第43話 番外編 1-1 ある日の美月君

「美月~、今日は遊びいけるんでしょ? 」

「ずる~い! 次は私でしょ! 」

「え~っ! 次は私だってば。順番は守ってよ」


 三人の女子が、美月の腕を引っ張り、デートの順番でもめていた。

 三人共美月の元彼女で、美月を追って同じ大学を受験した。

 美月は先に推薦で合格していたため、三人の気合いは半端なく、一般受験で見事合格。晴れて四人同じ大学、同じ学部に入学した。


 彼女達は、美月とカウントダウンスキーに行った三人である。


 真面目そうな眼鏡美人がかえで、小柄でパッチリ二重の可愛らしい少女が美鈴みれい、少しキツメな美人が玲香れいかだ。

 三人は幼なじみで、性格はみな違うが本当に仲が良かった。仲が良すぎて、同じ次期に、同じ少年を好きになってしまった。

 三人同時に告白し、三人同時に彼女になり、三人同じ夜に初体験を果たした。しかも、同じ少年と。


 美月は大学生になり、思うところがあり、その他大勢の彼女達とは別れたのであるが、この三人だけは別れた後も彼女であった時と変わらず、美月の側から離れなかった。


「じゃあさ、今日はうちに来てもらえば良くない? そうすれば、みんな一緒にいられるし」


 玲香が提案する。

 三人は、大学に入ってからルームシェアをしていた。


「えーっ!イチャイチャできないじゃない」


 美鈴がプクッと頬を膨らませる。


「だって、彼女じゃなくなったんだから、それはなしでって約束でしょ」

「それじゃ、つまんない! 」

「イチャイチャしたいなら、美鈴は新しい彼氏作ればいいでしょ?」

「そうそう、ほら、同じゼミの本田君。美鈴狙いって噂よ」

「やあよお! 玲香こそ、バイト先のイケメンに告られたって」

「あんなの、とっくに断ったわよ」


 美月とのデートの順番を決めるはずが、なぜかガールズトークに花が咲いていた。

 こんな感じだからか、三人同時彼女が成り立ったのかもしれない。

 数いた彼女達の中で、お互いに顔見知りくらいはいたが、がっつり親友というのは彼女達くらいだった。


「うーん、今日は帰ってくるなって、兄さんに言われてるから、泊めてくれるとありがたいんだけど」

「はいはいはい、私の部屋に泊める! 」

「ダメ、ダメ! 順番! 」

「みんな仲良く……ね? 」


 美月が間に割って入る。


「じゃあ、雑魚寝ね。私右側! 」

「ずるい! じゃあ私は左側ね」


 楓と玲香が美月の左右の腕をつかむ。

 一歩遅れた美鈴は、美月の正面に回り込み、美月に抱きつく。

「じゃ、私は美月の上ね」

「これじゃ歩けないよ」

「バカ美鈴、離れなさいよ! 」


 三人は、美月の回りをクルクル動き回りながら、どうやって寝るか、あーでもない、こーでもないと言い合い、結局美月はベッドで、三人は床で雑魚寝に落ち着いた。


 三人平等、子供の時からの約束であった。

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