異端なる白銀の後継者
れとると
——《序章》——
第1話 日常
——この世には人類と敵対する「
時は平安時代、
「
「あぁ、だがまだ喜ぶのは早いぞ我らは
それから多くの時が流れ2028年、近代化した日本にはまだ
——『こちら仙台第1支部、東北本部応答して下さい』
陰陽道東北本部に無線で一報が入る。
「こちら東北本部」
緊急の事なのか、少し早口で焦っている様に報告し続ける。
『呪術占いにより本日、
「了解した、直ちに
6月6日僕の人生が変わる大きな事件が起こる事になる。
時は遡り前日6月5日
ジリリリリリッッ……カチッ
目覚しを止め、僕はいつものように起き上がる。
窓からは光が差し込み、チュンチュンと小鳥のさえずりが聞こえる、最近は真夏日が続き寝苦しい日々が続いていたからだろうか……それとも週初めの月曜日だからだろうか、まだ体が怠く思える。
「二度寝したい所だが、中学校に行く時間に起きれる自信がないし、起こしてくれる人もいないからな……」
ゆっくりとベットからおり、いつものように洗面台に向かい寝癖が酷い真っ白な髪と格闘する事5分……髪の毛が丈夫なのはいい事なのだが、毎日の寝癖直しは面倒と思ってしまう程硬く直しづらいのである。
その為髪型は耳や目にかからない程のベリーショートにしている、それからは軽く庭の掃除、柴犬の
これが
「行って来ます」
このいつもと変わらない日常はつまらなそうに思えてそうではない、この変わらない事がこの世の中で一番幸せな事だと思っている。
日常とは前触れも無く、唐突に壊される事が必ず訪れる、自分に至ってそんな事は無いと言う人は山ほど居るだろう、けれどこれは誰にしろ必ず待ち受ける
僕は不運にも15年間で2度経験している、僕には両親、姉、妹がいた……。
「あっ
僕を呼ぶ声、振り向くと艶やかな肩まで下ろした黒髪をなびかせ、手を振りこちらに走り寄って来る。
「あぁ
「
「別に何も予定無いよ……っで、何処に行きたいの?」
「クラスのみんなで東京に行ってみたい!」
「東京の何処に行きたい?」
「ん〜そうだな、ディズニーランド」
残念だけどディズニーランドは場所的には千葉なのだが、真っ白な頬を赤く染め、大きな黒い瞳がキラキラ光らせながら話す姿を見ていると言い出し辛い。
「そうなると仙台市から新幹線か、村から1番近い駅がここから歩いて2時間、そこから仙台駅まで2時間、新幹線が東京まで大体2時間時間もかかるし、予算的には1人6〜7万って所かな」
「夏休みは1ヶ月もあるんだよ! 時間なんて気にするなってやつだよ、あとお金の事は気にしなくて大丈夫だよ私のお小遣いから200万位は貸せるから」
……さすが仙台市に10件、
「そう言えば仙台市に土地持ってるのに、なんでわざわざ不便なこんな村に?」
顔色が曇る。
「……うん、人が多い場所で1人は怖いから」
軽率な質問をしてしまったと後悔した。
そうだ……、
今現在世の中には鬼による孤児は沢山存在している、現に僕もそうだ7年前まで僕は東京に暮らしていた……。
鬼は未だ不明瞭な部分は、多く残るのだが分かっている事もある。
現在知られている事は、鬼は人の邪念、悪質感情、恐怖などの感情がこの世を怨んで逝った霊に絡み復讐する為の力、
何が言いたいかというと、鬼は人口が多く集まる所に出現する事がデータ上分かっている事だ、なので都会に行くほど、街のあちこちに地下シェルターに繋がる扉がある。
東京は近年人口が増えていき、鬼も次第に増えていった
そこで僕の父は陰陽師をしていた、あれは忘れもしない父の非番の日、みんなで出掛けたその先で黒い鬼に僕以外殺された……なんで僕だけ助かったのかは分からない、その時は死ぬも生き残るのも地獄に思えて僕は何も出来なく、ただ声を押し殺し泣く事しか出来なかった……。
それからこの村の祖母の家に来たのだが、僕が中学1年生の頃突然祖母が失踪した……急な出来事であった。
それから2年未だに手がかりすら見つかっていない。
「あ……あの
「はい! この話終わり、
「そうだね……急ご」
——キィ〜ンコォ〜ンカァ〜ンコォ〜ン
6時間目の始業のチャイムが鳴る
「みんなー席に着けー、6時間目は歴史だったなこの前どこまでやったかな」
村で唯一の先生である
「先生、確か
「あぁ、そうだったなありがとう
見た目穏やかそうなぽっちゃりとした生徒が疑問を抱く。
「それにしてもおかしく無いか?」
「
「
「
「
「……っふ」
不意に笑ってしまった、僕は
「お前ら〜少し静かにしろ」
チョークで黒板をカッカッっと少し先生の苛立ちが外に漏れ出して、言葉は緩かったが僕らはすぐ口を閉じ緊張感が漂う
「じゃあ
「はい!」
『
逃亡中も平城京で逃げ遅れた人達を救って周り、怪我人が居たら治して回った』
「はい、そこまででいいよ。じゃあ次は
「はーい」
『
それから数年後、
「はいありがとう、時間も余り無いから後は先生が要点を伝えるなー
遂に
「えー急に言われてもな、うーん……角を折ったから?」
「おっ! 正解。鬼の角は力の象徴、
鬼も人間と同じ感情を持っている? そんな事はあり得ないだろう……鬼は感情が無い化け物なんだから。
「教科書には書いて無いが
「えーこの村ってそんな凄い所だったんだ」
ガタァっと
……そこまで驚く事? とは思ったものの口には出さなかった。
そんな事いったら蹴り2発は覚悟しないといけない。
「そっか
「
「
「産まれはこの村だけど、すぐ東京に引っ越したらしいから……」
生まれたばかりだったので、らしいとしか言えないのである。
「そうなのか、じゃあ近いうち
【鬼泣神社】
学校から東3キロ先にある今や神主の71歳のおじいちゃんが1人で守るボロボロの神社が建っている。
「……どうして?」
「じゃ先生が教えてやろうか、この村の伝承で産まれてくる子供に
キィ〜ンコォ〜ンカァ〜ンコォ〜ン
「おっと時間か、今日はホームルーム先生用事あるから、このままもう帰っていいぞ〜」
——「ねぇみんな夏休み何か予定ある? もしなかったらみんなでディズニーランドに行かない?」
「いいね〜最後の夏休みだからね、みんなで思い出作りたいね!」
「行きたいけど……家今金欠なんだよな」
「
「さすが、美人お金持ち!」
「
とても楽しそうだ……よかった、朝に気を悪くさせたんじゃ無いかと心配していたが問題無いみたいだ
「じゃあ確か水曜日祝日だったよね、なので水曜日14時に私の家に集合して計画しましょうって訳でよろしく、かいさーん!」
——「ただいま」
帰ってからは、朝と同じでやる事は決まっている。
取りあえず今日学校で習った事の復習、それから
少し休憩したらお風呂掃除をしてお湯を張りゆっくり湯船に浸かる、そして明日の朝ご飯の準備をして23時に就寝する。
今日も何事もなく楽しい1日だった、明日も何事もない日常を過ごせるよう願おう……おやすみ
次の日僕は非日常に脚を踏み入れる事になる。
神様は人間に平等に試練と幸福を持たせると言うが、僕は神様に嫌われ捨てられた存在何だと思う、そうでなければこの世界に神様なんて存在しないと確信出来る……。
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