助けてくれたのは


「リュカ、追いつかれちゃう!」

「分かってる!」


 ドラゴン姿のリュカの背に乗りシュトラール城から逃げるけれど、城の上空にも悪魔がいっぱいいてそれも出来そうにない。

 リュカが必死に逃げてくれているけれど……。

 私も炎魔法でなんとか追ってくる悪魔達を追い払うけど数が多すぎる!


「……ちっ、これじゃあ国民全員が石になっててもおかしくねぇな」

「そ、そんな!」

「とりあえず森に逃げるぞエマ。一旦落ち着く場所を──ぁっ!!」


 リュカが背後から飛んできたつららに翼を貫かれてしまう。

 私の視界が一気に急転回! 宙に身を投げだされた。


「エマ!」


 リュカがなんとか私の服を噛んで、耐えてくれるけれど……悪魔達から攻撃魔法を集中されたらおそらく私もリュカも真っ逆さまだ。

 

守れプロ―ト!」


 悪魔達からの集中攻撃直前に私が防御魔法でなんとか魔法の盾を作る。しかしいつまで保つか。

 リュカは背中にも大きなつららが刺さっているようで苦しそうだ。

 あぁ、もう……。


「──もう、私の前で、これ以上誰も傷つかないで……!!」


 泣きそうだった。王女なのに情けないのと、悔しいのと、いっぱいいっぱいいになる。

 その時、防御魔法が破られて攻撃魔法の塊がリュカの背中を焼いた。

 私は人間の姿に戻ったリュカを抱きしめながら、急降下。

 必死にリュカの名前を呼ぶが返事はない。


「リュカ! リュカ!!」

「…………っ、」


 どうしよう。どうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう!!!

 防御魔法を応用して着地の負担を少しでも減らそうとするが、精神が定まらずそもそも魔法が使えない!


 ──もう、今度こそ私は──。


 しかしその時だった。

 突然身体に衝撃が走り、地面にぶつかる。

 ……いや、これは地面じゃない! ドラゴンの背中だ!


「──間に合ったみたいだね!」

「ぎゃう!」

「! エルピス!! そして、えっと、貴方は!?」


 私とリュカを救ってくれたのは私の相棒のエルピスと知らない男の子だった。

 多分私と同じ年の、黒髪で赤い鉢巻を額に身につけている。

 

「とりあえず今はこの悪魔から逃げよう! この近くで隠れることができそうな場所、ある!?」

「! うん。ラーツァの森の洞窟なら多分大丈夫! エルピス、場所分かるね!?」

「ぎゃう!!」

「よし! ならアモン! 殿を頼んだよ!」


 男の子がそう言うと、男の子の黄金琥珀の腕輪から炎が湧いて突然深紅色の髪のこれまた男の子が現れた。

 な、なにあれ!? 腕輪から男の子が出てきた!?

 その深紅頭は私を一瞬だけ見つめた後、悪魔達に手を掲げる。


「──燃え尽きろヘル・ファンアドーム!!」

「!」


 深紅頭の両掌から信じられない炎が湧き上がって、次々に悪魔達を焼き尽くしていく。

 まるで炎が生きているみたいに、どんどん広がっていった。

 

「す、凄い……」


 おじいちゃん並みに凄いんじゃないのこの深紅頭!

 私は彼の顔をまじまじと見つめると、彼もまた私を見てすぐにそっぽを向いた。

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