第6話「ウソでしょ!? ミラクルエスクリダオの正体!」
〈前回のあらすじ〉
〈本編〉
『あら、お姉さま。おはようございます。』
蝋燭の炎がゆらめく薄暗い室内で、小さな悪魔がこちらを振り返った。
『何だ、朝から勉強か? お前も好きだな……』
『魔術は奥が深いのですよ――ゴホッ』
咳き込みながら押さえた口元から、蒼い筋が1つ流れた。
『おい、大丈夫か!?』
『大丈夫、ですよ。お姉さまはしんぱ……ゴホッ、ゲホッ――』
慌てて駆け寄り、その小さな体を抱きしめる。
『お、ねぇ、さ、ま――』
『しっかりしろ、フェイリス。しっかりしろ――』
「――フェイリス!!」
叫んで体を跳ね起こしたドラゴニアは、自分が洋館の一室にしつらえたベッドの上で寝ていたことをすぐに思い出した。
(夢、か……)
自然と胸元のペンダントに手をやり、黒く輝く魔力結晶の感触を確かめる。
『お姉さまにプレゼントです!』
にこやかな笑顔と共に渡された、悪性魔力の結晶。
それは魔術者としての力量の証であり、ドラゴニアの誇りであり、失った家族の
(フェイリス……)
その名を、ドラゴニアは悲しくも愛しく思いながら胸中で呼んだ。
◇◇◇◇◇◇◇
『……は?』
怒気をはらんだ声を上げたのは、この場には居ないサタニア=デモニアだった。
肩をすくめながら、ドラゴニアは鏡に映るサタニア=デモニアに開き直って告げた。
「いやぁ、お前が連れてきたコイツは確かに『解決策』だったがな、どうにもアタシに魔獣のセンスが無いみたいでな……なかなかアイツらが消耗してくれなくて――」
『ドラゴニア!!』
ついに怒鳴られ、ドラゴニアは本気で椅子の上で縮こまった。
『そんなことを言ってる場合じゃないの!! ワタシが貴重な時間を使って、何のためにソイツを開発したと思っているの!!?? それに、魔法少女に時間を与えるのは――』
「わかった、わかったから。次は何とかするから。な?」
何とかなだめようとしながら、ドラゴニアは自身にとって重要な話への転換を試みた。
「しかし、いくらお前でも『生命創造』なんて無茶したんじゃないのか? それも、ただ作りだすだけじゃない。魔法少女と互角以上に戦えるヤツを生み出すなんて……」
『……フフッ』
サタニア=デモニアの怒りで真っ赤に染まった顔が、一瞬で得意げに変わる。
その様に内心辟易しながら、しかしドラゴニアは覚悟を決めて言葉の続きを待った。
『別に、ゼロから生命を創ったわけじゃないわ。ソイツはニンゲンよ』
「は? マジか!?」
『気付いてなかったの?』
呆れたような目をドラゴニアに向けながら、サタニア=デモニアは話を続けた。
『かつてアスモデウサ様とベルフェゴーラ様を苦しめて討ち取り、ついには先代のサタニア様さえも殺した魔法少女――ソイツらを、ワタシが魔界に連れ去ったのは言ったでしょう?』
「そう言えばそうだったな」
『そこにいるエスクリダオは、2人いた魔法少女の片割れ……ねえ、ミラクルルア――神谷杏子?』
サタニア=デモニアに呼ばれて少女はピクリと体を震わせ、ややあってからゆっくりと頷いた。
(コイツが、噂の……)
改めて、俯く少女――杏子の姿をドラゴニアは眺めた。
変身を解いているその姿は、確かに人間そのものだった。
『貴重なサンプルとして調べてたんだけど、新しく魔法少女が出たと聞いたから、急いで開発をしてそっちに送ったのよ』
「なるほど、魔法少女のことなら魔法少女に任せろってことか」
以前サタニア=デモニアが口にした「適任者」という言葉の意味を、ドラゴニアは何となく理解した。
『! 少し待て!』
不意に、サタニア=デモニアがドラゴニアからは見えない誰かに向かって言葉を掛け、すぐにドラゴニアに向き直った。
『ドラゴニア。次に動くときは必ず魔法少女を仕留めなさい。それとエスクリダオ。もしもワタシやドラゴニアに従わなければ……わかっているわね?』
