第2話 儚世
——ジリリリリリ……ピッ
いつもの様に目覚ましの音で目が醒める
今日も蒸し暑いな、やはりクーラー高くてもこれは買うべきだな……夏はこれからが本番だ、この様子だと扇風機だけではしのぐ事は出来ないだろう。
それからいつもの様に洗面台に向かい寝癖と5分格闘し、庭の掃除……
……僕は非情な人間なんだろうか、それとも馴れてしまったのか、どちらにしても一般的には周りから心がないなどの罵倒される程に低劣な心の持ち主なのだろう。
『僕の涙は枯れきっている』
「行ってきます」
いつもの通学路? 今日は静かだな、この村の人は大半は高齢者朝はとても早起きでこの時間はいつも誰かしら外で庭掃除などをしている……まぁ器械じゃ無いんだ必ずなんて事は無い。
それにしても今日は
自分の都合のいい解釈をしては、心を落ち着かせ、この現状から逃げようとしていたのかもしれない。
——キィ〜ンコォ〜ンカァ〜ンコォ〜ン
始業のチャイムがなる。
教室に入ると誰も居ない寂しく冷たい空間が広がっていた。
冷房はついていないのに外とこの教室は別次元にも思える程であった。
職員室、体育館、図書室、学校を探し回ったが誰一人としていない静かな校舎。
心臓が激しくドクッドクッと身体中に響く……
「祝日って明日の筈だよな、ハハッ皆んな夏休み前だからって気抜きすぎだよな……」
意味もなく声に出しては自分に都合のいい暗示をかけ、心を落ち着かせていた
「そうだ、僕が皆んなを迎えに行ってあげようかな、うんうんそうだそれがいい!」
校舎を出て、校門を抜ける……
外で出ても登校してくる人影は見当たらない。
息がまた荒くなって来た時、右手奥の角からから1人こちらに歩み寄ってくる人影が見えた。
安堵の感情が身体中の強張った筋肉をほぐしていく。
「よかった、何だ心配した僕が間違って……」
目の前の人、帽子を深く被っているが大体20代前半の男だろうか? この村にはこんな人いない筈だよな。
「こんにちは、今日も暑いですね」
「えっあっ……はい」
いきなり話しかけられ少し焦り、言葉に詰まる。
「私この村に今朝着きまして、何処か泊まるところ探しているんですが、何処かにありませんか?」
「あぁこの村にはホテルとか無いんですよ、それにしても……こんな何も無い村に何か御用ですか?」
「探し物をしてまして……、泊まる場所無いんですね。けど今探し物見つかったみたいなので大丈夫そうです」
両頬の口角を上げ、にっこりと白い歯を見せ笑う。
「そ……そうですか、なら良か——ッ」
急な出来事だった、僕はガッと勢いよく首を捕まれ地面に叩き付けられていた。
「ぐっっ……ガハッ」
(なんて力だ……)
「お前からは何も臭わねぇんだよ」
「ぐぅぅぅ……」
(何を言っるんだ……)
その時横側から熱風の様な風が吹き、男の帽子が飛ばされる
……そこには見覚えのあるものが僕の目の前に現れた、
男の額には
やっとの事で静まった心臓がまた激しく鼓動を始める
「怨むんだったら自分の運命を怨みなよ」
物語でよく使われる言葉、この言葉は被害者が悪い様に言っているが……これは加害者の
「何が……目的……だ」
「君は強いね! 俺の経験上殺されそうになったら大の大人でも泣き叫ぶ所なのに」
「あぃにく……叫けびたくても……ゲホッ、叫べなくてね」
「いいね〜そのお前には屈しないぞって目やはり選ばれた人間は肝が据わっている、さっき殺した黒髪の少女とは訳が違うねぇ」
「——」
「んん? 急にどうしたぁ」
「——」
「あぁ、首絞めてたんだっけなぁ〜もう振り絞っても声も出ない感じってやつかい」
「——」
——それから数十分後……
「
「そうか……こちらもだ、村人は殺された後だった。くそっ何でこんな小規模な村にこれ程までの鬼の群勢が攻めて来ているんだ……」
ピーッザザッ……っと
『こちら第三班、
「こちら
『我ら第三班が担当するB地区41番にて、複数の
もし可能でしたら確認して頂けないでしょうか』
「分かった、すぐにそちらに向かう」
「第一班!すまないがこれから少し離れる。それにより、ここの指揮は
「了解しました」
「それと
「了解しました」
——「すまない待たせたな」
「いえ、来て頂き有難うございます。ではこちらに来て下さい」
隊員は
そこには遠目からも分かるほどに、大量の血がそこら中に飛び散っていた。
「死体の中で特にこの
「これは……」
そこには刃物などの武器を使った形跡はなく、全身を引きちぎり、人の何倍もの強度がある鬼の骨が粉々に砕かれていた。
まさしくそれは
「
「
「
「はい、この学校の反対側です」
野生動物などが村に入って来ないようにバリケードが一面に張られていた。
「
「えっ……あぁ学校で勉強した事ありますが、私はあの逸話は迷信だと思います。鬼はこの世に怨みを持った魂が人々の悪質感情などが絡み生まれてくる存在です。そんな鬼に相手を慈しむ心がある訳ありません」
「そうか……確かに迷信だとは思うが、私は信じたいと思っているよ」
森に入ってから数分、先行する一人の隊員から合図と無線が入る
『学生服?を着たの村人……を確認』
「生存者か……!」
『そのようです、いや!あれは!』
「どうした」
『少し見えづらいですが、額に白銀の角を確認できます!
——「皆んな、今日も暑いね……」
『
「
『また2人でいちゃついてるよ』
「
『
「
『そうだ、ディズニーの計画進めよ』
「
『あぁディズニー楽しみだな〜』
『私もう今からワクワクしてるよ』
「
『僕も皆んなと思い出を作りたいな』
「
「誰と話している」っと誰か背後から話し掛けてくる声で我にかえる。
僕の目の前にはお墓……友だちのお墓、僕はお墓を自分で作ったにも関わらず、信じたく無い現状から逃げようとして幻覚幻聴を発症していたらしい。
「隊長! なぜ話しかけているんですか、相手は鬼ですよ!」
まだ鬼の生き残りがいたか……いや違う、後ろで語り掛けてくる人物からは、とてもいい匂いがする。
僕はゆっくりと振り返る。
「鬼が……涙を流している、それにそこにあるのはお墓……君が作ったのか?」
涙……僕にもまだ涙を流して、他者を慈しむ心があったのか
「……あまり喋りたくはない? ……うん、決めた、君の事を知らないのにこんな対応しか出来なくてごめんね」
当然の対応だ……今の僕は
殺されるのは怖いそれは誰でも当たり前だが、僕は生きる事に疲れてしまっているようだ。
この人なら殺されても未練なく皆んなの所に逝けるとそう思えた……。
風になびく綺麗な黒髪の気が強そうな人……周りの人は僕を警戒し鋭く尖った眼光を向ける中、この人は淡い青色の瞳から涙を流し、泣いてくれている……この人なら。
「有難うございます……」
「……フフッ、君の名前を教えてくれないか」
「
「
あぁとても優しい人だ……
——ドォォン!——
村中に銃声の音が鳴り響く。
——東北本部報告書——
死者47人、生存者……0人
6月6日この日をもって、鬼泣村は閉鎖される事になる。
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