第4話手甲って駄目なの?
「他国の理由はどうなってるんですか?」
「一国は我が国と同じで考えていなかったはずだ。ただ、他二国はしっかりとした理由があるぞ。片方は大々的に異界から勇者を王族の婚約者にすると発表されている。もう片方も国の発展のために様々な技術を教えてもらうつもりらしい」
「確かに勇者召喚をしないと出来ないことだけど、理由としては不十分じゃないんですか?それに突然婚約者にするとか、逆に文句が言われると思います」
「恐らく文句は出ないぞ。あそこの王族は全員が『超』がつくほど美形だからな」
「そういう問題じゃないと思います」
「いや、そういう問題だろう。10人中5,6人は一目惚れするような容姿だぞ?それよりもそうだな、我が国の理由もそれにしようか。どうだ?我の娘と結婚しないか?」
「え゛!?いや、そういうのは両者のど「王様。勝手にお兄様に女を近づけようとしないでくださいね。つい、こう首を『コキュ』ってしたくなっちゃいますから」
「は、はい」
「それよりもお兄様?何故武具を選びに行かれないのですか?」
あれだ、中学生の自己紹介のときと同じ状態になってる。顔は笑ってるのに目が一切笑ってない。『コキュ』って何?いや、わかってるよ?仕草も一緒にやってくれてたから。でも、目が笑ってないと一切冗談には聞こえないんだよ。
「お兄様?」
「え?はい」
「何故武具を選びに行かれないのですか?」
「え、だって優恵のバッグの中に入ってるじゃん」
「手甲ごとき護身用には使えたかもしれませんが実戦には使えませんよ?」
「手甲を使うつもりだったのか!?それよりも、何故マサハルの護身用具が妹さんのバッグに入っているのかが気になるのだが…」
「お兄様の物ですよ?持ってて当然じゃないですか。クラスは別ですけど常時一緒にいるんですから」
「いや、そういう意味ではなく、何故マサハルが持っていない?」
「いや、いつも妹が『授業中は必要ないでしょうから私が持っています』って言って持ってっちゃいますから」
「…そうか。そういえば、勇者達の中でバッグを持っている者は三人しかいなかったが、それは何なのだ?」
「別クラスから入ってきた人は荷物を持ってるんだと思います」
「それでお兄様?武具を選びに行きますよ?」
「は、はい。それで、優恵は防具がないようだけど?」
「まだ選んでないですよ?」
「じゃあなんで戻ってきたんだ?」
「お兄様に女が近づく気がしましたから」
「そ、そう」
妹よ、流石にそれは俺でも引くぞ?実際に女が近づいてたらまだ分かる(俺も優恵に男が近づいてたら何となくわかると思う)が、女が近づく話をしてただけだぞ?あと、お姫様だから『女』って言う言い方はまずいと思う。
「まあ、武器は選びましたよ?この対の短剣です」
「王様、この短剣はどういったものなんですか?」
「ん?それは…確か三日程前に迷宮都市にいる最上位冒険者から勇者宛に送られた物だったはずだ。まだどういった物かは調べられていないからそれまで待ってくれないか?」
「いえ、別に調べなくて大丈夫ですよ?模擬戦で使うだけですから」
「む、そうか。まあそう言うなら別にいい」
「じゃあお兄様行きますよ?」
「ああ」
「我はここで待っているから、好きに選んでくるといい」
「ありがとうございます」
「お兄様のは私が選んであげますから。どういったスタイルで模擬戦をするつもりですか?」
「え、回避しながら手数ん?おい。言うわけ無いだろ」
「もう言ってますよそれ。回避しながら手数で攻めるんですよね」
「ああ」
あー騙された。変えればいいのかもしれないけど、あんないい笑顔をされたらな…。
「じゃあ、私と一緒で短剣2つにしましょう」
「そうしてくれ」
「あ、でも、お兄様だったら帝級精霊を使いこなすことができるんじゃないですか?」
「普通に無理だと思うよ。俺よりも優恵の方が可能性はあると思う」
「そうですか?まあ、だったら短剣2つにしますけど。短剣があった場所はこっちですよ。ついてきてください」
「分かった。それと遥斗達はどこにいるんだ?」
「さっきは大剣の所にいましたよ?それよりも、お兄様は遥斗さんと仲がいいんですね」
「ああ、名前を覚えててくれたしな。普通に話してみると面白いやつだし」
「お兄様の名前を覚えるのは当たり前だと思いますよ?私としては、お兄様の名前を知って喜んでいる女達は滅ぼしたいですが、お兄様の名前を知って喜ぶのは当たり前のことで、喜んでるのは正しいから滅ぼさないんです」
「…。優恵?」
「はい、なんでしょう?」
「此方に来てから過激になってない?」
「そんなことないですよ?ただ…」
「ただ?」
「いえ、少し口を滑らしました。無かったことにしてください」
「え?」
「さあ、つきましたよ。これなんてどうですか?お兄様に似合うと思いますし」
「え、あの優恵さん?」
「どう思いますか?」
「…いいと思う」
「駄目ですね。お兄様の声のトーンが少し落ちましたから別のにしましょう」
それが理由じゃないんだけどなぁ。なんで過激になってるんだ?俺みたいに異世界に来てテンションが上ってるのか?でも、優恵に限ってそんなことはないと思うんだけどな。
「お兄様、これはどうですか?」
「…ん、ああ。どれ?」
「?これですよ?」
「んー。ちょっと貸して」
「はい」
まず、軽く上下に振ってみて、その後と左右。問題無さげなので、腕の動きだけでなく、体の捻りや足を使って軽く降ってみる。ん、まあ、
「重さとか長さは問題無さそうだ。実戦で使えるか?」
