第18話 曇天
——時間は戻り滋賀県大津市
「おったおった、すまんなー待たせて、君ら関東高の生徒やろ?」
僕たちの少し離れた所から目の前まで手を振り駆けてくる1人の男性。
かなりのどぎつい関西弁にしては若く20代前半位だろうか。
「えらい待たせて悪かったな〜君ら関東高のAグループでええん……よな?」
「あっ……はい関東高の
「おっとっと! もしかして、自分……
目を大きく広げ
「えっ、あっ、はい……そうですが」
「やっぱ
その頃、
「あの頃はな〜」
どうしよういきなり語り始めたけど、聞いていた方が良いのだろうか?
僕達駅前でずっと立たされているんだけど……
「あの頃おっちゃんは陰陽道の大阪支部に入りたての新人隊員でな、その頃に陰陽師としてのノウハウを叩き込んでくれはった先生が
14年前が入りたての新人……30超えてるのか……。
人は見た目では判断出来ないな……。
それよりも気になったのは
それから立ちっぱなしで10分が経過する。
10分が経ってもなお、言葉が湯水の様に溢れてくる。
「あのー、そろそろホテル行きませんかー」
多分皆んな同じ気持ちだと思う。
「おっとそうやな、そうや紹介がまだやったな。
陰陽道京都総本部所属、滋賀第1支部支部長の
——それから僕達はバスに乗り込み琵琶湖沿いを走る。
「ほれ、皆んな見てみぃ琵琶湖の真ん中辺りにでっかい建物立ってるやろ、あそこが君らが本番に戦う舞台や、やけど残念ながら今は立ち入り禁止! せやから訓練は滋賀第1支部にあるレプリカ城でやってもらうからな」
確かに琵琶湖の真ん中にポツンと、けどかなりの存在と風流を醸し出す古城が建っていた。
「訓練は明日からやから、今日はホテルで長旅の疲れをとるとええよ、ホテルは後20分位で着くからもう少しの辛抱やで〜」
その言葉を聞き皆んなは、気を張っていた肩の力を抜く。
「
「えーっと、はい……」
とても偉い人ではあるんだけど、話を聞ける事は有難い事なのだろうが……正直一対一だときついものだろう。
「じゃあちょっと失礼、少しな……聞きたい事があんねん」
先程までバス内に響きわたる声量で話していた人とは考えられない位、しんみりとした声で
「最近家族には会ってるんか?」
「……」
口をつぐむ。
「そうか……なんか悪かったな、あぁ〜今の無しや!
「……いえ、いいんです」
「そうか……それでな、ほんま言いづらいんやけど、おっちゃんな滋賀第1支部での訓練者リストに目を通したんやけどな、
「……何でしょうか?」
「
「——ッ!」
強く握りしめた拳が小刻みに震えていた。
——その日は忘れたくても、忘れられない。
雲が空を覆い昼でも暗く人の穢れをあらわにする様な日だった……。
『
ガッと、
『いっ痛い……』
『何でお前みたいな奴にお前だけが魔力を使えるんだよ! 弱い癖に……弱い癖に!』
痛い……痛いよ……何で私だけこんな目にあっているの……。
助けて……助けてよ……お父さん、何でそこでただ見ているだけなの。
『——』
離れていてよくは聞こえなかったが、口の動きで自分の父が何を呟いたのか分かった……分かってしまった。
【何故、
人の父親からの言葉とは考えられない言葉に
それから高校になるまで虐待は続き、高校になり家を捨てた……。
「……ふぅ、ふぅ」
「大丈夫か……悪かった何か思い出させてしまったか……」
「大丈夫です……大丈夫ですよ、私はもうあの人達には屈しません。
それにあの人達は知らないんです、私が強くなるために隠れて鍛錬してた事に、強くなった私の力に」
一向バスはこれから一週間滞在する、南部フェリスタホテルに到着する。
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