第3話:任務遂行!!

(午前8:50)



 ここは俺が通う縄文人高校2年1組。俺の席はというと教卓から見て最前列の一番右のジミーな席だ。今朝方、俺がヤツを通報したことでまだ登校していない。俺にとっては授業中の視線を感じずに済むからむしろ好都合だ。


『三上陸軍一等兵おはようございます!!』


 俺が机で寝ているところを後ろで妨害するこの男の名前は吉田倫太郎だ。基本的にはニワカ軍人バカで、その時その時で呼び方を変えてくる。こんな奴でも俺の数少ない友達であることには変わりない。


 俺は後ろを振り向き唐突に バン!! と手銃を打ってみた。


『あ……クソ!肩をやられた!! 誰か衛生兵、衛生兵を頼む!! メディーーク!! ぐぉぉぉ!』


 このようにクラスの中で堂々とやってのける。クラスメイトにはコイツが軍人バカだということが理解されていて触れられることはまずない。俺も付き合いが長いが何を言っているのかサッパリ分からねぇ。そして、こんな奴だが顔が白くイケメンな所が逆に腹ただしいぜこんちきしょう!!


『三上陸軍軍曹!! 今日もコンビニ出勤でございますか?? 』


『ああ……。今日も六時から入る予定だ。』


『何だと!! 貴様!! 歯を食いしばれ!!』


 俺は倫太郎の眉間に手銃を構え バ、バ、バ、バン!! と対応に面倒くさくなり乱射した。


『蜂の巣だと!! グハァ……!!』


 こんな奴でも授業や体育になれば能力を発揮し知識だけで言えばトップを争うほどの実力者だ。こんな性格じゃなきゃかなりモテただろうに本当に宝の持ち腐れだ!! すると、教卓側のドアから変態ストーカーこと環奈が入ってきた。


 クソ、変態ストーカーが来やがった……。


『三上陸軍じょ、上等兵。か、環奈さんであります!! きょ、今日も可愛い〜〜!!』


 そう、コイツは環奈が現れると性格が急変し普通の性格に戻るのだ。本当にコイツの頭の中はどうなってるのやら……。


 すると、環奈が俺の方へと歩いてきた!!それと同時に倫太郎も立ち上がり環奈の方へ歩み寄った。


『か、環奈さん。おはようございます。今日も可愛いですね!!』


 倫太郎の言葉をスルーして俺が座ってる席の前まできたが冷たく 『おはよう。』と声を掛けてきて颯爽に自分の席へと戻っていった。そう、環奈にも俺だけが知りうる2つの側面がある。


 1つ目は俺と2人きりでいる時の変態ストーカー化の側面。

 2つ目は学校などの公的な場でいる時の生徒会長らしい側面である。


 2つ目の性格しか知らなかった頃の俺は正直なところ会長のことが好きだったが今となってはメッチャ引いている。多分、他の人もそれを知れば引くだろうな!!まぁ良心的に言わないけど……。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


(午後3:30)


 ここからが魔の時間の始まりだ!!環奈は学校の外ではストーカー化するから授業が終わり一度まいてから帰宅する必要がある。学校の中でさえ逃げ切るのは困難だが唯一奴をまくための禁断の技がある。それは……。


『ここ、一階の男子トイレの中だ!!』


 男子トイレまではヤツは追ってこない!! は、は、は!! トイレの窓から外に出て校舎をぐるりと迂回し正門から出るというパーフェクトプランだーープフーー。おそらく、ヤツは男子トイレのドア付近の物陰に潜んでいるはずだ!! 脱出するなら今のうち!!


 俺はトイレの窓を開け外に出ようとした瞬間!!窓の外に会長が仁王立ちをしていた!!


『ぎゃぁぁぁぁぁぁーーー!!!!』


 思わず叫んじまったじゃねーか!!


『三上くん、トイレでコソコソ何をしているのですか? まさか、タバコでも吸ってないでしょうね!!』


 男子トイレの窓の外を仁王立ち??

 何がタバコでも吸ってないでしょうねだ!! 嘘つけ!! ただの口実だろーが変態!!流石、変態ストーカー野郎だ! 俺をストーカーするだけあって俺の思考パターンを把握し先回りしてくる!!


 俺はトイレの窓を閉めトイレのドアから出ようとしたが、ロックがかかっていた!!!! この学校のトイレは中から開けることは不可能。外に開閉する回しがあるので外からなら開けることが可能だ!!

 つまり、助けを呼ぶか窓から出るかの2択に縛られたのだ!!


