第2話:夢と現実=天使と変態
俺は親父と変態ストーカーこと環奈と一緒に自宅で晩御飯を食べ、修学旅行中の妹の部屋に環奈は就寝することになった。勿論、ヤツが妹の部屋で大人しく就寝するとは思っていなかった。念のため、俺の部屋のドアに鍵を掛けベットで就寝したのだった。
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(智の夢の中)
俺は学校を終え、高層マンションが左右に林立している左車線沿いの歩道を一人で歩いていた。草木の揺れる音が聞こえる程の静けさで車通りも少なかった。天気予報では降水確率100%と出ていたのだが、見当違いで青空が広がり雲一つ無い晴天だった。
最近の天気予報は外れてばかりで荷物が増える!! 邪魔で仕方ない!! 学校に置き忘れてた傘で2個になってしまった!! などと文句を考えながら黒いスニーカーを歩ませる。
しばらく歩いていると自動販売機が見えてきた。学校を終えたところだったので飲み物が欲しいと思っていた。ナイスタイミング!!っとイケボ風に心の中で叫ぶ。
自動販売機の前に立った。その自動販売機は数字が揃えばもう1本貰えるという何処にでもあるものだった。まぁ大抵は当たらないけどな!! 小銭を数枚程入れると販売機のボタンが緑に点灯した。
腕を組みながら額にしわが寄る。
うーん……どれにしようかな……。ここは炭酸強めのコーラでいくべきか食感を楽しむフルフルゼリーでいくべきか…………。
下方に視線を向けると缶コーヒーに目が入った。
ここは大人らしく缶コーヒーいっちゃいますか!! 勿論、ブラックではない!!
ピ!! ガタガタン!! と音を立て缶コーヒーが落とし出される。
小銭投入口の横にあるスロットが回り出す。
ピピピピピピピピ………………ピ!! ってマジで当たった!! 今日はついてるぜ!!
さてと次はどれにしようかな?? ガタン!! あれ? おい!! なんで、勝手に出てきやがった!! それもブラック(ホット) じゃねーーか!! このスクラップ販売機!! 俺は一発蹴りを バン!! と入れると同時に空模様が怪しくなる。
取り出し口から2本取り出しブラックではない方を飲みながら歩きだす。
まぁタダで貰えただけよしとするか。しかし、どうするかなぁこのブラックコーヒー。んんん??
ポツポツポツ…………ザァーザァー……。
激しい豪雨が降り注ぐが、いち早く異変に気付いた俺はベストタイミングで傘をさした。
危ない危ない。運が良いのだか悪いのだか……。まさか、販売機にしたから…………。頭の中の霧が晴れないまま進みだした。
左右に林立する高層マンションを抜けると俺の歩道から入れる小さな公園があった。公園には滑り台、ブランコ、屋根付きのベンチがあり、まさに典型的な公園だった。豪雨で視界がはっきりしなかったが屋根付きのベンチで雨宿りをしている人がいた。よく見るとその人は俺のクラスにいる生徒会長だった。
まさか、傘がなくて雨宿りをしてるのか? 俺には傘が2本あるし1本貸してあげるべきか。変に近寄ったら嫌われそうだし。クラスでも 『智のやつ、環奈さんに自分の傘を貸したらしいぞ!!』とか言われたら嫌だしな。
しかし、彼女の制服はびしょ濡れで ブルブルと 小刻みに震えている。まぁ、傘を貸すぐらいならいいか!! 自身の心を割り切り彼女の元へ歩み寄った。
学校随一の美少女だったので心拍数がかなり上昇してしまった。
『ええ……同じクラスの智だけど、余分に傘持ってるからよかったら使って。』
雨粒で黒い瞳に涙を浮かべるように小さく可憐な声で答える。
『あ……ありがとう、智くん。』
可愛い!! 天使の囁きか!! ヤバイ、俺の心拍音聞こえてないよな?? 大丈夫だ雨音で誤魔化せてる。それよりもさっきからずっと体が震えてないか?? クソ!! ブラックコーヒーしかない!! ブラックコーヒー飲んでおけば普通の缶コーヒーを渡すことが出来たのに!!
