15.〈たからもの〉の鍵(2)
白い光に包まれた俺達は前回と同じように立派な屋敷のなかにいた。
「メイチョンさん、お父様は明日も帰らないの?」
そこにはイデアとスーツ姿の男性がいた。
イデアはさらに背が伸びて長い金髪をなびかせている。
身長は130cm位か……、小学生か中学生かその間くらいなんだろう。
今まで見てきた姿よりも大人びてきているのだ。
「申し訳ありませんイデア様、来週まで外泊されるとのことですので」
スーツ姿の男性は困り顔で答える。
会話を聞く限り彼はきっとイデアの家で執事をしていたかめちょんの父親なのだろう。
どことなく整った顔立ちがかめちょんに似ていたのだ。
「イデアちゃん、私と遊びましょう!」
続いて幼い姿のかめちょん、上新井京子が現れる。
「……わかった」
イデアは渋々了承し上新井につれられてその場を去っていく。
~~~※※※~~~
二人は大きなソファに腰掛け話を始める。
「京子お姉ちゃん」
「どうしたのイデアちゃん?」
「明日がなんの日か知ってる?」
「うーん、なのんの日だっけ?」
きょとんとする上新井にイデアは寂しそうに答える。
「お父さんの日なの……」
「……そうだったね」
「お父さんはいつも忙しそうだからなにかしてあげたいんだ」
「……例えば?」
「……プレゼントするの」
「何を?」
「……お花、学校でお母さんの日にみんな買いにいってたんだ。」
「……」
「……だからお父さんにお花を渡したいの」
「……きっと気持ちだけで喜んでくれるよ」
「……花束作ったんだけどお父さん帰ってこないって」
寂しそうなイデアをみて京子はいう。
「……またいつか渡せるときが来るよ!」
その答えにイデアは問い返す。
「……いつかっていつなの?」
「……いつかはいつかよ!」
かめちょんは子供の頃から大雑把なせいかくだったんだな……。
「……すぐがいいのに」
「……あぁ、泣かないでイデアちゃん! そうだ! いいものがあるの!」
「いいもの?」
「イデアちゃんにこれあげるね!」
上新井はポケットから一つのブローチを取り出す。
「これって……?」
イデアがブローチを開くとそこには二人の人物が映っている。
「……お父さんとお母さん!」
「もうすぐイデアちゃんの誕生日だからさ! 私のお父さんにお願いして創ってもらったの!」
「これを持ってればいつでも家族一緒だよ!」
~~~※※※~~~
俺達の意識が先程いた地下空間に戻る。
イデアは立ちすくでいた。
今回は今までと様子が違う。
急に倒れる様子はない。
「……大丈夫かイデア?」
「……イデアちゃん?」
「……うん、大丈夫」
そういってイデアは俺達に抱きついてくる。
「……ジロウとお姉ちゃん達がいるから」
涙を流しながら抱きついてくる彼女からゲームで感じるはずのないぬくもりを感じた。
「……今ジロウ達が側にいてくれるから」
「彼女の中には受け皿が出来始めている」
ガラパゴルドを語り出す。
「過去の記憶というデータを取り入れる為の受け皿だ」
彼は優しい口調で話す。
「それは君達の旅で少しずつ培ったものだろう」
「彼女のためにもその日々を大切にしておくれ」
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