第4話:自己紹介

 


 俺がWYL学園に入学して1日が経過した……。



 リリカが嬉しさと興奮を抑えるように話す。



『ラーちゃん。今日から勉強と実践訓練が本格的に始まるね。』



『あー。たしか昨日のホームルームで言ってたっけ。やだなー。俺、勉強苦手なんだよなー。』



『私も嫌いかな。覚醒者になったことで学習能力が向上しているとはいってもそれなりに時間がとられるし精神的に疲れるかな……』



『やっぱりリリカは分かってるなー。俺もそう思ってたんだー。200言語を習得するのに3時間もかかったんだよな……。』



 それを聞いたリリカは黒い目を見開き薄い唇をした口を手で押さえた。



『3時間⁉︎ 私なんか分割しながら勉強して1週間もかかったんだよ! 』



 ヤバイ‼︎ 俺がユリウスの生まれ変わりってことがバレるキッカケになるかもしれない。何でもいいから誤魔化さなくては……。



『ていうのは嘘で俺も1週間もかかっちまったんだよ……。本当にあれは苦痛だったよなー。あはははははは……。それにしても今日は暑いなー。』



『なーんだ。てっきりユリウスの血縁関係者かと思っちゃったよ。そうだね。外からの干渉が結界によって断ち切られるくらい強固だから熱がこもるよねー。』



 なんとか怪しまれずに済んだ……。次からは言動を慎むようにしよう。



 すると手前の扉からアリスが入ってきた。アリスはニヤニヤしながら俺に声をかける。



『ラースさんおはようございます。今日も可愛い笑顔ですね……。』



『アリス先生ーおはようございます。今日もご冗談がお上手で何よりです……。』



 ヨシヨシヨシ………。

 アリスは『可愛い』と言わんばかりにラースの頭を撫でると教卓へ行った。

 


『ラーちゃん。アリス先生と仲良いね。知り合いか何かなの? 』



『いいや。あんな人、ぜんーぜん知りません。他人なのにすごくちょっかいをかけてくるんだ。いい迷惑だよ……。』



 プクー‥………。

 それを耳で聞いていたアリスはほっぺを膨らませて不満げな表情をする。



 キーンコーンカーンコーン…………。

 そして学校のチャイムが鳴り同時に教室が静まり返りアリスが語り出した。



 アリスが頬の膨らみしぼませ話しだす。



『昨日のホームルームで言っていた通り今日から勉学と実践訓練を始めたいと思います。』



『能力覚醒して間もない人もいるため基礎学習から始めていきたいと思います。』

 


 本当に俺や教会にいる時とは正反対の性格だなー。これぞ裏表が激しいってやつかな。



『出来るだけゆっくり話すからよーく聞いてください。それでは始めます……。』



『人間には僅かな神の力が存在しています。神の力を行使する為には私達の体内にある神素というエネルギーを消費します。』



 たしか神素は脳で生成されていると仮定されているがまだ発見されてないんだよなー。



『神素は人それぞれ性質、量、などが異なります。今日は神素の性質と量ついて学習していきたいと思います。』



 アリスは白板にフリーメイソンのマークの一つである三角形と逆三角形を重ね合わせたマークを描いた。



『フリーメイソンのマークにある2つの三角形が重なり6つの角をなすようなマークがあります。これに伴うように神素には6つの性質があります。』



 能力にも6つも種類があるんだな……。



『1つ目は人間の身体や五感を向上させる能力。これは《身》と言われています。人間に近い能力なので神素の消費量は少なく使用できます。』



 おお‼︎ アニメの主人公が持っていそうな能力キターーー‼︎



『2つ目は自然現象を創り出す能力。これは《気》と言われています。神素を大量に消費します。しかし、補助的に道具を使うことで消費量を減らすことは可能です。』



 メ◯ゾ◯マやギガ◯◯ンもこれで打てるのか。よし‼︎



『3つ目は時間を操る能力。これは《流》と言われています。神素を大量に消費します。消費量を減らすことも不可能です。』



 時を止まれ、ザ◯ー◯ドってことも出来るかな?