 クソ!! ストーカー女目!! 予想を考慮した上で対策まで打って出るとは一筋縄ではいかない!! 仕方ないが一度窓から…………。


 んん?? そういえば倫太郎のヤツはたしか掃除当番で学校にいるはず。つまり、スマホで連絡して外から開けて貰えばいいのか!! 流石、俺!!こういう時の頭の回転だけはピカイチだ。そして俺は小声で倫太郎に電話をする。


『掃除中すまん、倫太郎。』


『どうされました、三上陸軍少佐!!』


『そんなことはどうでもいいから1階にある男子トイレまで来てくれないか? 』


『いきたいのは山々ですが業務執行中の身でして不可能です、イエッサー!!』


『環奈……陸軍大将もいるのだがどうするかね、倫太郎ええ…………陸軍二等兵。』


『了解!!業務を放棄し任務を遂行します。イエッサー!!』


『頼んだぞ!!』


 俺は電話を切り見事倫太郎を丸め込めるのに成功し無事に倫太郎が駆けつけてくれることになった。しかし、倫太郎がトイレのドアを開けるまで外に立っているストーカー野郎の注意を引かなければ!! 仕方ないが一旦窓の外へ出てストーカーと立ち話をして注意を晒すしかないか……。そして俺は窓を開け外へ出た。


『ま、まだ此処にいたんですね……変………会長。』


『さ、さ、智くん!! あ、ああ……。』


『流石に無理がありますよ会長。俺を逃がさないように貼っているんでしょ!!』


『ん!! いや、違う!! 私は治安維持の為に巡回しているんだ!!』


 ここまでしらを切るとは!!このように学校にいる間は会長モードになってくれるお陰でまともに話せる。普段からこのモードを維持してくれれば俺も助かるのに学校の外に出て人目が無くなった瞬間、変態ストーカーモードへ移行するんだよなぁ……。


『そういえば会長。最近メモ帳に何かを書いてるようですが何を書いてるんですか?』


『な、何のことだ、智くん!! 私は別に君のことなど書いていないぞ!!』


 うっわ!! お約束が無事に成立した……。薄々は分かっていたんだが俺の行動パターンや生活についてなど書かれているのだろう……。キモい!!すると、今度は会長から話題を持ちかけてきた。


『智くんには妹さんがいるのですか?』


『ああ、この学校の1年2組に三上千尋っていう子がいるんだがその子が俺の妹なんだ。』


『へぇ……。妹さんさんとはどういう関係ですか?』


『どういう関係ってただの兄弟関係だって。』


『この間お泊まりした時妹さんの部屋に……いえ、そんなことはなかったですね……。』


 ほぼ言ってたのに誤魔化しは効かないだろう!!んん? 妹さんの部屋に?? 何だがよく分からんが今はスルーしておこう。しかし会長は何で俺にまで誤魔化そうとするんだ??


 すると、後ろでトイレのドアが開き倫太郎が俺を探し回る。

『三上陸軍二等兵何処にいるのでありますか??』


『しまった!! 声がでかい!!』


『あれは倫太郎くん!?!? まさか智くん!!』


 勘付かれちまった!!!!


 俺は急いで窓からトイレに入り窓を閉めた!!そして、倫太郎を引き連れて正門へ向かった!!


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(午後4:00)



 ヤバイ、ヤバイ!! 会長の気配が近づいてくる!!俺は会長に追われる日々を過ごした結果、第6感の気配感知と超絶テクニックを有した、すり足歩行を手に入れたのだ!!


『三上陸軍中佐!! 私を何処へ連れて行くのですか!!』


『いいから黙ってついてこい!!すぐ後ろまで変態ストーカーが近いちまったんだ!!』


『変態ストーカー??? 環奈陸軍軍曹しかいないぞ???』


 会長はすでに10メートル後ろまで迫ってきていた!!


『智くん待て待て待て待て〜〜〜〜〜〜!!!!』


 どんだけ足が速いんだよ!! 高校でも陸上部に入っておけよ!!変態ストーカー野郎!!


『倫太郎!! ここはお前の出番だ!!』


『ちょ!! 智陸軍……。何をす……どぁぁぁ!!』


 俺は倫太郎を後ろの会長に押し付けた!!そして、倫太郎と会長はぶつかり転倒した!!


『か、会長〜〜〜〜。奇遇ですね〜〜。今日は俺に会いにきてくれたんですか!!』


『倫太郎くん邪魔です。智くん!!待って!! 智くんーー!!』


『智なら放っておきましょう。それよりも今日、何処かへ行きませんか? デートでも!!』


『智くんーーーーーーーーーーーーー!! 待ってーーーー!!!!』


 後方で倫太郎と会長の会話が聞こえたが振り向かず黙々と走り続けた……。そして無事に会長に襲われることはなく自宅にたどり着いた。



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(午後4:30)



『ただいまー。』


『バカ兄貴おかえり!!さっそくFPS対戦しよー!!』


 俺の前でバカ兄貴呼ばわりしたコイツは案の定俺の妹だ!! 岸壁のような胸と長い茶髪のポニーテールが特徴の妹である。


『修学旅行から帰ってたのかよ!!悪いな、今日はメチャクチャ疲れてるんだ。コンビニに代理店長として行くまで寝かせてくれ……。』


『バカ兄貴が!!』


 そう告げると妹は自分の部屋へと戻っていった。しまったなぁ……。塩対応すぎたか……。後で妹の部屋までFPSやりに行くか……。


 こうして俺は無事に帰宅することに成功したのだった。これが毎日続くとは………………。



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