異性の友達がほしい〜最大の弊害は妹です〜

引きこもり隊

プロローグ

『皆さんは勇者召喚の対象に選ばれました。ここは俗にいう神々の世界。異世界に渡る際に、ここで向こうの世界の環境に適応させるための準備を行っています』


 周囲が騒々しているが、特になんか前にいるイケメンが『ようやくこの時が来た!』などと騒いでいるが、そんなことを気にしている余裕は俺には無かった。


 何故なら、ここに来るのが二回目だからだ。一度目は死んでこの世界(さっきまでいた世界)に転生させてもらった時だ。死因は全く覚えておらず、公園で友だちと遊んでいたら気づいたらここにいた。その時は小6で純粋な時だったから何がほしい?と聞かれた時に、受験期だったこともあり『とてつもない学習能力』と、友達の話していた『妹がいる家庭』を希望した。

 『ラノベ』といった物にハマっていた同級生が『妹』には優しくして仲良くなるべきだ!と言っていたのでただそれを実践して人生を謳歌していた。妹と言っても双子の妹だったが…。


 最初に違和感に気づいたのは8歳ぐらいの頃だった。小学校に入ってから、最初の一年間は妹が俺の傍にいても『まだ慣れていないんだろうな』などと思っていたのだが、小2になり、周囲が女の子は女の子、男の子は男の子の集団を作り始めても俺の傍に居続けたから、俺は疑問に思い、『なんでずっと僕の傍にいるの?』と聞いたら『お兄ちゃんがお兄ちゃんだから』と返ってきた。その時は全く意味がわからなかったがそれを隠すためにも、如何にも分かった風に頷いておいた。今思うとここでもっと掘り下げるべきだったと思う。


 次に違和感に気づいたのは一輪車をやった時だ。それまでは、前世でやったことがあったから出来ても『まあ普通かな』としか思っていなかった。だが、初めてやった一輪車は最初は全くできなかったのに、5分後には普通に乗れるようになっていたのだ。流石にそれには自分でも驚きが隠せなかった。因みに妹は本物の天才のようで、俺よりも速く乗りこなしていた。

 一輪車で違和感に気づいた時には、妹のヤバさは完全に気づいていた。その時妹には友達がいなかったから『どうして友達を作ろうとしないの?』と聞くと『お兄ちゃんがいればいいから』と返ってきて本当に焦り、10分ほど考えた後に『優恵に友達がいないのが心配なんだ』と言った。すると予想が的中したのか、『分かった。友達作る』という返答をもらった。ただ、『お兄ちゃんも友達いないよね』というおまけ付きだったが…。


 まあ、おかげで俺にも妹にも友達ができた。妹の友達を作ろうとしてる時の第一声が『お兄ちゃんのために友達になって』だった時は本当に焦ったがなんとかなった。小3になってようやく初めての友達ができたが、とても嬉しくて友達に抱きついて引かれた記憶がある。


 小4になり、両親が護身の為(妹はとても可愛い)に空手を習おうと言い、妹が『お兄ちゃんと一緒ならいいよ』と答えたため、俺も一緒に空手を習うことになった。因みに親達は俺に対しても言っていたらしい…。妹は3ヶ月程で空手をマスターしてしまい、俺もほぼほぼ同時にマスターした。両親にその事を言ったが信じてもらえなかったので、空手の先生に直接言ってもらうことでようやく信じてもらえた。

ただ、完全に信じてもらえたわけではなかったようで、結局剣道や柔道、わざわざ夏休みに海外に言って海外の護身術や銃を習った。俺もだが、妹は外国語を2ヶ月程習うだけで喋れていて、それも親にとても驚かれていた。その頃には信じてもらえていたようで、護身用というよりも、どんどん吸収していくのを見るのが面白くて習わせていたようだった。そのせいもあって、中学受験はせずに公立の中学校に行くことになった。後日談だが、学校の先生達がとても驚いていたらしい。


 そして妹は中学校での自己紹介の第一声で『女は私の許可無しに私のお兄様に近付かないでください』と言い放った。その時は俺と小学校が一緒だった奴等の努力で事なきを得たが、妹と俺は少し浮いていた。しかも、その後の学期末テストで全教科満点をとってカンニングを疑われ、尚更浮いてしまった。先生にも疑われていたようで、2学期は個室受験となったが、再度妹と俺は満点を取った。その結果、先生達からの疑いは晴れたが同級生からは『先生を買収した』などの噂が流れ尚更浮いてしまい、3年間浮きっぱなしで終わってしまった。小学校が同じだった奴等も周りに合わせて妹と俺から離れていったが、小学生の頃半分ほどは二人きりだったからそこまで苦にはならなかった。が、いろんな視線が集まって居心地が悪かった。妹は一切気にしていなかったが…。


 因みに小学生の頃ずっと妹と俺が一緒にいたからか学校の先生も考慮して中学も合わせて9年間一緒にしてもらえた。逆に言えば高校入学後は妹と俺は別のクラスになることになった。その時の妹の悲しみ方は尋常ではなく、両親も俺もどうしたら良いかわからずに困ったぐらいだ。


 言い方は悪いが、妹とは別のクラスになったおかげで自己紹介を何の問題もなく終わらせることが出来た。それのおかげか、顔合わせ終了後に色んな人が俺の周囲に来てくれた。女子率が思ったよりも高く、隣りに座っていた男子に助けを求めようとして、






 視界に見慣れた姿が見えた。いや、見えてしまった。そいつは『何故人様の兄に色目を使ってるんですか?』と言った。まあ要するに妹だ。そこで、周囲に集まった女子全員と男子が一人目をそらした。ん?だ、んし?気づきたくないことに気づいてしまい、つい『おい!お前こっち向けよおい!お前の顔を覚えて絶対近づかないように気をつけるから!』と言ってしまった。途中、顔を覚えると言った時は目を輝かせていたが、近づかないと言ったらorz状態になっていた。そして、そこに『夜咲さん、話の途中じゃないか。どこに行くんだい?』変なキザっぽいイケメンが後ろのドアから入ってきた。そして前のドアが開いて誰かが入ってきた後に、変なイケメンの後ろから取り巻きっぽい女子ABCが入ってきたところで、足元が光って…、今に至る。


…現実逃避終了。つい、ここに来るのが二回目だから一回目と二回目の間に起こったことを思い出していた。


「お兄様?」

「ん?あ、ああごめん。なんか言った?」

「いえ、ただお兄様が呆けていたので…」

「ああちょっとね。そういう優恵はあまり変わってないな」

「私はお兄様がいればいいので」

「そう」


 当たってほしくないが当たってしまった。それと、俺を転生させてくれた女神様が目を見開いて驚いてらっしゃった。ですよね、俺もめちゃくちゃ驚きましたよ。


『…。適応が完了しましたので異世界へ送らせてもらいます。あなた方に幸福があらんことを』

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