MISSION2 作戦

 朝っぱらから無線がうるさい。目覚ましより先に鳴るな、鬱陶しい。

 私はイライラしながら無線を取った。


「なんだぁ? 人の眠りを邪魔するなよ」

「K、作戦行動の開始報告をせよ」


 お、このオペレーターは新人か。ならこれも無理もないだろう。ちょっと遊んでやる。

 上司は慌てるだろうな、あははは。


「はぁ? いつ始めるかは私が決める。お前らに指図されたかないね」

「な、何を言うか! これはお前の上司からの命令だ。報告怠慢は処罰対象だぞ!」


 ははーん、こいつ生真面目だな。物の言い方が堅物そのものだ。遊び甲斐があるぞ。


「ふーん、そんな事言うんだ。だったらもう動いてやんない」

「お前、任務すら放棄する気か!」

「放棄したらどうするのさ。ここまで来て縛り上げる? 最もここに来れたらの話だけど?」


 結構な大声でおちょくる様に言ってやった。あははは、初日は楽しい始まり方だ。

 そろそろ上司が出てくるだろう。


「貴様、いい加減に」

「止めろ新人! そこまでだ!」


 やっぱり出てきた。上司は青ざめている筈だ。愉快愉快。


「K、すまない。こいつは新人でな、許してやってくれ」

「別にいいよ、まぁまぁ楽しめたし」


 こんな楽しみもなくてはやっていけない。さて向こうさんの欲しい話をしてやるか。


「作戦報告だ。大型なバリケードを作れる資材をくれ」

「了解した。すぐに手配する。しかしなぜバリケードを? いくら大型でも奴らには簡単に壊されてしまうが……」

「ああ、バリケードって言い方が悪かったな。ちゃんと言うならデカい壁を作る資材だ」


 私のやろうとしている事は単純だ。

 この街は少し広い。闇雲に失敗作を駆除しても取りこぼしができてしまう。

 だから壁で一定の範囲に区切り、範囲内の敵を殲滅、終わったら次の範囲で区切って殲滅、これを繰り返すだけだ。


「やりたい事はわかった。だが大掛かりだぞ、大丈夫なのか?」

「人間なら無理だな」

「む……そうか。準備が出来次第連絡する」

 

 これで通信が切れた。


 何とも愉快な朝だった。






 ああしまった。チョコレートを頼み忘れた。






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