第6話:ラースvsマイケル
【視点が変わります】
結局ラースは《天》を会得出来ずに当日が来てしまった……。
Aクラス全員がWYL学園にある闘技場に来ていた。そして闘技場中央にはAブロック第1試合に出場するラースとマイケル、審判であるアリスがいる。その他の者は観客席で観戦していた。
アリスがラースとマイケルにルール説明をする。
『片方が戦闘不能もしくは降参するまで試合は続行とする。武器の使用は不可! 反則行為が見られた場合、反則者は強制敗北とする。』
『マイケル。お手柔らかに頼む‼︎ 』
『ラース。悔いの残らない勝負にしよう‼︎ 』
そう言いつつもラースの顔はどこか割り切れないような表情をしていた。
アリスが両手を大きく掲げ試合開始の合図を出す。
『試合開始‼︎ 』
試合開始と同時に両者は後方へ飛んだ。しばらく沈黙が続いた……がやはり先に動いたのはラースだった。
ラースは《身》を使って両足と両腕を強化しマイケルへ接近した。
『当たれ‼︎ マイケル‼︎ 』
ラースは激しい連打をマイケルに与えようとするが避けられる。マイケルはダンスを踊っているかのような足さばきで華麗に避けた。
『流石、体育会系の身体をしているだけあって運動神経は抜群だな‼︎ 』
『ラースも中々いい速さしてるな! だけど身体の使い方がまるで初心者だ‼︎ 』
速さや攻撃はラースが上手だが身体の動かし方がぎこちない。技術面で言えばマイケルの方が一枚上手だった。
次の瞬間……マイケルのパンチがラースの腹に直撃する。
ドスン!!!!!!
とっさにラースは両腕、両足の《身》を解き腹に強化を集中させたがパンチの反動で吹っ飛ぶ……。
ラースは地面へ飛び崩れる。
バタン!!!!
マイケルが大の字で倒れているラースに話しかけた。
『今ので決めるつもりだったんだけど。あまり女の子に攻撃したくないけど仕方ない。俺も本気を出して決着つけるよ。』
『アダクタースリー‼︎ 』
そう言葉を発するとマイケルは両手を合わす。するとマイケルが徐々に増えていき3人になってしまった。
『ラース……。流石に《天》が使えない状態で3人相手にするのは部が悪い。それに3人とも強さは分身前と同じ強さをしている。集中力と神素を大量に消費するが能力も使うことができる。降参してくれないか。』
ラースは膝まずき歯をくいしばりながら答える。
『できない! たしかに俺は《天》が使えず絶望しか見えない。だけど、ここで逃げ出せば一生後悔するし対戦しているお前にも礼儀が立たない。俺は自分の誇りを捨ててまで逃げる弱い人間になりたくない‼︎ 』
『悪いことを聞いて申し訳ない。ラースの誇りにかけて全力で行く!』
すると、マイケルが3人共両腕、両足に《身》を使って突っ込んできた……。
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(ラースの回想:模擬戦前日の夜)
ラースとアリスがソファに座りながら語り合っている。
『ーラース様。たしかに《天》が使えないのは不利ですがラース様が最高クラスで会得している《身》は《身》なりの戦い方があります。』
『どんな風な戦い方があるんだ?』
『例えば、闘技場内の全てのものを使うことなどです。』
『ーもの? それは落ちてる石とかのことか? 』
『それもあります。ですがその状況によって選択が分かれますので明確に答えることができません……。』
『ですが戦いは、場所、感情、能力、気候、運、それにもので成り立つこと。それだけは忘れないでくださいね。』
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(3人のマイケルがラースに攻撃する瞬間)
『ものを使え……か。』
ガス……バァサバサァバァサ……!!!!
ラースは地面の砂を手に持ち3人のマイケルの顔にぶちまけ空中へ飛び跳ね回避する。
『前が……見えない……。』
ヒューーードン!!!!!!
3人のマイケルはラースに突っ込んだ勢いで壁に激突する。壁が崩れて3人を襲った。
マイケルは視界が塞がったまま瓦礫を無造作に破壊し何とか脱出する。
『痛ってーー。ラースは何処だ! まだはっきり前が見えない。』
マイケルのアダクタースリーは3人に増える分3人共ダメージを受けると3倍のダメージになってしまうのである。
3人のマイケルは頭を抱えながら起き上がりラースの方向を見る。
ラースは地面に正拳突きをして地面から岩を取り出しそれをマイケルに投げ飛ばす。
『これでも……くらえ!マイケル! 』
マイケルはとっさに身体全体に《身》をかけるが
突然の砂の目くらましに冷静さを失ったせいで強化の威力が弱まった。
ドドドドド……………。
『グハァ……。』
マイケルが岩石と壁によって挟み込まれ圧縮される……。
そして岩石が砕け散ると共にマイケルが倒れ込む。
バタン……。
マイケルは必死に立ち上がろうとするがあえなく力尽きてしまった。
アリスがマイケルの意識を確かめラースの元へ駆け寄る。
『勝者!ラースさん!』
アリスがラースをお姫様抱っこしながら涙を流す。
そしてラースはアリスに小声で話す。
『アリス、皆んなが見てる。恥ずかしいからやめろ! 』
『すみません。私の昨日の助言を実行しているラース様を見ると感動してしまって。』
アリスはラースを不満げに降ろした。
観戦していたリリカが叫んだ。
『ラーちゃん、初戦進出おめでとうとー。』
ラースはリリカとエルドがいる観戦席へ駆け寄る。
『ありがとう! リリカー! 』
エルドもラースに声をかける。
『ラース見事な戦術だった。色々と学ばせてもらった! 感謝する。』
優秀なエルドの『学ばせてもらった』という言葉に顔を引きつりながら答える。
『お……う。それはよかった! Bブロックのエルドと決勝でしか当たれなくて残念だ……。』
『お前が決勝に行くことを期待しているぞ。それが無理だとしてもいつでも相手をしてやるから安心しろ! 』
ラースはエルドの言葉に顔を青ざめながら遠慮する。
『今は……初戦終えたから……少し休むことにするよ……。』
『了解した! ゆっくり休憩をとってくれ! 』
こうしてラースの初戦は見事勝利することができたのである。
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ご閲覧ありがとうございます^_^小説家になろうの方でも連載しています。よければ感想やブクマの方もよろしくお願いします^_^
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