第9話:スワンvsキース

 


【視点が変わります】



 リリカの体と神素が回復しエルドとリリカがラースの観戦席に駆け寄る。



『リリカ、体の具合は大丈夫なのか?』



『エルドさんの早急な対応のお陰でかなり回復できたよ! 』



 金髪の髪を鼻の辺りを擦りながらエルドが話す。



『リ……リリカの回復速度があったからこそここまで回復したんだ!!』



 ワァーー!!!!!!

 歓声が鳴り響く!!



 3人共闘技場中央を眺める。エルドがノートとペンを持ちながらマジマジと話す。



『そろそろスワンvsキースの試合が始まりそうだ。強敵になるかもしれん。しっかり研究しておこう。 』



 腕を組みしかめ面をした表情でラースが返答する。



『キースはともかくあのスワンだろーー。自己紹介の時にあの絵面をみせられたからなぁー。』



 ラースの両肩を掴み真剣な眼差しでリリカが話す。



『ラーちゃん。何が起こるか分からないよ。現に私達だって勝利できたんだし…………。』



 ラース、エルド、リリカの3人は闘技場へと目を向けた。



 Bブロック第2試合スワンvsキースが始まろうとしていた。



 闘技場中央にスワンとキースが対峙し間にアリスが入りルール説明を行なっていた。



『2人共ルールは理解しましたか? 』



『アリス先生……デートしませんか?』



『スワンくん。殺しますよ。』



『おい!スワン!ちょっとは勝負に集中しろよ!』



『ゴメンゴメン。つい女の人を見ると条件反射が働いちゃうんだよね。ハハハ……。』

 


 疲れた表情でアリスが確認する。



『ハァ……。2人共準備はいいですか?』



『はい!』



『いいですよ、アリス先生……。』



『試合…………開始!!』



 開始の合図と共にキースが先制攻撃を仕掛ける。



『スワン、落ちろ!!!!』



 ドーーーン!!!!

 もろにキースの拳を腹で受けるが倒れない。それどころか笑顔で攻撃を受け流す。



 フフフ……。



『何!?』



 青ざめた表情のキースにスワンがニコニコしながら語りかける。



『そんな攻撃じゃダメダメ。私の体は元々が柔らかいお陰で《身》を使うと更に強化される。』



『たしか、最初の実践訓練の時に体を捻じ曲げていたな……。まさか、それがこんな形で有効活用されるとは……。』



『それじゃ次はこちらから攻撃させてもらうよ……。』



 スワンの拳がキースを襲う!しかし攻撃される瞬間に《流》を使用しさらりと受け流す。



『中々やるねキース君。だけど、これならどうかな!!』



 再びスワンの拳がキースを襲う。同じように受け流した瞬間!! 受け流された拳の反動を使い超光速下段回し蹴りをキースの足首に当てた。



『なんだと……。』



 体勢を崩したキースに拳と蹴りの連続コンボを繰り出した。



 グハァ。ゴホォ。ガハァ……………………。



『どうですか? 私の無限連続コンボのお味は?』



 這いずりながらキースが答える。



『俺の未熟な《流》じゃ対処できい…………。』



 キースは歯を食いしばった!!!!

『仕方ない……。出し惜しみは無しだ!《天》を使用する!!!!』



 余韻ある表情で滑らかにスワンが語る!!

『それは楽しみですね。楽しい余興を期待していますよ……。』



 ガクガクしながら立ち上がりキースは《天》を発動させた!!!!



『リスティミック!!!!』



 《天》を発動したキースの体がみるみると変化していく……。純白の肌、黄色の瞳、金髪のツインテール。なんと!前の試合に出場していたカルラの姿と瓜二つになってしまった!!