『4つ目は空間を操る能力。これは《明》と言われています。神素を大量に消費します。これも消費量を減らすことは不可能です。これはユリウス教会にある転移結界に関係する能力です。』



 某アニメ主人公の瞬間移動もこれで可能になると凄い便利だな‼︎



『5つ目は知識を向上させる能力。これは《生》と言われています。人間に近い能力なので消費量は少ないです。これはWYL学園に入学する前にしてもらった言語学習に該当します。』



 アンサー◯◯◯ーできたら最強じゃないか‼︎



『6つ目は第6感または、固有能力。これは《天》と言われています。この能力に関しては人それぞれ神素の消費量や能力が違ってきます。』

 


 俺はどんな固有能力を持ってるんだろうか?



『6つの文字を並べ替えて身、気、流、明、天

 しんきりゅうめいてんせいと言われます。』



 綺麗に並んだな。これ考えた人凄いな‼︎ てかユリウスが考えたのか。



『これらの能力には限度があります。1つを極めれば他の能力は向上しません。逆に満遍なく鍛えると6つの能力全てが中途半端になります。』



 勉強ばかりに費やした人は勿体ないってガイルが言ってたっけなー。



『能力向上限度は人それぞれ違います。しかし、例外的に能力限度が高い一族がいます。それはユリウスの器とされている血縁関係者です。』



 ユリウス血縁関係者キターー‼︎ ユリウス血縁関係者かつユリウスの生まれ変わりの俺はどうなるんだ。まさかチートだったりして……。



『この一族は能力向上限度だけでなく神素の量も高いとされています。』



 更に追加要素がきやがった……。これ、完全にチートじゃね?



『以上が神素の性質と量についての基礎学習でした……。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 俺がいるAクラスは基礎学習を終えて実践訓練をする為に訓練場へと向かった……。



 リリカは俺の肩を掴み激しく揺らす。



『ラーちゃん。やっと実践訓練が出来るね! 』



『激しいってリリカ。 何でそんなに楽しみなんだ? 』



『アリス先生から直々にご指導して貰えるんだもん……。』



 指導はともかく、アリスの実践訓練をする姿はたしかに興味があるな。



『はーい、集合。』



 すると、アリスがクラス全員に召集をかけて実践訓練の説明を始めた。



『今日は初回ということで能力に慣れることから始めたいと思います。』



 アリスは俺の顔を見ながら説明を続けた。



『《生》の能力を除いた5つの能力の中で一番簡単な《身》を扱いたいと思います。』



 たしか《身》って能力は人間の身体や5感を向上させる能力だったな。



『まずは目を閉じて暗闇の中にいる自分自信を思い描いてください。』



『目を閉じたまま、一呼吸をして血流に流れる神素を感じてください。』



『そして、自分が強化したい部位に神素を集中させるイメージを作り出せたら完成です。』



『私は足に神素を集中させたのでこのようなことができます。』



 アリスがそう告げると地面から5メートル程飛び上がった。



 おおおおー!!!!



 生徒達は歓声を上げる。俺も賛同した。



 正直、アリスのことを舐めていたが今日から改める必要があるな。



 そしてアリスが砂埃を巻き上げ着地する。



『大体はこんな感じです。皆さんも慣れれば1週間程度でこのぐらいは出来るようになります。それじゃあ自己紹介も込めて一人ずつ前で披露しましょうか。』



 そう言うとアリスは10人の生徒の名前が書かれているボードを見て名前を呼んだ。

 


『エスカール=リリスさん! 』



『はい! 』



 甲高い声を上げて歩いていきアリスの横に立つ。

 


『それじゃあ自己紹介を始めてください。』



『ー私はエスカール=リリスと言います。ロンドンから来ました。リリスと呼んで貰えると嬉しいです。これから1年間よろしくお願いします。』



 エスカール=リリスと名乗る少女の身長は170センチと高身長。白い肌をしていて空色の青い瞳がとても綺麗だ。



 輪郭は大きくもなく小さくもなくって所だ。赤髪のポニーテールをしていて一番の特徴は大きく突き出たDカップの胸だ。



 アリスがリリスの胸を見て羨ましそうな表情をしながら話しだした。



『それじゃあリリスさん‼︎ 《身》を試してみましょうか。』



 すると、リリスはそっと目を閉じた。そしてゆっくりと目をあけると地面に拳を突き立て正拳突きを叩き込んだ。



 バキバキバキ…………。

 地面にヒビが入ると共に揺れを感じさせる。



『リリスさん! 上出来です。この破壊力からして武道の心得がありますね! 』



『さすがアリス先生です。私もアリス先生のように強くなります。』



『オッス、ありがとうございました。』



 パチパチパチ…………。

 リリスに拍手が送られ笑顔を堪えながら歩く。

 


 まさか、あの胸で武闘家だったか予想がつかなかったぜ、キリ‼︎ 。リリスは次期学級委員長候補だな!