「……はい。
最後にエスクリダオへと向けられたサタニア=デモニアの視線。
それは彼女の体を再び震わせ、微かに頷かさせた。
『それじゃ、次に通信する時は戦果を期待しているわ』
そう言い残してサタニア=デモニアの姿は消え、鏡にはドラゴニアと杏子の姿が映るのみとなった。
「お前が噂の魔法少女だったとはな……」
「………」
黙ったまま、杏子は両手で体を抱えるようにしながらさらに俯いた。
ドラゴニアは胸元のペンダントに手をやって、一番聞きたかったことを口にした。
「お前は、なぜ戦っているんだ?」
「それは……」
小さく口を開きかけたが、しかし杏子は再び沈黙してそれきり答えなかった。
◇◇◇◇◇◇◇
「こころちゃん! 一緒に帰ろう!」
「うん……」
エスクリダオが杏子なのではないか。
その疑いが生じてから1か月ほど、優姫は部活の助っ人をなるべく引き受けずに、こころと一緒に帰っていた。
「そう言えばさ、駅に新しいクレープ屋さんができたって知ってる? ちょっと行ってみない?」
「うん、良いよ」
優姫の提案に対してこころが見せる笑顔には、暗い影が見えた。
その影をどうしたら払えるのか――それがわからない優姫は、ただひたすらに声を掛け続けていたのだった。
「うひゃあ、超混んでるね……」
「まだオープンしたばかりなんでしょ? 仕方ないよ」
店の前だけでなく、近くの通路にすら形成された長蛇の列。
その最後尾に並んだ時、地面が大きく揺れた。
「地震!?」
「ドラゴニアだバト!」
慌てた優姫たちに、バトリィが密かに告げる。
「ここの人たちが危ない。行かなきゃ!」
周囲がざわつく中、外へと駆け出した優姫にこころも続く。
そのはるか頭上、駅ビルの屋上に設けられた緑化エリアの端にドラゴニアはいた。そしてエスクリダオ――杏子もまた、そこにいた。
「いずれアイツらが来るだろう。アタシの魔獣も、じきに倒されるはずだ」
「ウガァアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
咆哮を上げる怪物は、最初にドラゴニアがこの世界で魔獣を創造した時と同じ、純然たるドラゴンに近い姿をしていた。
付近のビルへ熱線を吐く様を見ながら、ドラゴニアは胸元のペンダントに手をやった。
「お前の意思はその時に示せ」
「……え?」
聞き返した杏子には答えず、ドラゴニアは眼前に広がる中津里町の街並みと、怪物が暴れる様をただ眺めた。
そして、彼女たちは現れた。
「強さあふれる勇気の光、ミラクルブレイブ!」
「想いあふれる心の光、ミラクルハート!」
『世界を照らす奇跡の光、ミラクル☆エンジェルズ!!』
「こころ……」
怪物へと一心に立ち向かうハートに目を向ける杏子。その杏子が胸元で手を握る様を、ドラゴニアは静かに見ていた。
「ハート・ストリーム!!」
「グォオオオッ!」
「でぇいッ!」
「ウグァッ!!」
ハートが放った光線を避けた怪物に、ブレイブの一撃が決まる。
苦悶に顔を歪め、身じろぎする怪物に、ブレイブはさらなる――最後の攻撃を見舞う。
善性魔力に満ちたブレイブカリバーを怪物へと大きく振るった。その名は……
「『超・ブレイブカリバー』ァアアアアアア!!」
「「「やっぱり名前が適当!!!」」」」
「ウガァアアアアアアアアアアアアア!!!!」
名前についてツッコまれながらも、しかし怪物は断末魔と共に姿を消した。
それを確認して、ドラゴニアは杏子を見やった。
「さあ、どうする?」
「……あたしは……」
逡巡して目線を彷徨わせた後に、手首に着いたスマートウォッチ型の変身アイテムに触れて杏子は走り出した。
漆黒の翼を広げ、杏子――ミラクルエスクリダオは屋上から飛び立つ。
「それがお前の……」
黒く輝く魔力結晶を見ながらこぼしたドラゴニアの言葉が、風に消えていく。
