第18話

「姉御……っ! 一人でどこに行ってたんですか、また迷子ですか? まったく、これだからうちのポンコツ姫は。心配をかけさせないでください」

「ちょ……っ、迷子じゃないわよ! エクスと話をしてきたの!」


 シャドウ・エクスと会っていたと聞き、シェインの表情が変わる。下手をしたら、また仲間を失っていたかもしれない、と。そんな考えが頭の中をよぎった。


「エクスさんと……? なに一人で行ってるんですか、危ないじゃないですか!」

「待ちなさい、話を聞いて! エクスはもう戦う気はないわ!」

「……はい?」


 レイナの言葉の意味を理解できず、思わず聞き返す。

 レイナはこほんと咳払いをすると、シャドウ・エクスと話してきた内容をシェインたちに説明して聞かせた。


「……さすが姉御ですね。これも愛の力というやつでしょうか」

「なっ、あ、愛!? そ、そうね、仲間だもの! 当たり前よね!」

「レイナさん……」


 呆れたようにアリシアがレイナの名前を呼ぶ。伝説の『調律の巫女』もこうして見てみると可愛らしい普通の少女のようで、なんだか頬が緩んでしまう。

 気を持ち直したレイナが「大事なことを言うのを忘れていた」と、真面目な調子で口を開いた。一行は息を飲んでそれに続く言葉を待つ。


「シャドウが訪れた想区には大きな混乱がもたらされる。これはキュベリエの説明で知っているわよね。それで、エクスは今までに訪れた想区が崩壊していないか確認しに行きたいらしいの」

「それは……何ともまあ、あの人らしいというか……」

「けど、そんなことしたらその想区にさらに影響が出るんじゃねーのか?」

「そうなのよ。けどエクスったら私が言おうとする前にもうどっか行ってて……」


 レイナは困ったように首を傾げた。


「じゃあわたしたちでエクスさんを追いかけて止めればいいってこと?」

「そういうことになるわね。みんな、もう少しだけ付き合ってくれる?」

「当たり前ですよ。僕たちもあの人を放っておくなんて出来ませんからね」


 一行は顔を見合わせて笑った。

 エクスを連れ戻すための旅はまだもう少しだけ続きそうだ。

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