第1章 天使編
第11話天使Beginning その1
(・・・・まずい)
追われていた。暗い路地に逃げ込んでも、あいつらを巻くことができなかった。
逃走を継続しつつも敵が自分を捕捉していることに薄々気づき、一人の少女は焦りを覚える。
「なぁなぁ天使ちゃぁーん。あーそびーましょー」
ドゴォォォォォォン
「くっ!!なんのぉぉぉ!」
突如降ってきた瓦礫に対して少女は背中の羽根を電信柱に括り付け高速でUターンする。そしてそれによって生じたエネルギーをそのまま前進に消費する。少女は音速を超えて一直線に敵に向かって突進する。
手にするは、一振りの神々しき槍
「喰らええええええええっ!!」
ガキンッ!!
少女はすべてのエネルギーを槍に集中させ、敵を穿とうとする。しかし、貫くことはおろか、傷一つつけることはできなかった。
「あはははははははっ!ほらほら行くよぉ〜」
「ッ!!!グワァァァァァァァァァアアッ!!」
ズドォォォォン
少女は攻撃が通らなかった反動に対処しきれず敵の巨大なハサミの一振りによって遥か後方へ吹き飛ばされてしまう。
「・・・・それにしても僕はとても幸運です」
ガラガラガラ
「はぁ、はぁ、はぁ、くっ!・・・・」
「まさか・・・・こんなところで!!異世界順位第3位である『
「はぁ、はぁ、・・・・あなた、相当嬉しそうな顔してるわよ」
「当たり前ですよ天使ちゃん!!君を殺せばどれほどのポイントが手に入ると思います!?まさに一攫千金なんですよ君は僕にとって!!」
「・・・・欲望にまみれた俗物がっ!」
「それにぃ、僕のパートナーであるこの『キングスクラブ』が天界の尖兵も倒せるという称号が欲しいんですよ〜。・・・・でも、拍子抜けしちゃうなぁ〜、あんまり強くないんですもん」
「っ貴様!この私を愚弄する気!!この『
「へぇ〜君偉い人だったんですねぇ。余計失望しました・・・・」
(・・・・まだよ・・・・まだ時間を・・・)
少女は敵と会話しながらもキングスクラブの走行を破壊する切り札を用意する。もう少女はこの一撃が決まるか否かしか頼ることはできなかった。
「僕のキングスクラブに対してなんの有効打も与えられないあなたが偉いんじゃあ『
「言ってなさい人間。その顔時期に歪ませてあげるわ」
(・・・・力が出ない。まさかこれほど制限されるなんて・・・・早く探さなきゃ)
そう、今は本調子ではない。今のままでは本来の強さの半分以下しか出すことはできない。
早く、契約者を探さなければ。
「ふーん、それなら何か攻撃してみてくださいよ。僕のキングスクラブの装甲に傷をつける攻撃をさぁぁぁ!!」
(・・・・・溜まった!)
「・・・・そう。お望みならば喰らいなさい!!この一撃を!」
ようやく溜まった切り札をすぐさま使おうと少女は両手を敵にかざそうとする・・・・
しかし、そこにキングスクラブはいなかった。
「もっとも」
グサッ!!
「アアアァァァァァァァァアアッ!!!」
「その攻撃を喰らうとは言ってないんですけどねぇ〜アハハハハハハハハハハッ!!」
少女がために溜めた高出力のエネルギーを放出させる前に、背後に回り込んだキングスクラブのハサミは少女の腹を串刺しにしてしまう。
少女は今まで経験したことないほどの激痛に浸り、悲鳴を上げる。
「ガハッ・・・・・どう・・・・して・・」
「簡単なことですよ天使ちゃあん!君がそうやって時間を稼いだように僕も話しに気を反らせて背後に回り込ませただけですよ〜。本当に貴方達異世界生物は人間に比べてバカですねぇぇぇぇぇっ!!!」
「・・・・・バカは貴方よ、この外道がっ!」
そう言って少女は両手をかざす。幸運にも超至近距離まで来てくれた敵に向かって。
「・・・っまさか!キングスクラブ!!そいつから離れてください!今すぐ!!」
「もう遅い!!今度こそ喰らいなさい!『
少女がそう言った途端、少女の両手から激しい光が漏れ出した。それは金色に輝き、そこら一体の暗闇を全て照らした。太陽の光にも匹敵する圧倒的熱量が、今少女の両手から放たれようとしていた。
そして少女は詠唱する。
「『
キュイイイイイイイイイイン!!!!!!
