14.サーカスがやって来る(1)
「……あなたまた吹っ飛ばされに来たの? 今私は機嫌が悪いのだけど?」
ナチュラルは俺達の前に現れた黒い猿に罵声を返す。
彼はストロンガー、度々俺達の前に現れるゴリラだ。
「……ウ、ウホホ!?」
彼は彼女の罵声に驚いてしまったようだ、自分からふっかけて来て訳のわからいやつだ。
でも前の闘技大会ではナチュラルにぶっ飛ばされてたし苦手意識があるのかもしれない。
「ウホホホ! ウホウホ!!」
彼は敵意のないことを俺達に示しながら何か紙切れのようなアイテムを手渡してくる。
プレーヤーである彼が何故うほうほ喋るのかはよくわからない。
「なんだゴリラの旦那? くれるのかい?」
「ありがとうゴリラさん!!」
無邪気なイデアがそれを受けとる。
「ウホウホ!!」
ゴリラのストロンガーも心なしか嬉しそうだ。
「……見て見てジロウ!! 」
その紙を受け取ったイデアは目を輝かせて俺達にいう。
「何をもらったのイデアちゃん?」
俺達はその紙を覗きこむ。
「サーカスだって!! この街に来るみたい!!」
~~~※※※~~~
「……それで私達のコミュニティ、サイレントパーティーに同行したいと」
俺達はグリーンホスピタルから少し離れたところにあった小さなテントにやって来ていた。
俺達一人と三匹と一羽の前にはパンダが座っている。
彼女がこのコミュニティのリーダー、リンリンだ。
彼女にはイデアのことは伏せてグリーンホスピタルに入りたいことを伝えた。
「……駄目ですか?」
かめちょんが訊ねる。
「……なんだって?」
リンリンは聞き返す。
「何が駄目なものか!」
リンリンはそのまま笑顔で俺に抱きついてくる。
「今や一躍有名人の君達が来てくれるというのならば私達は大歓迎だよ!」
……歓迎してくれるのはありがたいのだが。
「……苦しいんですけど、……ダメージ入ってるんですけど!」
「じ、ジロウさん大丈夫ですか!!」
「先輩!?」
「あ、ごめんごめんついうっかり!」
リンリンは俺を解放してくれる。だがタカちゃんの爪よりもダメージ入ったぞ……。
このパンダ相当強いぞ。
「大丈夫ジロウ?」
心配してイデアが駆け寄ってくれる。
「丁度今から出発するところだったんだよ! 馬車に乗るといいわ!」
リンリンは構わず俺達を案内する。
こいつらについていって大丈夫なんだろうか?
「へへ、よろしく! 乗り心地は保証できないけどな!」
馬車と繋がれた茶色い馬が話しかけてくる。
彼もサーカス団の一員らしい。
俺達は順番にサーカスの馬車に乗り込み俺が最後に乗り込もうとした時リンリンが俺に話しかけてきた。
「……あの娘がイデアちゃんだね? ちゃんと守ってあげるんだよ?」
「……え?」
俺が聞き返す前にリンリンは俺を荷車に押し込む。
サーカス用のアイテムが積み込まれ中々に狭い。
「ついたら合図するからね! それまではじっとしてておくれ!」
そういって彼女は俺達の乗る荷車にカーテンをかける。
「行くよみんな!」
「「「おー!!」」」
リンリンの声を合図にサーカス団の一員が荷馬車を取り囲み移動を始める。
「なんとかなりそうですねジロウさん!」
「サーカス楽しみ!」
楽しそうな二人をよそにリンリンの言葉が蘇る。
彼女にはイデアのことを伝えてないはずなのにイデアのことを知っているようだった。
突然現れていつのまにか消えたゴリラも気になるところだが何か都合がよすぎる。
今思えば老虎の謎の忠告、そして三獣士の一人が言っていた雇い主がどうとかいう話、なんだか無関係じゃない気がする。
「どうしたのジロウ?」
ふとナチュラルに目をやると大きな角の回りにサーカスの小道具がかけられていて帽子かけのようになっている。
それを見ているとなんだか笑えてきた。
「ふっ、何でもねぇよ」
「角ねぇ一杯ものがのっておもしろい!」
「ぷぷ、そうねイデアちゃん! あいつにはお似合いね!」
「どうゆう意味よそれ!?」
「どこに来ても賑やかだな、旦那!」
「……はは、おもしろい奴らだ」
今はとりあえず俺達がはぐれることなく楽しく旅が出来ている。
それを楽しむ、それでいいやと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます