第39話 最終話までカウントダウン3
「家で、本格的なフレンチが食べれるとは思わなかったよ」
夏希は、睦月の部屋に戻ってきて、ベッドに横になる。
かなり満腹だったし、シャンパンとワインが入っていて、かなりご機嫌でもあった。
テレビにもでてくる有名フレンチシェフが、わざわざ料理を作りにきてくれたのだ。美味しくないわけがなかった。
事前に予定していたわけではなく、急遽呼んできてもらったらしい。月子の人脈の豊かさがあるから、可能だったのだろう。
父親の大悟は、食事が始まるくらいに来て、終わったと同時に帰って(?)行った。なんでも、十五番目のベビーが高熱を出したとか。
しかも、早く行きなさい! と、月子が送り出したのだから、不思議な夫婦関係である。
「風呂、行くか? 」
「一緒? お義母さん達いるのに? 」
「夫婦なんだから、問題ないだろ? うちの風呂はでかいから、二人で入っても余裕だ。子供の時はよく泳いでたくらいだ」
「行く! 」
泳げるくらいのお風呂、しかも個人宅でって?
夏希は、興味津々風呂場に向かった。
実は、それ以外の目的もあるのだが……。
まず、脱衣所からして豪華だった。十畳くらいの広さがあり、バレエスタジオにあるような大きな鏡が壁にはめ込まれている。洗面台は三つあり、立派なソファーも置いてあった。
「ねえ、この扉は? 」
風呂場とも違う所に扉が二つあった。
「こっちはトイレ、こっちは開けると庭に出る。プールから風呂に直に行けるようになってる」
睦月は、さばさばと脱ぐと、先に風呂に入っていった。
夏希も慌てて脱いで、タオルを巻いて風呂場に入る。
スーパー銭湯のように広い風呂場だった。確かに、子供なら泳げるだろう。
「睦月さん、洗ってあげる」
身体を洗い始めていた睦月の後ろに座ると、睦月の背中をボディソープを泡だて、手で優しく洗う。
後ろから抱きつくように、前も洗った。夏希の胸が背中に当たり、睦月の意識が背中に集中してしまう。
これは、どんな拷問だ?
睦月は、ムラムラしてくるのを抑えようと、頭の中で必死に、今日会った取引先の禿げ頭の社長の顔を思い浮かべた。
泡だてた手が睦月の股関に伸び、どこよりも丁寧に洗い出したとき、睦月はギブアップした。禿げ頭くらいじゃ、どうにもおさまりがきかなかった。
「さすがに、ここじゃまずいからな、ストップだ」
夏希の手を止め、シャワーを浴びる。
夏希は、睦月がシャワーで流している間に自分はさっと洗い、睦月と一緒に湯船に浸かる。
「くる前に、お風呂入ってたんだ」
確かに、抱きしめた時、夏希からはシャンプーのいい香りがしていた。
夏希が睦月と一緒に風呂にきたのは、広い風呂にも興味はあったが、何よりさっき迷走して出た考えを実行しようとしたのだ。
睦月に風俗エステ店に行かれないよう、店で受けるだろうサービスを、夏希がすればいいのでは?というのが、迷走した末に出た結論だった。もちろん、そんな店で働いたことなどないから、どんなサービスがあるのかはわからなかったが、やれるだけはやってみようと、チャレンジしてみたわけだ。
夏希は、今まで受け身ばかりだったため、どうやってそういう行為に持ち込めばいいのかわからず、とりあえずお風呂で洗う流れでいけば、睦月に満足してもらえるかも……と思ったのだが、途中で止められてしまい、ただいま思案真っ只中にいた。
夏希の頭の中が、そんな迷走状態になっているとは露知らず、睦月は夏希が積極的になった心境の変化をおもんばかっていた。
わっかんね〰️!
やっていいのか? ダメなのか? どっちだあ〰️!!
今の夏希を見ていると、もう少しでできそうだった時の夏希のような気もする。なんで元に戻ったのか、さっぱりわからなかった。
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