第13話天使Beginning その3
「・・・・で?あなたは一体誰なの?」
「いや、誰なのと申されましても・・・・」
こっちが聞きたいのですが
「・・・・ねぇ、わかってるわよねぇ?この私の裸を見たという事実だけであなたを始末できるのだけれど」
「普通傷だらけのお客さん(強制だけど)を汚いまま放っておく方が失礼だと思うのですがそれは減刑対象になりませんかね」
「・・・・・判決、死刑」
「ちょちょっちょっちょっちょっと待って下さいよぉ!」
いきなり手から出てきた絶対やばそうな黄金の槍を俺に振るおうとする少女を俺は必死に止める。
「本当待って!!まじで!まじで他意は無いから!!本当汚れを洗い流してあげただけだから!!」
「本当ぉ〜?信じられないわねっ!絶対私に何かいやらしいことしたでしょ!!」
ズドンッ!
「ひっ」
「だいたいあり得ないわ!こんな美少女が倒れていたというのに何もしないなんて、男はみんな私に向かっていやらしい目を向けるんだから!いくら私が可愛いからって本当嫌になっちゃうっ!」
「・・・・殴りたい」
「・・・・何か言った?」
「・・・・いーや何も言ってませーん」
いけないいけない、あまりにも自分かわいいアピールするもんだから殺意が漏れてしまったようだ(ガクブル)
少女が目覚めてから数分、この状況で最も不毛な言い争いを俺と少女は行っていた。
「だいたいこうやって助けてあげたんだからお礼の一つぐらいしたらどうなんですか?」
「はんっ!何が助けるですか!私の体目当ての癖に!!このケダモノ!!セクハラ!!変態!!人でなし!!」
「このっ・・・・言わせておけばあらぬ疑いばっかりで、証拠はあるの!?証拠は!」
「証拠はあるわ!!私の体からお花の香りがすることが確たる証拠でしょう!」
「それはセクハラした証拠にはならないでしょ!!・・・これだから冤罪は生まれるんだ!世の男は何人も同じ事例で狸寝入りするんだよ!!」
「よくわかんないこと言ってるんじゃないわよ!とにかくあなたはここで殺す。私にセクハラした罪を償いなさいっ!!」
「ふざけんなっ!この羽根もがすぞっ!・・・・ってそうじゃん何やってんの俺」
「っ!・・・なっ、何よ?」
突然冷静になった俺を見て少女は一瞬たじろぐ。どうやら少女の頭も少しは冷えたようだ。
「あなたは一体何者なんですか?羽根が生えた人間なんて、見たことなんてないんですが」
「・・・・え?今更?」
まぁその反応するよね。たださっきの言い合いのせいで忘れてただけなんです。
「・・・・まぁいいわ、教えてあげる。私はこの世界で呼ぶところの・・・・天使、と呼ばれるものよ」
「・・・・・はぁ」
「・・・・・なぜ倒さなかったの?この私を」
「は?」
はい?
「ここにいる人間ってことはあなたも
「えっ?ちょっ」
「それなのに・・・・信用できないけど・・・・あなたは私を助けたと言った。私が天使かなんてこの羽根をみたら誰だってわかるはずよ」
「えっ何?何言ってんの?置いていかないで」
「ねぇこれだけは教えて。なぜ私を助けたの。なぜ目の前の獲物に飛びつかなかったの?」
「・・・・さっきの続き?」
ズドンッ!
