第6話 始まりの日 学校 その2

キンコンカンコーン


「よーし、じゃあ今日はこれで終わり。委員長号令お願い」


「きおつけー。礼」


「ありがとうございましたー」の掛け声とともにお昼前最後の授業は終わった。


転入して早々に授業を受ける形になったわけで授業についていけるか心配ではあったが、やはり転入試験の勉強のおかげか滞りなく終えることができた。


・・・・まぁ一応向こうでも一年間高校に通っていたので流石に全く違うことをやることはないだろうとは思ってはいたけど


「未治、いきなりの授業だったけど本当に大丈夫だったか?」


「あぁうん。それよりも教科書見せてくれてありがとうね」


「これぐらいクラスメイトなら当たり前だろ。そんなかしこまんなって」


転入初日ということでまだ自分の分の教科書などの各種持ち物は揃っていなかった。幸いにも疾風が隣の席だということがわかり、教科書を見せてもらっていた。


「それよりも未治、お前お昼は持ってきてるか?」


「いや、今日は余裕なくて・・・・確かこの学校購買があるって聞いたけど」


「ああ、あるぜ。ちょうど俺も行こうと思っ

てな。案内がてら誘おうと思ってたんだ」


「なるほど。それならお願いしようかな」


「おう、任された!じゃ行くか」


そう言って疾風は俺を引っ張って教室を後にする。

なんか疾風の印象は本当にさわやかな好青年だなって感じだ。転入生の俺に対しても親切に接してくれるし、休み時間の時も沢山のクラスメイトに囲まれるなかさりげなく会話を誘導して答えやすい質問をかけてくれた。


あれはマジで助かった。もし「好きな女性のタイプは?」とか聞かれてたら絶対「セクハラですか?」としか回答できない。俺の対応力。


それに比べて疾風は成績優秀でスポーツ万能(さっきクラスメイトに聞いた)

これで容姿もイケメンとか・・・・


はぁ

俺が女だったら100%惚れてた。絶対こいつモテる。



☆☆☆☆☆



今回編入することになった私立浜崎高校は都心のほぼど真ん中にある立地に建ち、校舎も3年前に改修が完了したとても綺麗な学校だ。全生徒1000人を超えるかなりのマンモス校で部活も吹奏楽部が毎回全国常連だったり水泳部にはオリンピック候補の選手がいたりとかなりの成績を残している。

ちなみに偏差値もそれなりに高い。一応編入テストというものもあり、高校二年生にして先取り受験をした気分になった。



「この学校結構広いからな〜」


購買部に向かう廊下で疾風が話し始める


「それ、パンフレット見て最初に思った」


「だろ?だから俺も最初のうちは一苦労だったよ。この学校って教室棟が羽根のように伸びてて中央に主要な部屋があるんだ。購買部も中央の二階にある。地味に変な構造してるからすぐ迷子になるやつが出るんだ・・・・ったく、あの時はヒヤヒヤしたぜ・・・・」


そういう疾風の顔は何か嫌な思い出が蘇ったような顔をしていた。まぁ何かあったのだろう。・・・・聞かないでおこっと。


「それにしても沢山の教室があるんだな」


とりあえずさっきの話題から離れるためにこっちから話題を提供する。


「ああ、そこにあるのは物理実験室1。その奥はその2。理科系の実験室は化学、生物、地学全部あるから結構あるな」


「マジか・・・・そんなにあって何すんの?」


「さあな、俺は授業以外利用してないし。放課後はそれぞれの部活が使ってるみたいだが・・・・ってあら?」


「んっなにかあっ・・・・・た・・・・」


突然疾風が立ち止まったので視線を追った俺は息を飲んだ。


そこにいたのは紛れもなく美少女だった


長く切りそろえられた黒い髪が窓からの光を受けてキラキラと光沢を放っている。パッチリとした目に化粧がなくともしっかりピンク色の唇、そして華奢な体格。その美貌は多くの男性を魅了するであろう。

そんな美少女が紺色の柄に白の線が走るスマートなこの学校の制服をぴっしりと身にまとい、まさに清楚を体現したような姿で廊下の反対車線から歩いてきた。

廊下を歩く彼女からはどこか荘厳な、他の人とは違う魅力を感じさせる。


「ほぉ、未治。お前初日からあの子に会えるとは運がいいな〜」


胸が高鳴った。


「な、何そのレアキャラに遭遇したみたいな言い方は」


「レアキャラも何も彼女は一年生だがすでにこの学校一の美少女と認められた超レアキャラだぞ。なんせ彼女が入学してこの数週間のうちに何回も告白され、その全てを振ったと専らのうわさだ」


「・・・・・・・・ふ〜ん」


「あれ?あんま興味なさそうだな?お好みではない?」


「いや別にそういうわけではないけど」


「じゃあどういう意味だよ」


「だからすごいなと思っただけ〜」


「まじか・・・・朝日 小夜里あさひ さよりを初めて見てその反応。お前・・・・男か!?」


「正真正銘紛れもなく男です」


疾風と会話している間にその美少女は俺らの隣をすれ違って行く。


その時、一瞬だけ目があった気がした。


その一瞬、一瞬だけだけど、時間が止まったような気がした。


でもそう思った時にはすでに美少女は通り過ぎて行ってしまった。


だから目があったのは気のせいだということにしておいた。


そして、元気そうで何よりだと思った。


11:25



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