8.かくれんぼ実況中(2)
「何よ種明かしって?」
機嫌の悪いナチュラルは俺の頭の上を睨み付ける。
「チキンジョッキーさんの居場所ですよ!」
相変わらずかめちょんは自信満々だ。
撮影のために俺達の頭上を何羽かカメラを持った鳩が飛んでいたが彼らの視線が俺の頭の上に集まる。
相変わらず上で飛び回るタカちゃんも静かにそれを見守っている。
「おかしいと思いませんでしたかジロウさん?」
「なにがだよ? あとなんで俺に聞くんだよ?」
得意気なカメレオンはニヤニヤしている。
頭の上にいるから表情までは見えないはずなのだが最近の付き合いのせいでなんとなくこいつの表情はわかるようになっていた。
「ふっふっふ、相変わらず鈍いですねジロウさんは!」
……割と勘は鋭い方だと思ってるんだけどな。
「今回の試練が生放送で中継されているって話をしてたじゃないですか?」
「確かにそうだな、てっきりお前は気にしてないのかと思ってたが」
「生放送で中継されていると言うことは放送時間をのばすためになるべく見つからないところに隠れているはずです」
「それはそうだろうよ」
「でも実況するってことはある程度私達の様子が見えるところにいる必要があります!」
今日のかめちょんはいつになく威勢がいい。
「カメラ越しに見ているんじゃないの?」
舌を伸ばし左右に振りながらかめちょんは話す。
「ちっちっち! ナチュラルさんも甘いですね。」
「ジロウ、なんなのよこいつ!」
今日のナチュラルは一層威圧感がある。
前に戦った時よりも強そうだ。
「チキンジョッキーは世界に名を馳せるエンターテイナーですよ? そんなつまらないことはしないはずです!」
そう言えば忘れていたがこいつはイデアの親衛隊、イデアを守るためある程度ゲームの参加者の情報を調べているのだ。
「きっと今放送を見ている人達が喜ぶような工夫があるはずです!」
「なんなのよ工夫って?」
楽しそうにひよこを探すイデアをよそにかめちょんは話す。
「タカちゃんさんですよ!」
自慢気にかめちょんは断言する。
その言葉に少しタカちゃんは動揺を見せる。
「あいつがどうかしたのか?」
「何で手伝いもしないのに同行しているんだと思いますか?」
「集計係なんじゃないの?」
「またまたナチュラルさん、甘いですよ!」
「……ジロウあなたよくこいつと一緒にいれるわね。」
「……そろそろなれてきたんだ。」
「なんですかジロウさんその反応は! 私の名推理にもうちょっと関心を示してくれてもいいんじゃないですか!!」
さっきまで機嫌の良かったかめちょんは全身を赤くする。
「わかったわかった、その推理とやらを聞こうじゃないか」
俺が気だるげに答えると頬を膨らまし赤くなったままかめちょんは話を再開する。
「いいですかジロウさん! この街についてからあのタカちゃんとか言う鳥は私達の側に近付いて来てません!」
「……言われてみれば確かにそうだな」
俺の反応に気をよくしたのかかめちょんは赤色から次第に黄色へと変色する。
「街につくまでは私達の前に降り立っていた彼がこの街についてから一度も地面に着かないのは不自然です!」
「それってつまり……」
ナチュラルの発言を遮りながらかめちょんは舌でタカちゃんを指し宣言する。
「タカちゃんさんの背中の上になにかあるはずです!」
かめちょんの宣言がその場に響き渡るとタカちゃんの頭上から聞き覚えのある高い声がする。
「お見事!よく僕の居所がわかったね!」
タカちゃんは俺達の前に降り立ち彼の頭上に小さなひよこが現れる。
「私はカメレオンですよ? かくれんぼは得意なんです!」
俺の上で自慢気に言うかめちょん。
初めて聞いたぞそんな話。
「見事僕を見つけられた冒険者達に拍手を!」
チキンジョッキーがそういうと見守っていた観客達が歓声をあげる。
呆気ない幕引きに俺とナチュラルは唖然としていた。
「少しばかり予定よりも早かったね!」
「とにかく約束通り〈たからもの〉をお渡しするよ!」
なんやかんやあったがやっと終わるのか、俺はホッと胸を撫で下ろす。
前の闘技大会のように派手に目立つこともなく終わって一安心だ。
俺とナチュラルが一息つき嬉々とするかめちょんの前に一人の少女の声がする。
「……もう終わっちゃうの?」
イデアだ。
彼女は何処か寂しそうだった。
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