 アリスが次の名前を呼んだ。



『マリア=リリカさん! 』



『は、はい!』

 


『頑張れよリリカ! 憧れのアリス先生に緊張するなよ‼︎ 』



 リリカは小さな顔で頷くと前へ歩み立った。



 アリスとリリカは隣に立ち並びその幅およそ1センチだった。そしてリリカは顔を赤面させた。



『それじゃあリリカさんどうぞ。』



『はひい! マ、マリア=リリカと言います。サンフランシスコから来ました。リ、リリカと気軽に呼んでもらって大丈夫です。こ……れからよろしくお願いします。』



 リリカは緊張しながらも何とか自己紹介を終えた。



『それじゃあリリカさん。《身》を使ってみましょうか。』



 キラキラキラ…………。

 黒い目を輝かせながらリリカは答える。



『はい! アリス先生‼︎ 』



 リリカは目を閉じ徐々に瞼を開ける。



 側に落ちていた石を真上へ投げた。



 石は50メートル程飛び上がった。



 そして側にあったもう一つの石を投げた。



 バゴン!!パラパラ…………。

 空にある石に見事命中させ粉砕させた‼︎



『リリカさん凄い制球力です。これならプロにも劣らないでしょう。』



『ご覧いただきありがとうございました! 』



 パチパチパチ…………。

 リリカにも拍手の雨が送られた。



 アリスは次の名前を呼んだ。



『次は……。ユリス=カムイくん。もしかして貴方は……。』



 ユラユラユラユラ…………。

 首輪をつけた少年がマント大きく揺らしながら前へ出た。



『ラーちゃん。ユリスってユリウスの血縁関係者の……。』



『リリカそれは本当なのか? 』



『う、うん。そうだよ。ユリウスの血縁関係者では有名な一族だよ。』



 ここに来て俺の遠い親戚に出会うとは運が良いのか悪いのか……。



 カムイという少年は身長175センチ。黄色の肌をしていてスタイルは抜群だった。



 顔は小さく、イケ面で瞳の色は赤く何処と無くラースに似ていた。白髪ショートヘアーをしていて髪色までラースにそっくりだった。



『ユリス=カムイ。よろしく。』



 カムイの表情には笑顔がなく瞳の奥に闇を感じさせた……。



『カムイくん。自己紹介、それだけでいいの? 』



『……。はい。慣れ合うつもりはないので……。』



 失礼な奴だなそれでも俺の古い親戚か‼︎ まぁ少女になるまでぐうたら生活をしてた俺が言える立場じゃあないけどな……。



 カムイが少し揺れた瞬間姿を消した。いつのまにかもといた場所に座っていた。



『カムイくん。瞬足ですね。それもかなりの速さと技術です。流石ユリウスの血縁関係者ですね。』

 


 アリスがユリウスの話をした途端にカムイは立ち去り出した。



『俺はこれで失礼します……。』



 アリスが声を掛けようとしたがすでに姿が見当たらなかった。



 カムイとかいう奴は一体何者なんだ??



『気を取直していきましょう!!!!』



 アリスは次の名前を呼ぶ。



『エルド=マグリガーさん!』



『はい‼︎ 』



 身長は150センチで純白の肌をしている。輪郭や瞳は仮面を被っているので分からない。髪色は金髪でロングヘアーだった。



 仮面の少女が後方から歩いてきて俺に話しかける。



『貴方、何処と無くユリウスに似ている気がするな。』



 もしかして俺の着ている聖者のローブが効いていないのか!



