異世界に来ました

第1話お姫様?

 安全確認の為に周囲を見回すと、地面に魔法陣?があり、騎士が周囲を取り囲んでいた。一部だけ人数がとても多いから何があるのかと思ったら如何にもお姫様です!っていう人がいた。



「おぉ!!本当に召喚されたぞ」

「シッ!黙れ職務中だぞ」

「へいへい」


…。聞かなかったことにしよ。騎士っぽいのがなにか言ってた気がするが何を言ってたかは聞こえなかった。うん。それと妹の、俺を守るような立ち回りでお姫様が見えなくなった。見たいのに。左右に動いたりするんだけど、それに合わせて妹も動く。そんな俺と妹を他所にお姫様は話を始めた。


「異界の勇者様方、我らの勇者召喚に応じてくださってありがとうございました」

「応じ「止まりなさい」ねえよ!」


 うん。誰かわからないけれども、本当にその通りなんだけれども、黙って。まじで。迂闊なことをしたら死にかねない。本当にお姫様に感謝するべきだよ佐藤くん(仮称)騎士が動こうとしてたからね?

それよりも、


「(なあ、なんで優恵はさっきから俺の視界にお姫様が入らないようにしてるんだ?)」

「(お兄ちゃんが危ないからですよ)」

「(本音は?教えてくれないとお兄ちゃん優恵のこと嫌いになっちゃうよ?)」


 小中9年間ずっと一緒にいたから把握したが、妹は俺に嫌われることを何よりも恐れている。因みに、俺も妹に嫌われるのが一番怖い。まあ俺も妹も両親を除くと、お互い以外に仲がいい人がいないからな。嫌われると完全に一人になってしまう。さすがの妹も一人になるのは嫌なんだろう。

 まあ、何が言いたいのかというと、心が痛むがこう言えば答えてくれる。ということだ。


「っ!!!」


 驚いた顔をした後、悲しそうな顔をして、泣きそうな顔になった。っ…。本当に良心が痛む。やっぱり聞かなければよかった…。偶に分かってるはずなのにこういうミスをしちゃうんだよ。ほんと、自分が嫌になる。妹の口調が丁寧になったのも、俺が『クールビューティーっていいよね』などと言っていたからだし。つい言っちゃう癖を直したい。


「(大丈夫だよ。嫌いになるわけなんて無いんだから落ち着いて話して?)」

「(お兄様、そういうのだけは本当に止めてください。まあ、言うと言ってしまった以上言いますけど)」

「(ごめん。許して。以後気をつける)」

「(お兄様が気にする必要はありません。私が勝手に邪魔をしてしまっていただけですから)」

「(…そんなことないよ。優恵は俺の為に行動してくれたんだろ?)」

「……」

「(どうした?)」

「(違うんです。あの女がお兄様の好みのタイプだと思ったんです。お兄様が私を捨ててあの女と一緒にいようとするんじゃないかと思うととても怖くて…)」


 捨てるなんてあるわけないんだけどな…。てか、俺が捨てられないように努力するべきだ。…んー、まあ確かにタイプかもしれないけどそれだけだな。しかも今の好きなタイプは優恵みたいな感じだからそんなに心配する必要は無い。まあ、恥ずかしいから言えないけどね。


「(確かに可愛いかもしれないけどそれだけじゃん。優恵の方が可愛いと思うよ)」

「(…そうですか?)」

「(ああ)」

「(…ん?あれ…。…さっきのもう一回言ってください!)」

「(やだ)」

「(そんなっ…)」


 やばい。変なこと口走った。無かったことにしよ…あぁ〜!!うん。恥ずかしい。自分の無表情スキルにここまで感謝したのは初めてだ。やばいな。異世界に来たことでテンションが上がってんのかな?普段だったら絶対こんな事言わないのに。ちょっと頭を冷やすべきかもしれない。よし、脚抓ろ…?紙?俺紙をポッケに入れてたっけ?まあ、あとで確認しよう。


「では勇者様方、国王が来るのでそれまで少々お待ちください。国王によって詳しい説明がされるはずです」


……。


「(優恵、話聞いてたか?)」

「(すみません。聞いてませんでした)」

「(だよな)」

「(どうしましょう?)」

「(取り敢えず周りに溶け込もう)」

「(分かりました)」

「夜咲さん。異世界だから不安かもしれないけど俺がいるから大丈夫だよ!いくらでも守ってあげるからね!」

「(お兄様。この人怖いのですが)」

「(優恵を怖がらせるなんて凄いじゃん)」

「(いえ、冗談ではなく真面目に鳥肌が立っているのですが…)」

「おいお前。今は俺が夜咲さんと話してるんだ。割り込んでくるな。お前と夜咲さんとじゃ釣り合わねえよ」

「まじで!?」

「……」

「ん?釣り合うとでも思っていたのかい?釣り合うわけないじゃないか」

「そこに反応したわけじゃないよ!?」

「……」


 妹の目のハイライトが消えました。やばいです。


「(優恵。お兄ちゃん怖い。逃げていい?)」

「(こんなゴミとは話す必要は無いですよ。今後は無視で行きましょう)」

「(分かった。でも、お兄ちゃん逃げていい?)」

「(小学生の頃に誓ったじゃないですか。一蓮托生だって)」

「(いや、そうかもし「夜咲さん、もう大丈夫だよ。俺がいるからこんな奴と話し続ける必要はないんだ」

「……」

「(すまん優恵。逃げるわ。蓮の花と葉も少しの間は離れると言うしな!)」

「(言いませんよ!?)」

「(健闘を祈る!)」

「(お兄様!?)」


 妹には申し訳ないが、あんな変な生物の対処法など分かるわけがない。妹に注目は行っていたみたいだから、俺が逃げても追いかけてくることはないだろう。妹一人でも対処可能だろうし。

 あ、


「席が隣だった人!」

「ん?あ、夜咲だっけ?」


名前覚えてくれてるとかもうこれは友達だな。3年ぶりの友達だ。ていうか、家族以外で久しぶりに名前を呼ばれた気がする!ん?ん?あれ?いま呼び捨てだった?人生で初めて呼び捨てで呼ばれた気がする!


