私が守る
──ソレは、私の大好きな
数粒の種がアミール姫の身体に当たり、地面に落ちる。
私は素早く──その親友の名前を呼んだ。
「──お願い、ドリアードさん! 私に力を!!」
それはただの種だった。
けれど──私の声に応えてくれるものでもあった。
私の声に反応するかのように種はどんどん急成長し──アミール姫の身体を拘束する。
何本もの木々が交差し、大きな樹木として成長したそれはアミール姫の身体を締め付けながら、立派に聳えていた。
アミール姫の動きを止めるには、これしかなかった。
ちなみにこの種、私が望めば、
アミール姫がどうにか身体を捻っているが、流石にこの太い樹木から逃れることは出来ないだろう。
樹木が軋み、屑を散らせている。
なんとか成功したみたい。
まさかこんな短時間に決着がつくとは思わなかった。
アミール姫の得意とする身体強化魔法はあまり長期的な戦闘には向いてないから、すぐに攻撃してくるとは思ったけれど、あんなに速いなんて予想できるわけがない。
「──アミール姫、戦闘続行不能と判断! この決闘の勝利者はエレナ!」
「エレナ!」
ノームが堪らず私を抱きしめてきた。固い胸板に顔を埋めながら、私は顔に熱が籠もる。
周りの歓声と、ヘリオス王の真っ青な顔が認識できた。どうやら王様はアミール姫が勝利し、ノームの妃になることを楽しみにしていたようだ。
それにしても、周りの人はあのアミール姫の異常に気づいていない。
早くなんとかしないと……。
「これで正真正銘、エレナは余の妃だな!」
「いや、ちょっと待ってノーム! アミール姫、どこか様子がおかしいの!」
私はノームの腕から逃れ、未だ抵抗しているアミール姫に目を移す。
するとその時だった。
炎の渦が巻き起こり──樹木を一瞬で燃え消したのだ。
その中心にいるアミール姫は樹木さんから解放され、フラフラと私達の方へ歩いてくる。
やはり、ぶつぶつと何かを呟いていた。
そういえば、彼女、さっき──。
私は唾を呑みこむ。
「……ノーム、ちょっとしゃがんでて」
「エレナ?」
「いいから。私の言うとおりに! 私が彼女に話しかけるから、そのまま動かないで!」
「な、なんだというんだ」
「……アミール姫、聞こえますか?」
「……ナァ、……ワタシモ……」
「アミール、姫……?」
私は彼女を煽らないようになるべく柔らかい声を出すことに努めた。逃げたりして、今の彼女を刺激してはいけないと感じたのだ。
そして──ノームが不思議そうに足を曲げた瞬間だ。
アミール姫の目が、真っ赤に染まった。
瞬時にアミール姫の身体が熱を持ったように輝き出す。
炎が、見えた。
私はしゃがんでいるノームを自分の身体で覆った。
──背中が、焼ける。
やっぱりノームにしゃがんでもらってよかった。
ノームは背が高いから、普通に立っていたら守れなかった。
誰かの叫び声が聞こえる。
これは……セーネさんかな。
痛みがはっきりしていくにつれ、意識が曖昧になっていくという反比例。
目を瞑る前にサラマンダー王子がアミール姫を取り押さえているのが見えた。
ああ、よかった。炎の勇者の彼なら火傷をしないだろうし、大丈夫だろう。
そこで私は襲いかかってくるはずの痛みがパタリと消えていることに気づく。
多分私、焼かれたんだよね? どうして痛くないんだろう。
うわ、焼き肉の匂いする。
ノームが必死に何かを訴えているのは分かるけど、はっきり聞き取れない。
……泣かせてごめんね、ノーム。
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