「エスクリダオ――」
「………」
「………」
名を呼んだブレイブには答えず、エスクリダオはハートに目を向けた。
エスクリダオとハートの視線が交錯する。
「ねえ、教えて。あなたは、こころちゃんのお姉さんなの?」
「あんたには関係ない」
「!!」
ブレイブに対して冷たく答えた言葉。それがブレイブの耳に届くころには、既にエスクリダオはブレイブの眼前に迫っていた。
大きく振るわれたダークネスカリバーによる斬撃を、かろうじてブレイブカリバーで受け止める。
「やめて! お姉ちゃん!」
「!」
咄嗟のハートの叫びに、エスクリダオの動きが止まった。
ここに至って、ブレイブとハートは確信せざるを得なかった。
「あなたが、こころちゃんのお姉さん……最初の魔法少女……なのに、何で!」
「あんたには関係ないって言ってるでしょ!!」
「うッ……!」
ブレイブに怒鳴り返し、強く押し返した。そうして大きくバランスを崩したブレイブに、もう一度ダークネスカリバーを振り下ろす。
「くぅ……」
「――!」
「ハート!」
尻餅をついたブレイブの眼前、ハートワンドの柄でダークネスカリバーを受け止めたハート。その頬を涙が伝った。
「どうして……」
「?」
「どうして、お姉ちゃん……!」
潤んだ瞳に見つめられ、エスクリダオは口元を歪めながら顔を逸らした。
それを見たハートは、必死になってエスクリダオに呼びかける。
言葉が届くと信じて。
「どうして! どうして……お姉ちゃん!」
「………」
「お姉ちゃん!!」
「……あたしは、あんたのお姉ちゃんなんかじゃない!!」
「うぐっ――」
エスクリダオの回し蹴りがハートの腹部を捉えて、一直線に吹き飛ばす。ブレイブを巻き添えにして地面を跳ねたハートは、しかし痛みをこらえながら何とか立ち上がった。
そして、エスクリダオに問うた。
「どうして、そんな嘘をつくの?」
「嘘なんかじゃ――」
「嘘だよ!!」
ハートの強い語気に、思わずエスクリダオは息をのんだ。
「嘘じゃないなら、どうして……どうして、泣いているの……?」
「泣いてなんか、ッ!」
否定しかけて、初めてエスクリダオは気付いた。
漆黒の仮面の下からこぼれる、一筋の涙に。
「あたしは、あたし、は……」
「お姉ちゃん、もうやめて。戻ってきてよ」
「………」
「お姉ちゃん……」
構えを解き、両手を広げて見せるハート。
しかしその想いに反して、エスクリダオはゆっくりと首を横に振った。
「……あたしは、こころ達を倒さないといけないの」
「どうして!」
あくまでも頑ななエスクリダオ――自らの姉に、怒りすら覚え始めようかとしたまさにその時、ハートは思いも寄らない事を告げられた。
「そうしないと、ひかる達が死んでしまうから」
「え……?」
並び立って言葉を失うブレイブとハートに、エスクリダオはあの日の事を静かに語りだした。
◇◇◇◇◇◇◇
「貴方達が、サタニア様を……」
「――!?」
サタニア――あぁ、先代の方だけど――を、あたし達は死にかけながらも何とか倒した。それで疲れ果てて、ようやく帰ろうとした時に今のサタニアが現れたの。
「ミーラ!」
「はいミラ!」
「クルル!」
「行くぜ!」
気圧されそうなほどの殺気を感じて、あたし達はすぐに変身した。でも……
「魔法少女……」
「っ、はっ――!」
サタニアが露骨に顔をしかめたと思った次の瞬間、あたしは呼吸がまともにできなくなっていた。
土手に叩きつけられたのを感じてようやく、「殴られた」んだとわかった。
「ルア!」
「貴方もね!」
「はっ、で……うあッ!」
「ソ、ル……!」
殴り掛かってきたサタニアの拳をかわして蹴りを入れようとしたソルも、逆に橋桁まで蹴り飛ばされていた。
今なら、あたし達にはもう戦う力なんて残って無かったってわかる。
でも、あの時は「戦わなきゃ」「何とかしなきゃ」って気持ちで一杯だった。