『そんな訳ないじゃないですか……。髪色も違うし言葉使いももっと品があるはずだ。そして、ユリウスがこんな所にいたら大惨事ですよ……。』



『確かにそうだな。私の思い過ごしだ。悪かったな。』



 聖者のローブは正常だった。こいつの感がいいだけか……。



『大丈夫ですよ。誰にだって間違いはありますから……ね。』



 何とかやり過ごせはしたが凄い感のいい奴だな。俺の中の要注意リストに登録しておこう。



 この出会いが世界の歯車が動き出すことになるとはこの頃の俺はまだ知らかった……。



『それではエルド=マグリガーさん、自己紹介を始めてください。』



『私はエルド=マグリガーだ。生まれはアメリカだが今はフランスのパリから通っている。エルドと呼んでくれて構わない。これから1年間世話になるがよろしく頼む! 』



 エルドは正義感の強そうな奴だな。リリスと並んで学級委員長候補に登録しておくとしよう。



『それじゃあエルドさんも《身》を使ってみましょうか。』



『アリス先生、了解しました。』



 エルドは仮面の裏でそっと目を閉じた。



 そして、目を開け思いっきり飛び跳ねた。



 しかし、アリスのようには飛べず普通のジャンプだった。



『何故だ? 何故上手く発動しないのだ? 』



『初めてなのでこういうこともあります。あまりガッカリしないでくださいね。』



『はい! この失敗を糧に努力を怠らないようにします‼︎ 』



 エルドは綺麗に行進しながら自分の元いた場所へと戻っていった。



『それじゃあ次の人いきましょうか。』



『次はラースさ……。ラースさん! 』



 おい! 今ラース様って言いかけただろ! ユリウスの生まれ変わりってことをバラすのだけは勘弁してくれよ……。



 ハァハァハァ…………。

 アリスは少し慌てはしたがすぐに冷静になった。



『それではラースさん、自己紹介を始めてください。』



『俺はラース=アルベルト。日本の首都である東京から通っている。皆んなはラースと読んでるからそれで呼んでほしい。迷惑をかけるかもしれないがこれからもよろしくな! 』



 アリスは号泣しながら生徒達へ語りかける。



『ラースさんの有難いお言葉でした。それじゃあ次の人は……。』



『アリ、アリス先生!俺を飛ばしてる。』



『すみません、ラースさんに感動してしまいまして……。』



『感動って、俺をからかってるんですか? アリス先生ー。』



『ごめんなさいラースさん。それじゃあラースさん《身》を使ってみてください。』



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 


【視点が変わります】



 ラースは覆っている布の下の瞳をそっと閉じた……。



 果てしなく続く闇の世界。この世界にラースという肉体が存在しない世界。だがラースという精神は存在する世界。闇の中で思い描く自分。自分の中で思い描く闇。闇に一滴の光が注がれる。光の雫は次第に闇を覆い尽くした……。



 ラースは覆っている布の下の瞳をそっと開ける……。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 俺もリリカと同じように側の石を真上に投げたがせいぜい7メートル程しか飛ばずもう一つの石で命中させることもできず頭に石がぶつかった。



 バゴーン!!!!



『痛ってーーーー。たんこぶできやがったー。』



 ハハハ!!!

 するとそれを見ていた生徒達に笑われた。



 ピクピク…………。

 アリスは眉間にしわを寄せながら話した。



『ラースさん、こういうこともあります。エルドさんも失敗しているので恥じる必要はありません。』



『ありがとうございますー。アリス先生ー。』



 アリスは俺に今にも抱きつきそうな勢いの表情をしなら俺を見送る。



 俺が元いた場所へ戻っているとエルドが話しかけてきた。



『ラースのお陰で私だけが失敗者扱いされる所だった。感謝する。』



『失敗したことに感謝されても嬉しくねーよ! 』



『お前からしたらそうだったな。すまないな。だが本当に感謝はしているんだ。』



 するとリリカも話しに参戦する。



『ラーちゃん、エルドさん。気にする必要はないよ。他の能力で良い結果が出るかもしれないよ! 』



 俺とエルドは口を揃えてリリカに話す。



『ありがとう。リリカのお陰で気が晴れた。』



 要注意人物のエルドだが友達としては上手くやっていけそうだな。



『次はマイケル=イシュタールくん。』



『はい! 』



 身長180センチ。黄色の肌をしている。瞳は黒で体と顔が大きく大柄な男。



 黒髪のソフトモヒカンをしていてまさに体育会系の要のような男だった。



『マイケル=イシュタールくん、お願いします。』



『私はマイケル=イシュタールと言います。オーストラリアのシドニーからここに通っています。マイケルと呼んでください。これから1年間お世話になります。』



『ありがとうございます。それではマイケルくん《身》に挑戦してみましょう。』



 マイケルは瞳を閉じた。そして目を開ける。



 スゥ…………。

 大きく息を吸い込み吐き出すと同時に大声を出した。



『オッスー!!!!!!!!』



 キーーーーーーーーーン!!!!