「それは此処にあるので問題ないと思います。じゃあ、次はこれで」
「借りるね」
「はい」
左手でだが、同じくまず、上下に。
「…少し重さが合わないなこれ。軽すぎる」
「では次はこれを」
「わかった」
結局、何個かやった後にようやく決まった。決まった後に二本とも使って素振りをしてみたが、問題なく出来た。
「私のは無いですが、お兄様の短剣には鞘にベルトを通す部分がありますね」
「そうだな。模擬戦のは制服ではやらないだろうから、服も探しに行くか」
「お兄様。服なども探しましたが、ここは宝物庫なのでありませんでした。ただ、数は少ないですが、ローブやドレス、靴は有りました。鎧などはたくさん有りましたが、私達は使わないと思うので」
「じゃあ、この鞘は制服のベルトに通すか。それと、ローブも貰いに行こう。靴はまあ、革靴って言うわけじゃないから見るだけ見るが変えないだろうな」
「そうですね。すぐそこにありますので見に行きましょう」
「ああ」
今のうちに鞘を通しておくか。
左右一つずつ着けるのだが、思ったよりもこれが面倒臭い。短剣を片手で持っても片手でベルトを外さなくてはいけない。両手で一個ずつ持つのは論外だ。
結局四苦八苦して移動中に終わらせることが出来た。
「此処ですね。どうします?胸当てがありますから、革の胸当てを先に選びますか?」
「そうだな、そうしよう。…どうした?」
「そうです。お兄様。相手に一番似合うであろう胸当てを選んで着けさせ合いをしましょう♪」
「え?いやべつ「しましょう」わかった」
いや、選ぶって別に差は無、あれ?ちょっと膨らんでたり、まっ平らだったりするんですけ…胸当てじゃん。そうじゃん。女性陣は胸当ての大きさに差があるんだった。妹の大き…駄目だ俺止まれ。でも、一番似合うのだから外したら駄目だからしょうがない。あれ?でも客観的に考えて胸のサイズをジャストで当てるって気持ち悪くない?
「ふふ。お兄様が私のことを考えてくれてます」
悪魔の声が聞こえる。だけど割りと助かった。今ので妹はそんな事は気にしない。どちらかと言うと当てると喜ぶということを思い出した。
んー。大きさはこのぐらいのでいいな。後は種類だけど、同じ大きさでも5,6種類あるんだよね。まあ、妹のだし…
「お兄様私は決まりましたけど、決まりましたか?」
「ああ。決まったよ」
「じゃあ私からお兄様に着けますね。目を閉じてください」
「ん?分かった」
「掛け終わったので両手を上げてもらえますか?」
「分かった」
「きつかったりゆるかったりしないですか?」
「問題ないよ」
「じゃあ反対側もやりますね。…はい、終わりです。目を開けていいですよ」
「んうわっ!?顔ちかっ!?」
「ドッキリです♪で、胸当てはどうですか?」
「黒なんだ」
「ええ。革の間に鱗が入ってるのを確認したので防御力は問題ないと思いますよ」
「ありがとう」
「どういたしまして♪じゃあ次はお兄様の番ですね」
「え、あ、うん。じゃあ目を閉じて」
「はい♪」
まずは掛けるんだけど、これって丁寧にやらないといけないやつだよね?でも、これ丁寧にやったら胸に他が当たるかもしれないんだけど…。
「まだですか?」
「今やるよ」
まあ、当たったら当たったでその時はその時…でやろう。別に怒られることはないだろうし、逆に丁寧にやらなかったときのほうが怒られると思う。ということで、
「掛けるよ」
「はい」
手が!手が震える!収まれ俺の右手!あと左手!ゆっくりゆっくり、慎重に。よっしゃ成功!
「じゃあ両手上げて」
「はい」
後は紐を結ぶんだが、紐が無い。なんで!?落ち着いてよく見て…いや、よく見ちゃ駄目なんだけど!よく見て、あった!あった!あったんだけどなんでそこ!?なんで胸と胸当ての間に挟まってるの!?一部、本当に一部しか紐が見えてない。一回持ち上げる?いや、でもどこを持って持ち上げる!?肩にかかってる部分を持つか?いや、でもそれだと雑だし…。どうする!?
しょうがない。真下から少し持ち上げよう。最重要事項は触れないことで。真正面に行って、…やっぱ美人だな。うんうん。妹に近づくにはまず俺に勝ってもらおう。そうしよう。
で、丁寧に持ち上げ、セーフ!まずは手の震えを止めることから!止まれ!ふぅー!落ち着け俺。良し行くぞ!
「まだですか?」
「っ!ちょ、ちょっと待って。紐が挟まってるから少し持ち上げるね」
「はい。分かりました」
出来れば話しかけないでほしかった!手の震えが再開しちゃったじゃん!落ち着け俺。問題無い。相手は妹だ。妹に欲情など許される訳がない!さあ、再開だ!
良しオッケー成功!。後は結ぶだけだ!
「んっ」
「うおっ!?ごめんきつかった?」
「少し…」
「ごめん!すぐゆるくする!」
「はい」
「良し終わったぁ!目を開けていいよ」
「…」
「何か駄目だった!?」
「いえ、ただ目を開けたら顔が近くにあることを期待していたのに無かったので…」
「…胸当てはどう?それも革の間に鱗があるんだ」
「そうなんですか!色は違いますがおそろいですね!」
「ああ」
「お兄様は黒で、私は白。何か対みたいでいいですね」
「うん。喜んでくれて嬉しいよ」
「じゃあローブも白と黒のにしましょう」
「そうだね」
よっしゃぁ!何も問題を起こさずに終わらせられた!もう、凄い疲れた。これも組手に勝つための作戦とかだったりしたら、もう負けを認めていいかもしれない。
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