本当に辛い。

 初めて経験したのは、小4の空手をやっていた時に、いつも仲良く教えてくれていた、2つ上の男子に言われた時だ。

 あの時は確か、気付いたらその子より上手くなっていて、教えてもらうどころか教えてあげる立場になったからだった筈。

その他にもたくさん言われてきている。ただ、中学生の頃はそもそも相手がいないという問題があったから、そんな事はなかった。

 だから、これを言われるのは相当久しぶりで結構堪える。


「お兄様。気にする必要は無いですよ」

「…そうだな、」

「おい、遥斗…化物って…」

「い、いや、つい」

「貴方達も別に気にしなくていいですよ?言われ慣れてますし。

 それに、人間誰しも自分が許容できないものは化け物扱いしたくなると思いますから」

「お、俺は別にそうい「いいよもう。まあそんなもんだろ」え?」

「気にしなくていいよ。俺も優恵もそんなん今まで相当言われてきてる」

「え?お、おい?」

「まあ、慣れちゃえば問題無い。今までずっとそれで優恵と一緒だったし、これからもきっとずっと一緒なんだろう」

「え、あ、お…い?」

「話は終わったか?」


いるのは分かってたけどナイスタイミング王様。此方としてもこれ以上この話をするつもりはない。


「はい。終わりました」

「そうか。じゃあ、これからのことについて話そう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る