 アリスやその他の生徒は耳を塞ぐ。



『マイケルくん大声を出すなら事前に報告してください!。』



 あ、あ、う、あ、う……。

 マイケルは声を素の大きさに戻した。



『すみません。声の調整が効きませんでした。』



『次はもっと美声にしてくださいね。』



『分かりました!』



 う、ぅ、う、ぅ……。

 マイケルは発声練習をしながら戻っていった。



『この調子で次に行きます。』



『オリバ=バステールくん。』



 オリバという少年は身長170センチで黄色の肌をしている。

 


 輪郭は小さく瞳は赤色をしていた。 髪色は赤色のワイパーだった。



『……。』



 無言でアリスの横に歩み立った。



『それじゃあ自己紹介初めてください。』



『オレはオリバ=バステールだ、殺す!イタリアのローマからだ、殺す!オリバって呼べ、殺す! これから夜露死苦。』



 うっわー。あれは、根っからのヤンキーだ。あまり関わらないようにしよ……。



 するとオリバがいきなり俺に罵声を浴びせてきた。



『オイ!ローブのお前!何ジロジロ見たんだよ! ぶっ殺すぞ! 』



『見てないって! 目に布巻いてるから目線が合うはずないだろー。』



『オレは顔の向きと角度で分かんだよ! 殺すぞ! 』



 ピクピク………………。

 アリスが怒りを抑えながらオリバをなだめる。



『ラースさんも悪気があった訳では無いですし許してあげてください。……チ。 』



 あれでよくユリウス教会に入れたな‼︎ 要注意リストに登録っと!!



『分かりやしたアリスさん! アリスさんがそう言うなら許しましょう。今日の所はアリスさんの面に免じて許したるわ‼︎ けど、次やったらどうなるか分かってんだろうな! 』



 誰が覚えておくかボケ‼︎



『それ……じゃあ……オリバくん《身》を……始めましょう……か‼︎ 』



『アリスさんオレの芸術的で感動する作品を見ててください!…… オレの《身》を。』



 アリスは顔を引きずりながら答えるが怒りが限度を超えて口調が荒れる。



『オリバ! ごちゃごちゃうるせーぞ! さっさと《身》を始めやがれや‼︎ コラ!!』



『すいやせん‼︎ すぐにはじめやす ‼︎ 』



 オリバは目を閉じた。そして目を開けると棒で地面に絵を描き出した。



 みるみると絵は完成していき地面には俺も知っている孫◯空やエヴ◯◯ゲリ◯◯など数多くのアニメキャラが描かれていった。



 オリバはもしかしてこの身なりでアニオタなのか? 趣味に関しては気があうかもしれんな‼︎



『どうですアリスさん! オレの芸術作品。』



『はいはい凄いですね。戻って良いですよ。オリバくん。』



 完全にアリスに嫌われたなオリバの奴。



『アリスさん見ていただきあざした!!!!』



 ハァハァハァ………………。

 アリスが息を切らしながら膝に手を置いた。



『皆さん個性的でなによりです……。』



 そりゃこれだけ個性の塊だらけだったら疲れるわな! 教会へ 帰ったら『お疲れさん』の一言ぐらいは言ってやるか!



『次の人はえーと、カルラ=ディスティニアさん! 』



『……。』



 カルラもオリバと同じく無言で近づく。



 身長150センチ。肌は純白で輪郭は小さく可愛らしい顔つきだったが無表情である。瞳は黄色で髪は金髪ツインテールだった。



 カルラは手に持つボードに『カルラ=ディスティニアです♪ ロシアのモスクワから来ました^_^ カルラと呼んでください。 無口だけれども宜しくお願いします。』と書いて表情を笑顔にした。



 アニメやゲームで無口な理由でボードに書いたりする人はいるが実際にいるとは都市伝説急のレア物じゃねーか?