『環奈さん、ブラックコーヒーでよければどう、いる? 』
何が どう、いる? やねん!! カッコつけすぎにも程があるやろ!!
長い髪を耳にかけ満面の笑みを浮かべる。
『あ……ありがとう。じゃあ御言葉に甘えるね。』
天使の如き視線と神々しさが俺の邪神の心を浄化していく……。ってヤバイ!!ヤバイ!! 本当に天に召されかけた!! このままここにいればクラスの奴に見つかり兼ねないしとりあえず急いで退散するか!!
『環奈さん!! 俺、急ぎの用事ができてもう帰るからその傘あげる!! そんじゃまた明日!! 』
『え、待って……智くん、もう少し何か話そう…………。』
何か言ったような気がしたが雨で聞こえなかった!!そして、俺は豪雨の中をひたすら走った……………。
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(午前6:00)
朝日が窓を伝って俺の顔へ照り続ける。
フフフ、俺は安心して目を覚ますことができるのだ!!何故かってそれはラブコメお約束展開は絶対ないと確信があるからだ????え?? あれ??
ドアの方へ視線ををやると開いていた!! もしかして、その、まさか!! まさか!! まさか!! まさか!!!!!!
俺の掛け布団の中から寝息が聞こえる!?!? 布団の中を確認する間も無く布団から脱し、布団を丸めて部屋にあったロープの類で縛り上げた!!
『智くん!! 真っ暗で何も見えないよ!! 』
この『変態ストーカーが!!』あ!! つい大声出しちまった!!
訛りに鈍った声で否定はするが嬉しそうに
『環奈、ストーカーじゃないよ〜〜。』と言う。
なんで嬉しそうなんだコイツ。もしかしてドMなのか?? キモイ!! もしそうだとしたら、今までコイツに俺がしてきた行為全てが引きつけてたことになってしまうじゃないかぁぁぁ!!!!
今はそんなことどうでもいい、どうやって侵入したかを聞き出すんだ!!!!
『ど、どうやって部屋に入って来たんだ??』
ハキハキとした高らかな声で環奈が話す。
『ええっとね……針金やドライバーを使って開けたんだよ!!』
俺は枕元にあったスマホを手にして電話を掛ける。
『あ、もしもし。早朝に失礼します。部屋に無断外出する不審者がいるので今すぐ来てもらえますか!!!! あ、ありがとうございます!! 毎度お馴染み変態ストーカーでーーーーーす。』
『え?ちょ……ちょっと待って!?!? 智くん!?!? 』
ウゥゥゥゥゥ………………。
自宅の前にパトカーが止まると早々に部屋に警察官が入って来た!!
俺は頭上に手を乗せ頭を低くしペコペコした!!
『毎度毎度、お電話で通報してしまいほんーーと申し訳無いです。』
敬礼の構えとともに警察官は口を開く。
『いえいえ、これも仕事のうちですから!!』
縛り上げた布団へ指をさした。
『この布団の中にいるゴミクソ変態を連行してもらえますか!!』
『了解しました!! 君!! 署の方まで来てもらえるかな!!』そして警察官はロープを解き環奈の両肩を鷲掴みにする。
『え、ちょ!! いやーー!! 変態!!!!』
お前が変態ストーカーだろうが!!!!
嬉しそうな表情をしながら環奈は手を引かれる。
『うえ〜ん!! また連行される〜〜!!!! 絶対また泊まりに来るね!!!!』
強引に彼女の手を持ち警察官が引き連れる。
『いいから早く来なさい!!』
俺は笑顔で手を振りながら心の中で 『今度は来た瞬間、通報する!!通報!!通報!!通報!!…………。』と唱え続けた!!!!
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