報告会にて
──三日後、シュトラール王国玉座の間にて。
「──では、我が腕、フォルトゥナ。今回の調査について、報告はあるか」
「はい」
シュトラール城の従者達が興味津々で見守っている中、片膝をついたフォルトゥナが頭を下げた。
「えー、ペランス村の洞窟のドラゴンですが、人間から襲われた切り傷が原因で低体温症を患っていたようです。その為寒さから唸り声が止まらなかった模様」
「迷惑な話だ。それで、そのドラゴンは無事仕留めたのだろうな」
「…………いえ、」
ヘリオス王の顔がきつく締まる。
「どういうことだ」という怒りを含んだ王の声がフォルトゥナを責めた。
「
「彼女?」
「──ヘリオス王」
玉座の間にエレナが足を踏み入れる。しかし皆、エレナが見えなかった。
エレナの背後──そこには、もっと恐ろしい存在がいたからだ。
──ドラゴン。
玉座の間が阿鼻叫喚だ。
「な、なななななななにをしている! 疾く殺せ!!」
「いいえ、ヘリオス王。この子は殺す必要はありません。だって彼女は私の友人ですから!」
間抜けな声を吐き出すヘリオス王。
それを見ていたノームがこっそり口で弧を描いた。
「彼女はルナ。私が名付けました。見寄がないようなので、とりあえず怪我が完治するまでここに置いてもらえませんか? 完治したらちゃんとこの城を出るので。それに人間を襲わないと約束もしてくれました」
「な、な、何を言っておるのだ! ドラゴンが友達!? 仮にも幻獣の一角だぞ!? そんなはず、あるわけない!」
「お言葉ですが我が王。アレックス・アードウェイの手記にはエレナはドラゴンと言葉を交わせることが出来るとあります。実際、エレナは我々の前でこのドラゴンと心を通わせました」
「そ、それならば余計に危険ではないか! このドラゴンがこの魔女の意のままだと言うのだろう!」
ヘリオス王は酷く取り乱していた。
するとそこで、サラマンダーが口を開く。
「いや、それは違う父上」
「な、さ、ささサラマンダー?」
サラマンダーはエレナを横目にせせら笑った。
「こいつはドラゴンと話は出来るが、操ることが出来るわけじゃない。しかもこいつの魔力は恐るるに足りん。せいぜい馬の鼻くそだな。魔女でもなんでもない、ただの命知らずな変人。それが俺の今回得たこの女に対する評価だ」
「なっ!」
エレナが不服そうな声を出すが、サラマンダーは言葉を続ける。
「……俺は、こいつは父上の危惧しているような危険はないと考える。父上は今回の件でこの魔王の娘がドラゴンの腹に収まるか、魔女である証拠を掴んで厄介払いをしたかったようだが……俺からの報告はこの通りだ」
まさかサラマンダーが擁護してくれるとは思わず、エレナはキョトンとしながら反応に困った。
王も同様の気持ちだったのだろう、「そうか、うむ、しかし……」と玉座をウロウロする。
結局、ヘリオス王は今回の調査でエレナを追放するつもりだったらしいが、それは叶わなかったというわけだ。
またエレナに敵意はないことは理解してくれたらしく、昼は地下牢から出ることを許されたのだった。
エレナにとって、大満足の結果である。
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