第21話 対面

 あやかしはそれぞれ特異な能力を個々に持ち合わせている。

 例えば雪女である下国しもくに本部長は冷気を操り物体を瞬時に凍らす事が出来る。

 そして妖狐である天城あまぎ本部長の場合能力名【空間移動】、その場所を理解する事でその場に瞬時に移動する事が出来る。


「いやー今はネットでどの場所でも画像とか出てくるから、本当僕に優しい世の中になったよ〜」


 っとの事であった。


 妖狐のイメージといえば、人を惑わせるっという曖昧な能力が頭に浮かんだのだが実際の所は実用的な物であった


「まぁ僕のことは置いといて、はいこれ」


 白い無地の袋を渡される、開けるとその中には右手用の黒いフィンガーレス手袋が入っていた。


「説明しよう! この手袋24時間付けっ放しでも蒸れない通気性、極薄なので付けている感を軽減、そしてなんと100%防水、そしてそして手の甲の所に符を2枚を装着出来てしまう完璧なる物なのです! フッフッフッこんなのが作れてしまう僕は本当に天才だね〜」ƪ(˘⌣˘)ʃ


 確かにこれ1つで僕が抱えている悩みが全て解決する事になる……。


「っと言った所だけど1つ欠点、手袋に符をセットすると手袋と符が一体化してしまうから取り出す事は出来なくなるんだよね〜」


「そぅですか……1つは魔力封印符で決まっていますが、あと1つは慎重に選んだ方がいいですね」


「っと思ってね、もう1つプレゼントがあるんだよね」


 そう言うと天城あまぎさんはおもむろにズボンの右ポケットから何かを取り出す。


「はい」


 えっと……スーパーのレシート?

 お稲荷さん1パック6個入り×4


「……あっこれじゃなくて」Σ(-᷅_-᷄๑)


 始めて天城あまぎさんが、焦った所を見た気がする……。

 それにしても狐って本当にお稲荷さん好きなんだな、今言い伝えの確証がとれた瞬間であったのであろう。


「はい、プレゼントはこちらでーす。

 そしてさっき見た物は忘れて下さーい」(・∀・)


 渡された物は何も書かれていない無地の符であった。


「これはね〜その手袋専用として一緒に作った【打撃振動波符】これを発動して対象にパンチすると物体を衝撃波が貫く優れ物なんだよー」


「凄い……ですね、それに僕の武器と相性が良いです」


「それは良かった! 大事にしなよー」


「はい、ありがとう御座います!」


「さてと、じゃあ僕帰るね」


 そう言って瞬きをした瞬間、天城あまぎさんは消えたように一瞬だった。


 ガチャっと部屋のドアが開く、遊馬あすまが帰って来たのである。

 部屋に着いて早々の大きなため息でどんな事があったのか想像ができる……こうなったのは僕のせいでもあるからして、ここはそっとしておいてあげよう。


 それに今はついに寝が入りがストレス無く眠る事が出来る事に喜びを噛み締めている最中であったため、今僕は寝る事しか考えられなかった。

 そんな事っと思う人は多いだろうが、僕にとっては記念日にしても良いぐらいな出来事なのだ。


「あぁ……今日はもう寝よう」


「まだ19時だぞ、あきらもう寝るのかよ! おじいちゃんかっ !!」






 ——時間は数分前に遡り東京陰陽道関東本部


「よっと!」


「本部長、こんな時に何処に言ってたのですか」


 天城あまぎが戻ると本部長の机の前で腕を組み凄い形相で見つめる田生たなまが立っていた


「あっ……いやーちょとね……」


「ちょとなんですか」


 今の現状完全に立場が逆転していた。


「はぁ……まぁいいです、それよりも鬼食おにぐいの調査報告書パソコンに送りますね」


 天城あまぎのパソコンにメールが一件届く、その添付ファイルを開くと鬼食おにぐいの経歴や名前など個人情報が数ページに及び書かれていた。



「えーっもうこんなに調べたの! まだ半日しか経ってないのに……いやーうちの隊員は本当優秀だね〜、もう恐ろしいレベルだよ。

 それで田生たなま君、進展は?」


「はい、17時24分ごろ尾行していた小野目おのめ隊が鬼食おにぐいと交戦、小野目おのめ隊長以外重症……、小野目おのめ隊長は軽症だったため尾行を続けた後住処らしき場所を発見した模様です」