『な、な、何ですかその姿は!!!!』



『見れば分かるだろう。カルラだよ、カルラ!』



『何ですか! その夢のような《天》の能力は!!』



『おい!キース何変なこと考えているんだ!そこは普通能力について聞くところだろ!』



『失敬、私としたことが女性にの姿に惑わされてしまった。中身がキース君であることを忘れてしまっていたよ。』

 


 頬を赤く染めながらスワンが尋ねる。



『その能力は姿だけでなく真似た相手の《天》の能力も使えるのかい? 』



『お前の考え通りだ!更に真似た相手の《身》《気》《流》《明》《天》《生》に俺の(身気流明天生)がプラスアルファされる。』



『たしかに今聞いている限りでは強いように聞こえますがその分何か欠点があるはず……。』



『御名答。だが、素直に教えるとでも? 』



『勿論、一欠片も考えていないですよ。私の実力で解き明かします。』



『私も《天》を使用します!!!!』



 変態的なポーズを決めながらスワンは唱える。

『パーフェクトアンサー!!!!』



『まさかその名の通りお前の《天》の能力は!!』



『理解が早くて助かります。そう、相手の能力を見破る能力です。更に戦闘時にはどの攻撃が有効的か頭の中で確率を計算できるんですよ!!』



『何だと!!!!』



『ふむふむ、なるほど! リスティミックは使用時間が5分間で相手の体に完璧に馴染むのに2分かかるのですね。効力が消えると5分間はリスティミックを使用出来ない。更に自身の目で見た能力しか使用出来ないのですね。』



『なんて相性の悪い能力だ!!!!』



『たしか、前の試合でカルラさんは《天》を使用していなかったはず。つまりあなたはカルラさんの《天》は使用出来ないようですね。』



『ここまで言われたら隠す意味もないな……。お前の言う通りだ!現時点で2分経過した。そろそろ攻撃を再開させてもらうぞ!!』



 カルラの姿のキースがスワンの下半身前に潜り込む。



『さっきやられた分のお返しだ!!!!』



 《身》を発動させながら爆裂拳を叩き込んだ!!



 グフゥ、ガバァ!!!!

 攻撃されながらもスワンは耐え凌ぐ。



『効きますね……。痛いのやら嬉しいのやら困惑してしまいますね……。』



 キースの顔が青を通り越して緑ざめて引きつる。



『流石にそこまできたら引くを通り越して狂人だぞ、スワン!』



フフフ……。

 腹を抱えてスワンの顔に笑みが浮かぶ。



『蔑まれるのも悪くないですね……。私が勝利した暁に1つ願いを聞いてもらえないでしょうか。』



『何だそれは? まぁ負けないがな!!』



『それはここでは言えません……。』



 審判をしているアリスの背筋に悪感が走る。



 喋る2人にアリスが注意を施す。



『さっきから喋ってばかりですよ。これ以上続けると2人共失格にしますよ!!!!』



『願いの為、全力で頑張ります。』



『スワン、俺は負けない……。』



 今度はスワンの方から攻撃を仕掛けてきた……。



『上段蹴り10%、下段蹴り20%、アッパー5% 。………!!!! 離正拳突き100%!!!!!』



 スワンの拳がキースの顔真っ正面へ突き進む。カルラことキースが《流》を発動させ拳を減速させた。



 しかし、次の瞬間!キースの顔近くで減速していた正拳突きが突然40センチ程『グイッ』と伸びキースの顔面に直撃した!!!



 ボコォォォォォ!!!!!!!

 と鈍い音がする。



 そしてキースがサンドバッグの如く暴力的な扱いを受ける。

 グホォ、ガホォ、ゴホォ、ガバァァァーーー!!



 白目をむいたことを確認したスワンは攻撃を止めアリスの方へ駆け寄る。



『アリス先生!勝敗は決しました。確認と迅速な医療措置をお願いします。』



 スワンの顔は自己紹介の時とはまるで別人のような冷静さと集中、更に執着心が混合した顔つきだった。



 戸惑いながらアリスは宣言した。

『勝者!!!!スススワワワンンン!!!!』



 ワァーーーー!!!!!!!!!!

 今までの試合の中で一番の観戦が上がった!!



 ラース、エルド、リリカの3人共同時に唾を飲み込んだ。



 機械のようにギシギシと音を立てて首を2人に向けラースが話す。



『試合前に言った ーーーーーーーーーーーーー



『キースはともかくあのスワンだろーー。自己紹介の時にあの絵面をみせられたからなぁー。』



 言葉を前言撤回する……。』ーーーーーーーー



 エルドとリリカが口を揃えて返答した。



『うん…………。』



 こうしてキースvsスワンの試合は驚きの結果で幕を閉じたのだった。



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読んでいただきありがとうございます。よければブクマや感想もよろしくお願いします。










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