第10話:ラースvsカルラ
Bブロック スワンvsキースの試合が終了し、1日が経過した。
俺が出場することになったAブロック準決勝 ラースvsカルラの絶望的な試合が始まろうとしてた。
1回戦同様アリスが説明を行う。
『ルールは1回戦と同様です。2人共準備は大丈夫ですか? 』
『あ……ああ……。』
絶望しか見えないんだが。本当に神様はどうして俺に不幸ばかり運んで来るんだ!! あ! 俺が神様の生まれ変わりか……。
笑顔でカルラがグッジョブをする!
マイクを手に持ちアリスが観戦客に伝達する。
『ええ……2人共準備が整ったみたいなのでAブロック準決勝 ラースvsカルラの試合を開始します!!』
観戦席にいるリリカとエルドが声援を送る。
『ラーちゃん頑張れ!!!!』
『ラース、お前の底力を信じているぞ!!!!』
応援してくれるのは有難いがますますプレッシャーが強くなってきた…………。
『カルラ、お手柔らかに頼む。』
すると、カルラは瞳を閉じ純白の顔で笑顔を作る。
可愛い顔をしてるから余計に恐ろしく感じる。アニメでこういうキャラいるよな…………。
そしてアリスが片腕を掲げると闘技場内が沈黙し始めた…………。
スゥーーーーーーー。
アリスが大きく息を飲む……。
掲げた腕を振り下ろす!!
『試合開始!!!!!!』
まずは相手の出方を伺うために距離を置くか!!
そんなことを考えながら俺は壁付近へ足を運ぶ。
観戦席でエルドが叫ぶ!!
『ラース、それが無難だ。そのまま相手の様子を伺うんだ!!!!』
しかし、試合開始の立ち位置でカルラが俺を手招いてきた!!
リリカもエルドにつられる!!
『ラーちゃん、カルラさんの挑発だよ!乗っちゃ危ないよ!!!!』
カルラはあくまで真っ向勝負を望んでいるのか? 《身》でいえば俺の方が上だが《流》を使われ減速させられたら攻撃自体がヒットしない。
だが、男としてのプライドが許さない!!
地面を グ!と踏みしめカルラの方向へ突っ込んだ!!!!
観戦席のエルドとリリカが驚きの表情を浮かべる。
両拳を握りしめ畳み掛ける!!
『食らえ!カルラ!!』 と叫び爆裂拳を繰り出したが軽く手を添えられ外へと力が流される。
やっぱり当たらない。俺にもスワンのような《天》があれば攻撃が与えることができるのに。
一瞬の隙をつきカルラが俺に回し蹴りを与える!
『グハァ!!』
観戦席のエルドとリリカが思わず叫ぶ。
『ラース!! (ラーちゃん!!)』
可愛い体をしていながら攻撃力は計り知れない程の威力だ…………。何かいい策は…………。
カルラが笑顔で歩み寄る。
地面を砕き岩石を投げるには時間がいるし当たるとも思えない。砂を使って目潰しをすることは把握されているはず…………。
『うわ!!』
《身》を使用したカルラが懐へ潜り込んできた!!
『ラース避けろ!!!!』
観戦席のエルドが必死な形相になる。
カルラの小さな拳と脚から繰り出される猛烈なラッシュが『ボコ…ドス…バコ…ボコ…』と鈍い音を響かせる……。
『ゲホォゲホォ…………。』
腹を抱えて崩れ落ちる。
クソォォォ!!せめて俺にも《流》が使えたら…………。
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【視点が変わります】
(オリバvsカルラの回想シーン)
ラースが腕を組みながらキースへ問いかける。
『たしか《流》って扱いが難しく神素の消費量が多かった筈だが……。』
キースは人差し指を立てながら細かく説明する。
『確かに《流》は神素の消費量が多いけどカルラの場合は攻撃される一瞬だけの発動だから思った以上に神素の消費量が少ないんだよ!』
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【視点が戻ります】
扱いが難しい? 神素の消費量が多い? それに一瞬だけの発動? まさか!!いや、試してみる価値はある!!!!
俺は一抹の希望を抱きながらカルラへ接近し攻撃を仕掛けた!!!!
エルドがリリカに語りかける。
『ラースが何か仕掛けるきだ!!』
リリカに笑顔が戻る。
『ラーちゃん、何か掴んだんだね!!』
『おそらく……。』
俺は右拳に体中の神素を集中させ、リリカの腹を目掛けて正拳突きを繰り出した。
頼む!!何とか当たってくれ!!!!!!
カルラが《流》を発動した瞬間!! 受け流しの態勢に入るが俺の拳が腹を捉え、ねじ込み、そのまま壁端へ吹き飛ばす!!!!
