デートの朝
デート当日。約束の時間は10時だったが、俺は6時には目が覚めていた。はっきり言うと、ほとんど眠れていない。
どんな話をしようとか、映画のあとはどこに行こうとか、そんなことが頭の中をグルグル渦巻いていて、眠気を寄せ付けなかった。
『最初のデートで失敗すると、挽回は不可能』
昔読んだ、マニュアル本に書いてあったことが、俺にプレッシャーをかけてくる。
もし、あの娘に嫌われてしまったら……
考えただけで、ゾッとする。
早く起きても、やることがないので、俺は入念にシャワーを浴びた。
体臭が気になるので、一度、出たけど、もう一回、シャワーを浴び直した。
シャワーのあとは、ヘアメイク。ヘアワックスをつけるなんて、いつ以来だろう。
ボサボサの頭だったけど、少しは見栄えが良くなった。
いよいよ次は、コーディネートだ。オシャレにお金をかけていないので、着ていける服は限られている。
季節は3月。まだ吹き付ける風は、刺すように冷たい。
そこで、ボアインナーのデニムジャケットに、チノパンを合わせることにした。
ちなみに、もう1つの候補は、スタジャンにデニムのパンツのコーデ。どちらを選んでも、それほどオシャレボーイにはならない。
早々に準備が完了してしまったが、時間はまだ8時過ぎ。待ち合わせ場所の駅までは、徒歩20分くらいなので、まだ十分に時間がある。
10時に待ち合わせだけど、朝食はどうするんだろう?素朴な疑問が頭に浮かんだ。
一緒に食べるつもりなら、このまま食べない方がいい。
映画のあとにランチするのなら、何か食べておかないと、映画の最中にお腹が鳴ってしまう。
あらかじめ、予定を聞いておけば良かった。映画に誘われて、舞い上がってしまった自分が、情けない。
確かに、不意打ちのお誘いだったけど、それでも浮かれ過ぎだったと思う。
悩んだ末に、軽くパンを食べて行くことにした。
9時になったので、俺は家を出た。約束の時間よりは30分以上、早く着く予定だ。はじめてのデートで遅刻する訳にはいかないから、当然だ。
もっとも、遅々として進まない時間に耐えかねたというのもある。
駅までの道のりも、いつもより早歩きになってしまった。気持ちが先走っているのだろう。
駅が見えてきた時、腕時計の時間は、まだ9時15分を指していた。
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