10.オフ会(4)



 あれから色々注文してアヒージョだったりカルボナーラだったり色んなものを頼んだがどれもとても美味しく俺達の食は進んだ。

 俺が二杯目のハイボール、松下が梅酎ハイを頼んだところで切り出す。


「松下はワイルド・シミュレータやってるんだよな?」


 ちょっとお酒が回ってきたから余計なことは考えず正面突破を試みることにしたのだ。

 日頃頼ることのないお酒の力とやらにすがることにしたのだ。


「はい! そうですねとってもはまってます!」


 松下も酔いがまわっているのかいつもより明るい、かめちょんみたいだ。


「実は俺もやっていてな!」


 この調子なら正直に言っても問題ないだろう。


「えー! 本当ですか? なんの動物なんですか?」


 酔った松下はいつになく勢いがある。

 なんとなくナチュラルの面影がちらついてきた。


「狼だよ、ゲームの中で一匹狼さ」

「本当ですか! 男は狼っていいますけど本当なんですね! 今度戦ってみたいです!」


 実はもう散々戦っているんだがなんといったものか。

 種族だけじゃさすがに特定出来ないのかまだ松下は気付いてない様子だ。

 何せこいつは「角の悪魔」、戦闘経験が並のプレーヤーの比ではない。


「先輩キャラ名何て言うんですか? 今度襲いに行きますよー!」


 ……段々物騒になってきた。これが彼女の本性なのだろうか。


「狼のジロウって言うんだ、よろしく頼むぜ!」


 俺は少し皮肉を聞かせながら名乗った。




「……え?」

「……え?」




 その言葉に二人の人物が反応する。


 一人は当然俺の前にいる松下、彼女はようやく全てを悟り赤かった顔を一層赤くする。

 もう一人は俺達の皿を回収しにきたハスキーボイスの店員さん、俺達の皿を下げると大急ぎで店の奥にかけていく。

「……え、先輩がジロウなんですか?」


 松下はまだ現実を受け入れれてないようだ。

 ……そんなに印象違うかな、俺?


 俺と松下の間に微妙な空気が流れていると店の奥から二人の人物がやってくる。


「なんだなんだ! 来るなら来るって行ってくれればいいのによぉジロウの旦那!」


 一人は板前さんのような格好をした色黒な男性、背丈はそんなに高くない。

 とりあえず料理人だということは伝わってくる。


「そうよそうよ、言ってくれればばーどサービスしたのに! 鳥だけに!」


 そういってししと笑うのは俺達を接客してくれた女性の店員さん。隣の男とそれとなく声が似ているのだ。

 二人ともどこか聞き覚えのあるフレーズで喋っている。




「……もしかして、タカちゃん!?」




 俺が問いかけると二人は答える。


「そう! 俺が!」

「私が!」




「「大鷲のタカちゃんさ!!」」

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