だから、焦って技を使ったの。
「ルア・ムーンライトストリーム!!」
「………この程度の者に、サタニア様が負けた?」
自分でもショボいと思うほど威力の無かった攻撃をサッと避けて、サタニアは宙に手を振った。たったそれだけで、あたしを黒い光が――あたし達の必殺技なみの攻撃が襲ってきた。
「ああああああああああああああああああああああああああっ!!」
おかしいよね。戦う力は無くても声は出るんだから。
そんな声も出なくなった時、あたしは変身が解けて膝をついた。
「罪をその命で償いなさい」
「杏子ッ!」
もう一度サタニアの攻撃が来るのを見た時、あたしは「今度こそ死ぬ」と思って目を閉じた。
でも、まだあたしは死ななかった。
「ぅ……っ、ぁ……」
「……ひかる!」
か細い声に目を開けた時、フラリと揺れるひかるの姿が見えた。そのまま倒れ込もうとしたひかるの体を、あたしは慌てて支えた。
「ひかる、しっかりして!」
「だい……じょう……ぶ……」
「元に戻ったわね。死んで罪を償ってもらうわよ」
「……ひかるは死なせない」
あたしは寝かせたひかるを庇うつもりで手を横に広げた。
クルルは地面に伏せたまま起き上がらなくて、立ち上がる気力も無かったあたしに出来る、最大限の抵抗のつもりだった。
「バカなニンゲンね。魔法少女で無ければ盾にならないわ」
「……!」
その言葉を聞いて、自分が何をしているのかようやくわかった。
でも、既に遅かった。
「順にあの世に送ってあげる」
サタニアが放ったのは、細い光線だった。
いつもなら容易く避けられるそんな攻撃も、変身できなくてまともに動けない状態のあたしを殺すには十分だった。
そう、今度こそあたしは死ぬはずだった。
「へぇ?」
「ひか、る……?」
「い……き……」
あたしに体当たりしたひかるの体を、サタニアの光線が貫いた。
最初は、何が起こったのかわからなくて、ただ呆然とひかるのことを見ていた……ひかるの体が倒れても、まだわかってなかった気がするけど。
「ひかる? ひかる……?」
「………」
体をゆすっても、ひかるは反応しなかった。
あの時、初めて「絶望」というものを実感した気がするよ。
「チッ、下手に割り込まれたから急所を外れ……ん?」
動くことも、考えることさえもできなくなったあたしの中を、サタニアの言葉が通り抜けていった。
「面白いことを思い付いたわ」
「う、痛っ……」
突然、あたしは髪を掴まれて無理矢理立たされた。
「ねぇ、貴方はコイツらを助けたいでしょう?」
「……え?」
「取引をしましょう」
戸惑うあたしの耳元で、サタニアは囁いた。
「貴方がワタシの言う事を聞くなら、コイツらを殺さないでおくわ。どうかしら?」
あたしには頷くことしかできなかった。
◇◇◇◇◇◇◇
「それ以来あたしはどんなことでもやって、どんな扱いにも耐えてきた。何度も死のうかと思ったけど、あたしが死んだらひかる達も死ぬと思って、頑張ってきた……」
それまで自嘲することはあっても基本的に淡々と語り続けていたエスクリダオだったが、ぎゅっと拳を握りながら漏らした言葉には彼女の苦難の片鱗が見えた。
「だから……たとえ相手がこころでも、あたしはひかる達を死なせるわけにはいかない」
「お姉ちゃん……」
エスクリダオとハート、2人の間に冷たい風が吹く。
その風に目を細めながらブレイブは言葉を漏らした。
「待ってよ……悪魔の言いなりになったって、約束を守ってもらえるかなんて――」
「わかってる! わかってるよッ!! ひかる達が本当にまだ生きているかどうかなんて、わかりっこないよ! でも、信じるしかないじゃないか……あたしは守るしかないじゃないか……ッ!」
悲鳴に近い叫びをあげたエスクリダオは、ハートに向かって猛然と突進した。
「――!」
咄嗟に構えた手で、エスクリダオの拳を受け止めるハート。
