第1話 放課後①
学校での一日も終え、自分の部活であるテニス部に向かう俺、
『最近彼女が冷たい』
もしかしたらそんなのは普通でいわゆる倦怠期、みたいなものだろう、なんて考えている。
高校に入ってジョブチェンジして陽キャもどきになったような俺には想像がつかない。振られてないしまぁいいか、の精神で心配な毎日をどうにか誤魔化している。今週末もデートに行こうと誘ったものの予定があるから、の一点張りで結局この1ヶ月ほとんど口をきけていない。
いつぞやの本やらで見た『浮気』なんじゃないかと不安に駆り立てられながらも部活をサボるわけにはいかない、と自分を誤魔化し、奮い立たせる。
それでもふとした時に不安になるのだ。
自分がオタクで音ゲーマーなのが悪いのではないか、釣り合ってないから捨てられたのではないか、と。
そんな注意散漫になっている中絡んでくる人がいたら先輩しかいない。
「やぁ少年。元気がないじゃないか。どうした。」
いろんなキャラを雑に詰め合せたような口調で絡んでくるこの人は
「いや、まぁ色々あるんすよ。俺にも。」
「振られた?」
そう言って笑う先輩。縁起でもないことを言わないでくれ。
「何?浮気?」
冷たい声が聞こえて俺と先輩は話すのを止める。声の主は間違いなく彼女だ。
「んー?そんなことはしないよ。いくら私でも。遥くんに彼女がいるのは知ってるからね。」
「ならいいけど。先帰るよ。」
「うん。分かった。」
「へぇ。演技……上手いね。」
「じゃ。」
そう一言だけ残して先に帰った彼女を見送り、部活の準備を始める。先輩は上手いから多少休んでもいいのかもしれないけど俺はまだ先輩みたいに上手じゃない。
不思議なもので大事な人ができると何事にも集中してモチベも保てる。だからこそこのままどこか他人行儀で離れた様なこの関係を改善したい、なんて思うのは至極当然のことのはずだ。
せっかく『青春』して部活も恋愛も勉強も遊びも全部いい感じなんだからどれも疎かにしたくない。
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