『ぐふぉ…………。』
壁に弾き飛ばされたカルラは腹を抱えて崩れ落ちる。
観戦席のリリカが歓喜する。
『ラーちゃんがやったよエルド!!!!』
『ああ……。これはたまげたなぁ…………。』
リリカが困惑した表情をする。
『だけど受け流される!! っと思ったのにラーちゃんはどうやって攻撃を与えたの? 』
リリカが詳しく解説する。
『おそらく、ラースはカルラが《流》を発動させる直前に自身の拳を止めた。《流》を発動しているカルラは他の能力が使えない。かなりの集中力がいるんだ!! だから《流》を使用中に《身》を使わず受け流していたんだ!! いつまでたっても自分の元へこない拳に《流》を使い続け《流》が切れた瞬間を狙ってラースは腹へ打ち込んだんだ!!』
リリカが圧倒した表情をする。
『ラ、ラーちゃん凄い!!それに一瞬の出来事を分析するエルドさんも……。』
地面に這いずりながらもカルラは立ち上がる。そして重く閉ざしていた声を発する。
『今のはかなり効きました…………ラースさん。』
カルラが喋った!?!? それ程俺の正拳突きが効いたのか……。これで多少は希望が見えてきたぞ!!
『カルラ、これで《流》は攻略した!! さぁどうする!!!!』
『攻略するにはまだ早いですよ。この攻撃ならどうですか!!!!』
そう言葉にしたカルラは俺へ接近戦を持ち込んできた。しかし、その攻撃スピードは恐ろしく速くなっていた!!!!
『うぅ……。』
その勢いで吹き飛ばされる。
威力は弱いが恐ろしい攻撃スピードだ!! 現状の俺の《身》では対処できない……。
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【視点が変わります】
(スワンvsキース戦の後)
ラースがリリカへ頼み込んでいた。
『リリカvsリリス戦で見せた《身》と《気》の同時発動のコツを教えてくれないか?明日のカルラ戦に覚えておきたいんだ!! 』
『カルラさんの一方的なあの戦いを見せられたらそう思っちゃうよね! いいよ! 友達として教えてあげる。』
『ありがとう。リリカ。』
『ええっと、最初に右手に《身》を発動させて、次に左手に《気》を発動させ、左手の《気》を右手に移す。その後、左手に《身》を発動させて、右手の《気》を半分くらい移したら出来上がり!!』
『そんな高等技術をあの一瞬で行なっていたのか!』
『ありがとう、ラーちゃん。だけど、ラーちゃんって《気》を扱えたの? 』
『う……いや、その……使えない……。一応聞いておこうと思ったんだ。もしもの秘策として。もしかしたらピンチの時に出来たりして。』
『ラーちゃん、そんな上手いこといかないって……。』
『だよなぁ……。それより同時発動したらどんな効果が見込めるんだ? 』
『スピードと攻撃力がかなり上昇する。さらに私なら炎で拳を形どりリーチを伸ばすことが可能になるよ。』
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【視点が戻ります】
一か八かやるしかない!! 神様どうかこの俺に主人公補正を与えたまえってヤバイ!!いつのまにか宗教に心酔していた! 思い出せ俺! 俺は無宗教だ!!
俺はリリカの助言を元に試した。
『右手に《身》を、左手に《気》を。そして、左手の《気》を右手の《身》へ 全てを乗せる。左手に《身》を、最後に右手の《気》を半分左手にって出来てるし!!!! しかもリリカと違って雷属性だ!! 』
カルラが青ざめた表情をする。
『まさか、それは昨日リリカさんがやってた能力同時発動!!!! 』
『カルラ、第2ラウンド始めよう!!!! 』
俺はカルラに接近し拳同士で打ち合った。スピード、威力、リーチの全てを上回り見事、ラッシュを制しカルラをサンドバッグにした!!!!
カルラが『グハァ、ゴホォ、ゲヘォ……。』と唸り声を上げ最後に俺の渾身のアッパーを決めた!!!!
カルラはアッパーと同時に バタン と倒れ込む!!
『やったのか…………。』
俺はじっと見つめて確かめる。
しかし、あれほどの猛攻を受けながらもカルラは立ち上がった!!!!
『ラ、ラースさん……。私がここまで……追い詰められるとは……思いませんでした。やむ終えません、《天》を使用させていただきます!!』
忘れてた!!まだカルラには《天》が残っていたんだった!!!!
カルラは疲れきった表情かつ弱々しい声で《天》を発動する!!!!
『リーンアビリティ《気》』
『ど、どんな能力なんだ!!!!』
『ラースさんの戦いに免じて特別に教えてあげます。リーンアビリティは《身》《気》《流》《明》《天》《生》全ての能力値を一つに凝縮させる能力。今回は体がボロボロで動けないので《身》ではなく《気》に全ての能力値を凝縮させました。つまり《気》以外は《判定以下》はおろか0状態で普通の一般人状態です。能力稼働時間は全ての神素が尽きるまでです。』
俺は驚きながらカルラに聞き返す。
『つまりこの勝負、カルラの神素が尽きるか身動きが取れないカルラに攻撃を与えられれば俺の勝ちで、それまでに俺がやられたらカルラの勝ちってことか? 』
『察しが早くて助かります。そろそろ決着をつけましょう!! 』
シーン…………。
そして、闘技場が静まり帰った……。
先にカルラが5メートル程の炎の塊を連続で打ち込んできた!!