「本当は、こんなことしたくない……!」
漏らす言葉とは裏腹に、エスクリダオは次々に重い一撃を繰り出していく。
対するハートは必死にその攻撃を受け止めることで精一杯だった。
「大切な家族を、この街を、傷付けたくない――でも、だからってひかる達を死なせるわけにもいかない!」
「うっ……」
ひときわ痛烈な一撃に、たまらずハートは数十メートル下がった。
「だから、だから、だからぁああああああああああッ!!!!!!!!!!!!!」
「――!」
「ハート!」
エスクリダオが空中に描いた円。それは一瞬満月のごとく輝いてしかしすぐに黒く染まり、漆黒の光を迸らせた。
まったく受ける態勢に無かったハートの前に立ち、ブレイブはブレイブカリバーでその光線を切り裂く。
2つに分かたれた光線は、2人の左右を通り道路を抉って消えた。
「大丈夫!?」
「う、うん。ありがとう……」
ブレイブに対して頷いたものの、ハートは大丈夫では無かった。
(もしお姉ちゃんを取り戻せても、ひかるさん達が……)
ハートはひかるやミーラ、クルルと面識があった。
それ故に思い悩んでしまい、戦うことに躊躇し始めていた。
一方のブレイブは――
「だああああああああああああッ!!」
変わらずにブレイブカリバーを振り上げかけて、ふとそのブレイブカリバーを消した。
(エスクリダオは、こころちゃんのお姉さん……傷付けるわけには……)
代わりにと繰り出した拳は、軽い音を立ててエスクリダオの手に収まった。
「この、このっ、このッ!」
「………」
蹴りと殴打。エスクリダオへのダメージを狙うブレイブの攻撃は、しかしいずれも威力に乏しかった。
これまで怪物を倒してきた愛剣「ブレイブカリバー」を半ば封じられた状態で、なおかつエスクリダオに勝るとも劣らない戦闘能力を見せた「ブレイブフル」に至るには踏ん切りがついていなかった。
通常の2人で辛酸を舐めさせられた相手に、本調子でないブレイブ1人が挑んだら――結果は火を見るよりも明らかだ。
「はっ!」
「うっ――」
「! ブレイブ!」
まともにハイキックを受けたブレイブが駅ビルに衝突する。
ハートが目線を向けた先、ガラガラと降り注ぐ柱の瓦礫の下でブレイブは呻いた。
「――ごめん」
「ぁっ……」
聞こえた声に目線を戻した時には、既にエスクリダオの拳はハートの体に触れようとしていた。
「――っ、はっ!」
ショッピングモール「アイオン」の壁まで殴り飛ばされ、心臓を握りつぶされたかのような圧迫感に息が詰まる。
「……ごめん、ごめんね……」
ハートのそばに降り立ったエスクリダオは、小さく呟きながら右手をハートに向けた。その手のひらに魔力が集中して光球を形成していく。
「こころ……」
テニスボール大のサイズになったところで、エスクリダオは放とうと――した。
「……ぅ、くっ……」
しかし、それはできなかった。
「どう、して……」
(こころちゃん――ッ!)
エスクリダオが戸惑う中、瓦礫の山から這い出たブレイブはブレイブフルへ変化して駆け出す。
あっという間に、ハートを抱え上げたブレイブは風となってどこかへ姿を消した。
「あたし、は……」
「………」
へたり、と座り込んだエスクリダオを、ドラゴニアは駅ビルの屋上から見つめた。
〈次回予告〉
神谷こころです。本当に、ミラクルエスクリダオがお姉ちゃんだったなんて……それに、ひかるさんやミーラ、クルルが人質になってるということも初めて知りました。わたしはお姉ちゃんを取り戻したい。でも、そうしたらひかるさん達が……どうしたら良いんだろう?
次回、『魔法少女ミラクル☆エンジェルズ Brave&Heart』第7話。
「こころが覚醒!? 誰かを守りたい心!」
わたし達が、奇跡起こします!
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