「そうそう。覚えていてくれたようで嬉しいよ!もう友達だよな!」

「あ、ああ。どうしたんだ?そんなキャラじゃなかったと思うんだが」

「ああ、これで人生17人目の友達だ!」

「本当にどうしたんだお前!?ていうか友達少なすぎだろ!?」

「友達がいた期間は小3から、小6までだ。けどこれで高校生も入ったぞ!」

「小3までと中学生の頃は何があった!?」

「ツッコミにキレがあるね!ところで名前は何だ?(これは上手く名前を聞けたのでは?)」

「絶対別人だよね!?小声のつもりだろうけど聞こえてるし全然上手くなかったよ!?」

「うぅ。名前教えてもらえなかった」

「面倒臭っ!?俺の名前は錦遥斗だよ。よろしくな優春」

「あ、ああ!よろしくな遥斗!」

「お、おう」

「良かった。小学生の頃初めて出来た友達には一週間ぐらい引かれてたから不安だったんだ」

「(いや、引かれるのもしょうがないんじゃないか?)」

「何か言ったか?」

「いや、何も」

「そう?」

「そういや、あそこで男子を倒してるのってお前の妹だったよな?」

「あ、あ?何やってんの優恵!?」

「あ、優恵っていうんだ。紹介してくれない?」

「…。優恵と仲良くなりたいんだったら俺を倒していけ!」

「何それ!?もしかしなくてもシスコン?」

「あ、ああ。自他共に認め」


 他がいない…


「どうした?」

「他がそもそもいない場合なんていえばいいんだろう?」

「………」

「………」

「もう俺が認めるから自他共にでいいよ」

「お兄様、楽しそうですね。私は不思議生物の処理に勤しんでいたと言うのに。で、何の話をしていたのですか?」

「優春がシスコンだという話をしていたんですよ夜咲さん!」

「そうなんですか♪教えてくれてありがとうございます。…えっと」

「遥斗です!優春の親友の!」

「ありがとうございます遥斗さん」

「はい!」

「誰だお前」

「やだな〜何言ってんだよ優春(おい、お前の妹はブラコンなのか!?)」

「ん?多分そうだぞ」

「まじか…」

「まじだ。ところで優恵、どうやって処理してきたんだ?」

「私の髪に触ろうとしてきたので鳩尾を殴りました」

「髪に触ろうとしたのか!?すげえなおい。もっと殴ってよかったのに」


てか、普通に俺が近くにいたら男性の象徴を再起不能状態まで追い込んでる気がする。


「本当ですよ。私の髪はお兄様のものなのに」

「ん?(おい優春、お前の妹のブラコンって少し質が違くね?)」

「そんなことないだろ」

「いや、そんなことあると思うんだが…」

「そういえば、不思議生物の取り巻きもうるさかったので沈めてきました」

「あー、あの取り巻きABCな。邪魔になるんだったら早めに潰しておいたほうがいいだろう」

「取り巻きいたの!?それって要するに田邉じゃん!っていうか沈めた!?って本当に沈んでるし!?」

「一々そんな驚くことじゃないだろ。で、田邉って誰」

「元学校一のイケメンで、今は知らんけど前までは運動神経抜群。最近は聞かなくなったが、テストの成績も1位。ただ、女子と自分にはメチャクチャ甘いのに男子に対して厳しすぎて男子友達がいない奴」

「へー」

「へーってお前軽すぎだろ」


いや、そんな物じゃないか?運動神経が抜群と言っても、我が妹に勝てるとは思わないし、実際に負けてるし。勉強に関しても全部満点を取れば1位にはなれるからな。


「おい、遥斗。それに夜咲だったか?お前等よくそこまで騒げるな?お姫様がいなくなったからって、周りには騎士がたくさんいるんだぞ?」

「お、さっきぶり快。優春、夜咲さん、紹介するよこいつは小学生の頃からの俺の友達井上快だ。ちょっと特殊趣味が入」

「お嬢様、私めに何なりと要件をお伝え下さい」

「今は大丈夫よ。直りなさい」

「畏まりました」

「(なあ遥斗、この快ってやつって…)」

「(言うな。それよりも俺は、夜咲さんが手慣れてるのが気になるんだが)」

「(ヨーロッパとかソッチの方で散々やられてたから慣れたんだろうな)」

「(凄いなおい)」

「(そんなもんじゃないのか?)」

「(絶対にそれはない)」


でも何か俺も一緒にやってもらったりしたけどな?なんか全体的に変な場所だったけど…。


「「「国王陛下入室!!!」」」


来たっぽい?それよりも、騎士さん。そこに倒れてる不思議生物と取り巻きABCはそのままなんだな。

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