13.「愛」の街 グリーン・ホスピタル(3)

「へへ、兄貴は手を出すなって言ってたけどやつらを撃ち取って俺が名をあげるんだ!」 


 コモドオオトカケのチルドはウルフライダースを追っていた。

 彼にはこのゲームで名をあげる野心があるのだ。


「俺の牙と毒があればあんな奴らいちころだぜ!」


 ウルフライダースを追ってチルドはグリーンホスピタルの前にやって来ていた。

 いつもそこには硬い門があり侵入者が来るのを防いでいるのだ。


 しかし彼がたどり着いた時その門は開いていた。


 開いていたが通行人は門から離れて近付く様子がない。

 誰一人として門のなかに入ることは出来ないのだ。


「な、なんじゃこりゃ!?」


 今まさに門の前では激しい戦いが繰り広げられていた。

 大きな角を持つ鹿とそれを上回る大きさの巨大な獣がぶつかり合っていたのだ。

 戦いと言ったが最早それは戦いではない。

 角の悪魔がどれほど勢いをつけて突進しようと巨大な獣は微動だにしないのだ。


「だ、駄目だ。 毒でどうこうなる相手じゃあねぇ……」


 チルドはその巨大な生物達を前に己の小ささを痛感したのだ。




「君達にも敵わない相手がいるということだ」




 チルドの後ろから声がする。




「……だ、誰だ?」




 振り返っても誰もいない。

 次の瞬間彼の体が浮かび上がる。

 何者かに捕まれたのだ。




「……な、なんなんだ!?」




「悪いが彼らの旅を邪魔しないであげておくれ。」


 その言葉を聞いたときチルドの姿は遥か上空にあった。

 そしてそのまま落下を始める。

 落下する彼は一瞬壁の向こうに広がる大きな森林を見かける。


「……はぁ、今度は鳥のキャラになれたらいいな。 移動楽だし」


 落下際にそう言い残して彼は地面と接触する。




~~~※※※~~~




「なんなのよあのでかぶつ! あんなのずるよ!」


 ナチュラルは憤慨していた。

 彼女は負けず嫌いなのだ。


「落ち着けナチュラル、あいつも本気じゃなかった。 本気で潰しに来てたら俺達はこの街に入る前にお前を探すことになっていた」


「……う、でも先輩、私、先輩以外には負けたことなかったんです!!」


 ナチュラルは涙目で語る、仕方のないやつだ。

 俺は現実でかめちょんを撫でるように彼女の頭を撫でる。

 爪で引っ掻かないように軽くな。


「少しは落ち着けナチュラル。 世界は広いんだ」

「……せ、先輩」


「あーズルいです! 私も撫でてくださいジロウさん!!」

「イデアも!!」


 一人一人撫でてたらきりがないぞ!


「しかしどうするんだジロウの旦那? あれじゃ正面から入るのは無理だぜ?」

 他の連中と違って冷静なタカちゃんが仲間になってくれてよかった。


「どうするもこうするも入らないことには試練も受けれないしなぁ」


 俺はイデアを撫でながら答える。


「聞いた話じゃ空から行っても打ち落とされるらしいぜ、岩をぶん投げてくる象がいるらしい。 仲間が何羽かやられてるんだ」


 タカちゃんからの情報は確かだ、その話は俺も聞いている。


「ならこの壁ぶっ壊せばいいじゃない?」


 物騒な話をするのはナチュラル。

 お前は中の住人の苦労を考えろよ。


「実際それもありだが壁の内側はいつもあのウサギが周回しているんだぜ、すぐに気づかれちまう」

「あと壊してもビーバー達がすぐに修理にくるらしいんで意味ないですよ角女!」

「うるさいわね変色女! わかったわよそんなこと!」


 この街に入る方法もだがどうにかこの二人を仲直りさせる方法も考えないとな。




「ファキンジャープ!!」


 俺達が悩んでいると聞き覚えのあるゴリラの咆哮が聞こえた。

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