クソ!!この連続した攻撃じゃあカルラに近づくことさえままならない!!更に炎で地面が燃え上がった進路を塞がれる!!!!
『ラースさん、逃げてばかりでは解決しませんよ。』
カルラを直接叩こう!!そう決心した俺はカルラに近づこうとした瞬間!! 電撃が俺の真横へ一直線に走った!!!!
ビリビリビリ………!!!!
『あぶね!! もう少し横にずれてたら感電するところだった!! てか色んな属性を使えるのかよ!!』
カルラが悪魔の如く笑顔で答える。
『すみません!!言い忘れていました!!』
『絶対わざとだろ!! 』
カルラが手の平に《気》を集めながら告げる。
『立ち止まっていいんですか? 』
カルラは再び炎の塊を発射する。俺は上手く避けたが炎が聖者のローブに燃え移る。
『ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ………。』
ローブが燃え尽きたらユリウスの生まれ変わりであることがバレる!!!!
俺は地面にある砂を使い消化した。
『危なかった!!!!』
カルラが攻撃宣言を告げる。
『まだまだ攻撃は続きますよ!!』
ドーン!……ドーン!……ドーン!……。
疲れ果てながらも何とか逃げ続けたが一向にカルラの神素が尽きる気配がなかった。
明らかに神素量がおかしい!!
観戦席のエルドが立ち上がる。
『まさか……ユリウスの血縁関係者!?!?』
カルラがエルドの疑問に答える。
『ここまで派手にしたら隠し通せませんね。そうです。私もカムイと同様にユリウスの血縁関係者です。』
マジかよ…………。やけに強いと思ったら今までそんな奴と戦ってたのかよ……。
カルラが俺を煽る。
『ラースさん、気を取られていてはすぐに終わりますよ!!!!』
ビリビリビリ…………!!!!
再びカルラに接近しようとしたが先程同様に電撃を直進させてきた。今度は頭上スレスレに通り過ぎる。
そういえば、周りで逃げ回るのに炎の塊を出してきたり、カルラへ接近しようとしたら電撃を直進させてきたり…………電撃? そうか!上手く有効活用すれば…………。
俺はカルラに攻撃するように挑発した。
『カルラ、もうそろそろ決着にしよう!!』
『ラースさん、この包囲網を突破する気ですか? 』
『突破はしないがお前を仕留める!!!!』
俺はそう告げて先程と同じように逃げ回りカルラへ接近した!!!!そしてカルラは電撃を放った、その瞬間に俺は両手に《気》を発動させ、カルラの電撃を吸収し、それをカルラ目掛けて放った!!!!
咄嗟にカルラは身を守るために氷壁を作る。
ピキピキピキ………。
俺の電撃は氷壁にヒビが入る…………。
ピキピキピキ………。
電撃は止まらず突き進んだ!!!
ピキピキピキ………パリーン!!!!
遂にカルラの氷壁を打ち破り身動きが取れないカルラに直撃した!!!!!!
ビリビリビリ…………。
カルラは声も上げることが出来ずに感電している。
シュワ………………。
黒焦げになったカルラは立っていた。しかし、立ったまま気絶していた!!!!
シーン…………。
闘技場は静まり返る…………。
アリスがゆっくりとカルラに歩み寄り確認する。
マイクを持ち手を掲げ大きく息を飲み宣言した!!
『勝……者ラーーースーーーさ……ま…………。』
ワァーーーーーー!!!!!!
宣言と共に大きな歓声が上がった!!!!
俺は小声でアリスに注意する。
『アリスまた皆んなの前で様って言いかけただろ!』
アリスはニヤニヤしながら誤魔化した。
観戦席にいたエルドが声をかける。
『ラース、見事だったぞ。決勝進出おめでとう!』
リリカも褒め称える。
『ラーちゃん、まさか能力同時発動をあの土壇場で成功させるなんて思いもしなかったよ!決勝進出おめでとう!!!!』
『ありがとう! 2人共!!』
すると突然カムイが俺の方へ歩み寄り話しだす。
『神々は人間を創造し人間もまた人機を創造し人機もまた神々を創造する…………。』
『何なんだ????』
『いや、違った。忘れてくれ…………。』
カムイは黒マントを風で揺らしながら去っていった。
神々? 人間? 神機? 宗教勧誘か? まぁ今は決勝進出を素直に喜ぶか!!
こうして ラースvsカルラ戦は大勝利で幕を閉じたのだった!!
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