 アリスはボードにある生徒一覧の紙の裏に『それじゃあー、カルラさんも《身》を使ってみましょうか。』とノリに乗って書きだした。



 カルラはコクンと頷くと目を閉じた。息を吐きながら目を開ける。



 そして目を再び閉じてボードに何かを書き出した。そして目を開けると同時にペンを止めた。ボードをアリスに見せる。



『どれどれーってこれは凄いですね! 』



 ボードにはカムイを除くAクラス全員が描かれていた。



『オレと同じ絵だと!!!!!!』

 オリバが思わず飛び出した。



『何だとオレと同じで絵を描いたのかテメェ。まぁ所詮オレより上手くないだろうがな。』



 オリバは絵を見ると敗北したかのように膝まずき悲しい表情で戻っていった。



『カルラさんありがとうございましたー』



 カルラはボードに音符マークを描きながら戻っていった。



 カルラはめっちゃ可愛いが無口な所が痛いな。無口じゃなきゃめっちゃモテるだろうな!



『残り2人ですね。次は……スワン=アリエールくん。』



 スワンは少女達に触れることを我慢しながらアリスの横に立った。



 スワンは身長177センチ。肌は純白で輪郭は小さくイケ面だった。瞳は緑で髪は緑色のツーブロックだった。



『自己紹介宜しくお願いします。』



『私はスワン=アリエールと言います。フィリピンのマニラから来ました。スワンと呼んでください。これからも宜しくお願いします。』



 おお‼︎ 久しぶりに真面目キャラ来たんじゃね?これが本当の……。



『アリス先生! 今、恋人はいるんですか?

 いないなら私と付き合ってこの後デートしに行きませんか? 』



 本当の……本当の……本当の? はぁWYL学園は変人集団の塊じゃねーか! 俺も変人になっちまうじゃねーかよ! そういや、おっさんが美少女になってる俺ってとっくに変人じゃないか……。



『スワンくん殺されたいのかしら。』



『そういう所もまた良いですね……。』



『私は心に決めたラー、人がいるから! それよりも《身》を始めてください!』



 アリスの奴、俺のこと言いかけただろ‼︎



 するとスワンはガッカリした表情になった。



『分かりました。諦めます。次はカルラさんをデートに誘います。』



 カルラはボードに『絶対無理。』と書いた。



 スワンはブツブツ言いつつ目を閉じた。ゆっくりと目を開けると体をあらゆる方向に曲げだした。

 骨を外したりして自由に操っているのだ!



 ボキグチュグチュ!!!!



 この絵面であの性格は流石に女性陣は全員引くだろうな……。



 アリスが目を閉じたままゆっくりと近づく。



『スワンくん。……。凄いです! まさかこれをするとは思いませんでした。ですがまだまだ甘いですね。』



 まじかよ‼︎ まだまだ甘いってもしかしてアリスも……。



 アリスが目を開けるとスワン以上に体を グニャグニャ に曲げだした。



『流石アリス先生! 私を弟子にしたください!』



 変な趣味で意気投合しやがったぞコイツら!今思えばコイツらは変態同士で息が合うんだ!



 グチュグチュポン!

 アリスは体を戻した。



『いいですよスワンくん。放課後、私の所に来たらもっと上手くなる方法を教えてあげましょう。』



『ありがとうございます。』



 スワンは満面の笑みを浮かべながら戻った。



『最後ですね。次はキース=アグタリウスくん!』



『はい!』



 アリスの横にキースが立ったが身長が低く顔も幼く見えたので親子に見えた。



 身長160センチ。肌は純白で輪郭は小さく子供っぽい。瞳は緑色で髪は金髪ベリーショートだった。



『最後の自己紹介を始めてください。』



『僕はキース=アグタリウス。韓国のソウルから来てるんだ。キースと呼んでくれると嬉しいな。これから1年間楽しいクラスにしようね。』



『それじゃあ、キースくん《身》をしてみましょうか。』



『わかった先生。僕頑張ってみるね。』



 キースは目を閉じた。そして、目を開けるとアリスを指1本で持ち上げた。



『キースくん中々やるじゃないですか。』



 アリスを降ろすと照れくさそうに頭に手を置いた。



『それほどでもないですよ、アリス先生。』



 そしてキースはアリスに手を振りながら戻っていく。

 


『クラス全員の自己紹介が終わった所で今日は解散にしたいと思います。』



『明日も実践訓練をするので呉々も気をつけてくださいね。』



 こうして俺がいるAクラスは実践訓練を終えたのだった。



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