「それはお手柄だけど、なんで交戦する事になった?」


「……それが、人を殺そうとしたそうです」


「襲われた人は人鬼じんきだったのか……」


 田生たなまは手に持っている一枚の資料を見ながら言い辛そうな苦い顔になっていた。

 それもそのはず、陰陽道はまだ人鬼じんきは鬼のみを殺す存在だと思い込んでいるが、その資料には目を背けたくなるほど残酷な事実が書かれていのだ。


「一応襲われた女性を陰陽道で調べましたが、鬼の細胞は何処にも確認出来ませんでした」


「それじゃあ……」


「鬼食は人類の敵にもなったって事です……」


 その言葉を聞いて天城あまぎはうつむき何かブツブツと呟く。

 天城あまぎは何か考え事をする時や戦闘時劣勢になった時、うつむき呟く。

 だがいつもそれは最善の方法を導き出す。


田生たなま君、小野目おのめちゃんに連絡して鬼食おにぐいの住処と出来れば鬼食おにぐいを一緒に写真に撮って、大体の住所を送るように指示して」


「本気ですか……」


「これが今の最善だよ」





 ——同時刻東京のとある場所


『絶望』は今日人を間引く事が出来なかった事に、あの4人組の陰陽師を殺せなかった事に、また平和が遠ざかったと思い……苦しがっていた。


 この世界が狂ってしまったのは全て陰陽道が悪い……。


 ——時間は数日前に遡る

『絶望』は知ってしまう陰陽道の闇に……だが何故知る事が出来たのか?

 闇の中で生きている『絶望』にとって、黒い噂などはよく耳につく。

『絶望』は馬鹿では無い、それなりに知識は備えている、本当にその噂が本当の事だったらまず陰陽道を壊滅させないといけなくなる。


 それから『絶望』は、今出せる精一杯の魔力を眼に注ぎ込んだ。

 その時の『絶望』の眼は数秒だけだったが日本全体を見渡し、陰陽道の深い深い闇より深い深淵を知ってしまうのだった。


 そしてもう1つ……伏見ふしみが生きている事に気付くのであった。

『絶望』は初めて希望の光が射したように思える事であった……のだが、伏見ふしみがいる場所もとい所属している組織が陰陽道である事に。

『絶望』は思う早く伏見ふしみを陰陽道から助けないと……っと



 ——時間は戻る


 今回の傷は深い、それにあの隊長みたいな女に腕を一本斬り落とされている。

 これは回復までもう数分かかるな。


「初めまして鬼食おにぐい


『絶望』は負傷してはいたが常に周りは警戒していた……のに、今何故目の前に人がいるのか信じられない理解出来ない事が起こり数秒の間眼と眼を向かい合わせたまま、体が止まっていた。


「あらら驚き過ぎで声も出ないか〜」


 その言葉で我に返ったか背後に飛び距離を保つ……筈だったのだがもう目の前に詰められていたのだ。


「今のは逃げるため? それとも戦う為の距離の確保かな? でも最初に言っとくね僕の前では全て無意味だから諦めてねー」( ^ω^ )


「お前はなんだ、何故お前からはオーラが何も見えない!」


「やっと喋った♪ それと何? オーラ? よく分かんないけど……まぁいいや、僕はね鬼食おにぐい、君と少しでいい話がしたいんだ」


「お……にぐい?」


「あーごめんごめん、鬼食おにぐいはこっちが勝手につけた名前だからそうなるよね〜、じゃあ……こう呼んだ方が良いかな?」














水篠みずしの 水音みずねちゃん】

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