放たれた光は一切を燃えつくさんとし、一斉に目の前の敵に殺到した。反動で辺り一面の地面も捲り上がり、電柱も地面ごとくり抜かれる。この威力なら流石のキングスクラブでもひとたまりもないだろう。
しかし、少女も無事ではない。至近距離で放ったために着弾点にはとても近かった。
(グゥゥゥゥッ!・・・今のうちに・・・)
少女は光線の反動を使い自らの体をはさみから引き抜き、後方に飛ばした。もうこの後少女には力は残っておらず、飛ばされるままに空中を漂った。
そうして少女は、あるアパートの一室に突撃した。
バリバリバリバリッ!
ドガァァァァァァァァァアアアン!!!!
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいっ!!」
別に喜んでいるわけではない。寝ようとしてベッドに潜り、色々と考えているうちにうつらうつらとしてきた矢先にこんな爆音が鳴り響くのだからへんな悲鳴がでても仕方ないと思うのですよ。
それにしても何が起きたんだ?工事でもしてるのかと思って起き上がった俺はその光景を見て完全にフリーズした。
夜空が見えた。
なんで唐突にロマンチック発言?と思うかもしれないがそんな意図はない。
俺のみている方向には窓なんかついていなかった。その面は白い壁で覆われていたはずだ。ではなぜ夜空が見えるのか、答えは至極簡単なことだ。
そこに壁はなかった。いや、正確に言うと壁は破壊されていた。木っ端微塵に、形なんて一切残らずに。そしてそこら中には木屑や鉄骨の破片など裸足で歩けば号泣ものな危険物が散らばっている。
以上、この現場から予測できる状況は
「・・・・・えっ、このアパート解体?」
それはない。最近大家さんはこのアパートの収入が落ち着いてきてとても喜んでいたのだ。そんなすぐに解体なんてすることはあり得ない。それに見た感じ重機などの音は聞こえず、夜の風の音だけが吹き抜けて聞こえるだけだった。
となると次は、
「・・・・・隕石落下」
ちょっとあり得そうで困る。壁の壊れ方からしてなんらかの物体が衝突したような感じだ。
ただそれだとこの被害の少なさが疑問だ。普通隕石が落下してきたらその熱量で辺り一帯が干上がるくらいは起きるだろう。その場合俺だって命はなかった。だけど今ベッド周りは誇りや破片が転がっているだけでベッド自体は破損していないみたいだった。
少なくとも宇宙からではなく地上からの飛来物に限定されると予測する。
「つまり考えても無駄だと・・・・」
これ以上他の想定を考えてももはや自分の手には追えない領域にとっくに達しているので思考を放棄する。
「・・・・とりあえず起きるか。えーとスリッパスリッパは〜」
俺はベッドの横に一足だけあるスリッパを履いてベッドから出る。今はこの部屋がどれだけ悲惨な事になっているのか調べないと・・・・特にパソコン。
「・・・・・よし。起動した」
オーケーとりあえずライフラインは働くと
それから玄関の方まで飛んでった飛来物を確認しなければ、この威力だと相当重いものが飛んできたとしか思えない。
「というか大事故発生してるのに近所は何も反応してなさそうだな。なんでだろ」
警察に通報してみるかと思い、机の上で生きていた携帯を取り110番を押す。だが何度もかけても警察に繋がることができなかった。それどころかどの連絡先にも繋がらない。
あれ、おかしくない?この携帯の電波ちゃんと立ってるのに、そう思いつつふと玄関の方を向いた途端俺はまたフリーズすることになった。
そこには、羽根が生えた少女が横たわっていた。
数秒後、なんとか言葉の意味だけを理解し、フリーズから解放された俺は急いで少女の側に向かう。
少女は息はしているが気を失っているようだ。体のいたるところに傷があり、衣服は血で染まっていた。特にお腹の部分はぽっかりと穴が開いていてとても生きているような体ではない。やけどみたいな跡も全身にある。大重態だ。背中から生えている羽根も作り物には見えない。それにその羽根からも血が出ているのだ。
俺は、いやでも羽根の生えた少女という奇怪な生物の存在を認めるしかなかった。
「あーもうどうなってるんだよ!」
いやまじで携帯繋がって!!なんでこんな時だけ意地悪するのブンメイノリキ!!仕事して!!
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