番外編1 密かな私の想い
『彼』、雨宮遥が学校に来なくなってからどれだけ経っただろう。
同じ部活で知り合って最初は先輩後輩の関係だけだったのにお互いの趣味を知り、先輩後輩以上の関係になり気づけば彼に恋心とも言える好意を抱いていた。
そんな時に彼が付き合い始めたのが今の彼女さんだった。
付き合い始めてから生き生きしていて部活でも成績を出すようになった。先輩としても同じ部の部員としても誇らしいはずなのにどうしてもモヤモヤした言葉にできない感情が溢れて止まらなかった。
それでも彼が幸せなら、そう思っていたのに、駅前で他の男子と腕を組んで歩いているのを見てしまったらしい。
だからもしかしたら学校に来ないのは『彼女』の浮気がバレたんじゃないか、傷付いているんじゃないか、そもそも生きているのか、と心配になる。
話して気づいた彼のこと。
アニメが好きだったり、ゲームが好きだったり、昔友達に裏切られたり、そのせいで自己評価が低かったり……。
だからこそ余計に心配になる。
幸い彼女さんの部活は知っている。幸いに幸いが重なりたまたま部活のやっている日だ。彼のことを1番知っていそうで接点のあるのは彼女しかいない。
連絡せずに休んでいるのは事実なのだから、先輩として聞きに行けば何もおかしくない、やましいことは無いんだ、と言い聞かせる。
「
「待ってくださいね~。かなー!先輩きてるー!」
「今行く!」
「ありがとね~」
「お待たせしました。なんですか?」
「遥くんの事なんだけどさ、部活無断欠席してるんだけど何か聞いてない?」
聞いた途端彼女は呆れた、というか嘲笑うような感じで言った。
「あぁあいつですか。罰ゲームだったんですよね。彼氏といたところ見られたんで別れました。そういうことなんで何があったとか知らないです。」
「へぇ。そういうこと平気で言うんだ。最低だね。別に同じ部活だから肩入れする訳じゃないけど人として軽蔑するよ。遥くん本気で向き合ってのにね……。分かった。じゃあね。」
本当に最悪だ。自分は関係ないはずなのに……。恋だとか、友達だとかじゃなくても気分悪くなるような話だ。
近くで見てきて応援もしてきたからこそ自分にもくるものがある。
このままじゃ彼に何も伝えられないまま会えなくなってしまう気がする。口には出せても言葉にしたくない、そんな最悪な展開が思い浮かんで仕方ない。
──今すぐにでも行かなきゃ。
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