第13話

 シャドウ・エクスが想区を去ると間もなく霧が現れ、レイナたちは想区を後にした。重い沈黙が彼女たちを包み込む。


「……やっぱりエクスさんはあのことを気にしてるんですかね」

「……そうでしょうね」

「けどアレは――」

「分かってる、エクスが悪いんじゃないわ。そんなことみんな分かってるわよ」


 レイナとシェインの会話にレヴォルが口を挟む。


「……あなたたちに何があったのかは分かりませんが、彼……シャドウ・エクスさんはとても苦しんでいるように見えました。何だか、今までのシャドウのように運命を変えたいという確固たる意志も見えませんでしたし……」

「うん……。なんか、迷ってるみたいだったよね。やっぱりわたしには、すごく後悔してるように見えたよ」

「“後悔”してるのよ。悔いても悔いても悔やみきれないって、ずっと――」


 再び沈黙が訪れようとする。が、今度のそれはティムの大声によって阻まれた。

 頭をがしがしと掻きながら大きなため息を吐くと、ティムは言う。


「だぁ~っ、めんどくせえ! もうぶっ飛ばして“救済の結末”を提示するって決めただろ。ここでグダグダ言ってても何も始まんねえよ」


 そうだろ? と言うようにシェインに視線を送ると、シェインはこくんと頷いた。

 さっきまでの暗い雰囲気とは一転、シェインは一行に向けてにっと笑った。


「ティム坊の言う通りです。こんなところで立ち止まっている暇はありません。さっさと“シャドウ”・エクスさんをぶっ飛ばしに行きますよ」


 すっかり姉御肌が板についたシェインの姿にレイナは瞳を潤ませた。

 一行に気付かれないようにそれを拭い、頬を両手で思い切り叩く。

 少しずつ、けれど確実に“エクス”へと近づいている確証はあった。このままシャドウにエクスを好き勝手させるわけにはいかない。

 一行は再び深い霧の中へ足を進めた。

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