第4話 外れて欲しい予想と予想通りの正解


「粘着も疲れたしそろそろ飯行かん?」

「お、いいな。ラーメンとか?」

「まぁ無難だな。」


 基本的にラーメンは食べないが飯行きを提案してしまった以上ラーメンを断る訳には行かない。というか別に嫌いなわけじゃない。


 いざゲームセンターを出ようとしたその時プリクラの機械から見覚えのある人間が出てくるのを見てしまった。それも腕を組んで。

 どんなに疲れていようと勘違いなんかでは無い。間違いない。『彼女』だ。

 無論三単現の、sheとしての彼女ではなく、恋愛的な意味合いでの『彼女』だ。


 こういう時、人間というのは意外と冷静なものだ。一時の迷いもなくスマホを取り出しカメラを起動しバレないように数枚撮る。

 そして彼女にただ一言写真と共にLINEで送る。

『これ、どういうこと?』


 そこからどうやってラーメン屋まで来たのか、見慣れた景色も道のりも覚えていない。

 意識を引き戻したのは他でもない彼、『ハクア』の一言だった。

「お前どうしたんだよ。いきなり写真撮ったと思ったらボーッとして。」

「あ……うん。えっと……、重くなるけど……いい?」

「別に構わないよ。なんとなく想像つかん訳でも無いし。」

「なら。さっきのさ、腕組んでプリクラからでてきたカップルの女の方、俺の彼女なんだよね。もしかしたら勘違いかもしれないけど、正直持ち物とか服とか俺が誕生日とかにあげたのとかもあるし間違いじゃないだろうな、って……。浮気って考えれば最近冷たかったのも辻褄あうし。」


 なるべく息継ぎをせず、休む隙を自分に与えず、まくし立てる様に言う。そうじゃないと言葉が出なくなりそうだから。

 ここまで話して一息つこうとした時、LINEの着信を知らせる聞きなれた音がした。それは俺に、そしてこの話をしたハクアに答えをもたらす着信だった。

 その答えは予想通りの、そして外れて欲しい予想だった。


『は?何勝手に撮ってんの?彼氏だし。なに?あんた本気で私と付き合えるとでも思ってたの?ウケるwww罰ゲームに決まってんじゃん。』

『そっか……。ごめんなさい。お幸せに。』


 外れて欲しい予想通りの結末にどうかしそうだった俺は単語で返すのがやっとだった。


「わりぃ。先帰るわ。また落ち着いたら遊ぼうな。」

「おまえ、はやまるなよ。」

「大丈夫だよ。……多分。まぁもしなんかあったらデータは全部くれてやる。」


 薄い作り笑いを浮かべて俺はラーメン屋を一人、あとにした。


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