第19話
「みなさん、お疲れ様です。ちょっとよろしいでしょうか?」
疲れを癒そうと祠の中に入ってきた一行に、祠の主であるキュベリエが声をかける。心なしか声が弾んでいてどこか嬉しそうだ。
「その様子を察するに、もしかしてエクスさんが『救済の結末』を受け入れたのか?」
「ぴんぽーん♪ 正解です、レヴォルさん!」
「おお……!」
嬉しそうに驚きと安堵の混じった歓声を上げる一行に、キュベリエはこほんと咳払いをする。まだ言い残していることがあるのだと察し、レヴォルたちは口を噤んだ。
「本来ならば、『救済の結末』が受け入れられれば新たな想区が生まれます。シャドウの元の運命を加味した、新たな想区が。けれどエクスさんは、もともとは『空白の書』の持ち主なので……」
「元にする運命がない。つまり新たな想区が生まれなかったのね」
「その通りです、アリシアさん。なので……」
「なので?」
「連れて来ちゃいました♪」
そう言ってキュベリエは、一人の少年――シャドウ・エクスを自分の前へと押しやった。
彼はばつが悪そうに苦笑いしながら頬を掻く。
「……おかえりなさい、エクス」
「ただいま、レイナ。……待たせてごめん」
「あのー、二人だけの世界に入らないでいただけます? シェインたちもいるんですが」
「わ、分かってるよ! ていうかそんなつもりないから!」
「そ、そうよシェイン! なに言ってるのよ!」
シェインの言葉に二人が声を揃えて反論し、「そういうところですよ……」と、さらに呆れられる。レヴォルたちも顔を見合わせると堪えきれない笑いを吹き出した。
百年前と変わらない笑い声が新生の祠の中に響く。
――いえ、百年前よりも、もっと賑やかかもしれませんね。
キュベリエはそんなことを思うと、ふふっと頬を緩めた。
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