第3話

少年には好奇心があった。

いつも薬を飲む少女だが、必ず飲むとあっという間に寝てしまう薬があるのだ。

それを飲んだ直後に吸血をしたらどうなるのか?

また新たな何かを得られるのでは?と思い、眠る少女から吸血をしたのだ。


――気が付けば、昼であった。

夜の帝王たる吸血鬼が、夜に寝こけ、昼に起きる

「ねぇ、あんた、私が寝てる間に吸血したでしょ。

「……。」

「今日ね、やたらと起きるの早かったの。眠剤の血中濃度下がったからでしょ。」

「どうなれば、そうなるのだ。」

「血が減ればこうなるの。」

少女は怒っていた。

唯一の安息たる睡眠を妨害されるのはごめんだ。

これ以降、睡眠後の吸血は禁止、というルールが二人の間で成された。


これは当たり前なのだが、服薬し、吸血すれば、もちろん血中濃度は下がるのだ。

そして薬の作用もその分減ることになってしまうのだ。

現時点で少女はほぼ全ての薬を最大量処方されていた。

服薬後に減らされてしまう以上、少女は大量の薬を飲まざるを得ない。

ある意味、最悪の組み合わせなのだ。

少年は今全能感で溢れている。

吸血鬼は消費はしても、排泄はしない。それに消費するのも「純血液」のみだ。

少女の吸血における向精神薬は彼の体にどんどん蓄積しているのだ。

「おい、女よ。」

「何?」

「ありがとう」

「何がよ?」

「お前と出会えて俺は変わることができた。今なら吸血鬼の王になるのも容易いことだろう。」

「へぇ。」

「今なら日光すら俺の敵ではないだろう。俺は力を得た、確信している。」

「そうですか。」

「ではさらばだ!全能の王の支配を見せてやる!」

そう言うと、少年は部屋の窓を開け、外に出て行った。

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