case02:優柔不断の末路

1:山林

 「それで、なんでボクらまで家出少女の捜索なんてしているんだ?こういうのって、その地域の生活安全課の仕事なんじゃないの?」

 「事件性があるかもしれないからな。それと未成年の失踪だから」

 大阪府南部に位置する山林の中に、一人の刑事と一人の紙袋を被ったゾンビがいた。

 松神とオオノキだ。


 周囲には何十人もの捜索隊員。警察や消防、近辺住民によるボランティアなど多種多様な人間が歩き回っている。

 少し離れて松神の部下の刑事である青嶋、芝原、藤堂の姿も見える。

 彼らが捜しているのは失踪した高校生、石原麻梨香だ。

 昨晩、友人たちと肝試しをしている最中に、忽然と姿を消してしまったらしい。

 出発地点で待つも、なかなか帰ってこない彼女を心配して、友人たちが様子を見に行くと、彼女の自転車の鍵だけが道の途中に落ちていたという。


 オオノキたちは歩みを進める。

 山のふもとに位置する森の中は鬱蒼としており、朝方であっても薄暗い。小雨が降ったせいか、すこし地面はぬかるんでいる。

 「うわっ」

 と、背後では青嶋が足を滑らせていた。


 「気を付けてください。ここら辺はもう山ですから、分かりづらいですが傾斜がありますよ」

「ハハハ、すみません」

 と青嶋は頭をかく。


 話しかけてきたのは地元の男、大井だ。今回の捜索では一同の案内人を務めている。

 普段は近くにあるキャンプ場を管理しているらしく、周辺の森についても詳しいという。

 「もう少しで廃神社に着きます。もう整備されてはいないので、みなさん足元には気を付けてください」


 ……廃神社。それが高校生たちの肝試しの目的地だった。

 いつごろからか、そこで唸り声を聞いた。などといううわさが立っていたそうだ。

 木々の中を進んでいく。

 少しずつ開けた場所になり、前方には確かに建物が見えてきた。

するとそこでオオノキは足を止めた。


 「どうした?」

 と松神が問いかけると、彼は手袋をした指で進行方向から逸れた茂みの一辺を指さした。

 「あそこ、カラスが多くない?」

 見ると確かに、木々に留まった黒い影がいくつもある。

 「それによく見ると枝がいくつも折れている。誰かが無理に通った痕だ」

 と言うと、オオノキはずかずかと茂みへ進んでいった。

 「お、おい」

 松神も後を追う。


 茂みの中へと分け入ると、すぐにオオノキの背中が見えた。

 その背中越しにはもう一つの人影。地面に寝そべっている。

 オオノキはその場で手をついて、しゃがみ込んだ。

 「うーん。酷い出血の跡はなく、首に索条痕があるわけでもない。若いから持病はないだろう。目が赤い。ということは窒息死かな。これはボクらの事件になりそうだね」

 「……そのようだな。一般人は帰らせないと」

 物言わぬ滝口梨奈は、そこで静かに倒れ伏し、カラスの群れに囲まれていた。

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