「とぼけても無駄!!さっさと答えて!!返答次第ではあなたのこっちでの命はないわよ!」
ねぇそろそろ聞いてもいいよね、いいよね、聞くからね
「あのっ、そのプレイヤー、とかポイント、とかこっち、とか言われても全然理解できないんだけど、何かのゲームの話ししてる?ただでさえ君の存在自体で情報過多なのにいろいろ新しいこと言われすぎてオーバーフロー起こすんですけど」
「・・・・本気で言ってるの?」
「俺は・・・・ただ寝ようかと思ったところに君が落ちてきて・・・・それで助けただけなんだけど・・・・なんかダメなとこある?」
「・・・・嘘、ついてなさそうね」
「・・・・わかってくれて何より」
それから少女は「ありえない」とつぶやきながら思案顔になる。一体何の話をしているのかさっぱりわからない。やっぱり少女は何か危ないことに関わっているのだろうか。とてもただのゲームの話をしているようには見えない。
数分後、少女は何かを小さくつぶやき、俺に問いかける。
「あなた、『デモギア』は持っていないのよね」
「は?でも、ぎあ?」
「・・・・その様子だと本当にわかってないようね。・・・たくっ、どうして何も知らない奴がこの世界に入り込んでるのよ!」
なんか文句を言っているようだが状況を理解していない俺には全く意味がわからない。それに少し気になった言葉がある。
この世界、とか
「なぁそろそろ聞いていい?ここは・・・・どこなの?」
「そうね、あなたたちからすればここは・・・・半異世界ってところかしら」
「半・・・・異世界・・・・」
「そうよ、ここは」
「みィィィィィィィィィつけたァァァァァアアハハハハハハハ」
ドゴォォォォォォン!
少女が何か言おうとした瞬間、ものすごい勢いでこの家に衝撃を加える者が現れた。家の今度は屋根が粉々に粉砕され、今すぐにでも倒壊してしまいそうなほどボロボロになってしまう。
俺は衝撃に耐えきれず吹き抜けの方から落下してしまう、思わず死を覚悟したがあの少女が俺を途中で抱き抱え、羽根を使って退避した。そして近場の公園に着地し俺を地面に立たせる。普通逆だろシチュエーション的に。
そして数秒後、粉塵の中から現れたのは・・・・でかいカニだった。あとメガネ少年
少年は顔の割には大きいサイズのメガネをかけ、こちらに向かっていかにも挑戦的な目を向けている。相手を見下すような、蔑みの目。おそらく俺と同じくらいの歳だろう。あんまり関わりたいタイプではない。
それよりもカニ。大きさは俺の10倍はあるかというほどの巨大さで俺たちの前に立っている。手、というかハサミは片方だけ肥大化しており、あれに潰されたら即死だろうなぁと考える。全身はキラキラして透き通った鉱石らしきもので覆われており、おそらくかなりの強度なのが予想できる。ただ何かの攻撃を受けたのか少しヒビのようなものが入っている。頭には王冠なのか?あれは、何かそういうものらしき被り物をしている。トゲトゲしていてゴツゴツしている。突進攻撃用なのか?
「・・・・それにしても驚きました〜・・・・まさか、キングスクラブの装甲にヒビを入れるとは〜・・・・あの不意打ちも含めて少し過小評価しすぎましたねぇ〜」
「嘘・・・・『
隣で少女が驚愕と絶望の混じる声を上げているが俺には何が何だかわからない
「それにしてもぉ傷がもう塞がっちゃったんですかぁ〜・・・・いいですねぇその再生能力・・・・ふふっ何度でも壊し放題じゃないですかぁ〜」
なんかメガネ少年がサイコパスな発言してるけど・・・・えっ?あれやったのあのカニなの?
「ふん!これ以上はあなたの思い通りにはならないんだからっ!」
「ふふふっ、そんなテンプレヒロイン台詞吐いた代償は払ってもらいますよぉ〜」
おお、おお、なんか開戦しそうな雰囲気漂ってますけど・・・・俺ここにいて大丈夫なん?
「貴方は下がってて、何の加護もないあなたは危険よ!」
「・・・・君は大丈夫なの?どうやらあのカニさんに串刺しにされてたみたいだけど」
俺はお節介にもそんなことを聞いてしまう。
「・・・・あれは少し油断しただけ。次は問題なく勝つから心配いらないわ」
「・・・・そう、・・・・まぁ目覚めが悪いからさ、無理しないでね」
俺はせめてもと少女に言葉をかける。なんとなく、無茶をしそうな気がした。
「・・・・ありがと」
それでも少女は一言お礼を言って一歩、巨大カニに向かって歩を進める。
これ以上は邪魔だろうと思い、俺は側の草むらに隠れる。しばらく少年と少女が何かを話していたが、途端に少女が槍を構えるとカニは少女に向かってかなりの速さで直進する。
俺はこの時、初めて異世界生物同士の戦いを見た。
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