【特別号】遊園地レポート #1
ぴんぽんぱんぽん…… ずごご♪
おやおや。お知らせまえに、太りすぎのウサミーくんがコケてしまいましたか。
メインマスコットのくせに、みっともない姿を晒してごめんなさい。鉄琴を鳴らすという簡単な役目すら果たせないウサギだなんて、そろそろすぱっと首が飛びますでしょうね。
さて、遊園地からのお知らせです――。
まずは皆様、今年の夏もご来園くださり誠にありがとうございます。
開園からこれまでの、遊園地で起きた不思議な事件たちについてまとめました。お気が向かれましたら物語を思い出し程度にお付き合いください。
尚、以下の内容は公開済エピソードのネタバレを含みます。
未読のお客様は、うっかり遊園地の深淵へダイブしないよう、どうかご注意くださいね。
ちなみに僕は観覧車で受付係をしている者です。
観覧車は、常に人手不足で……お客様の中に、お手伝いしてくださる方はいらっしゃいませんか。アルバイトのお時給は……すみません、十年前の裏野町の最低賃金です。
ウサミーくんのそれより低いんです(――ウサミーくん以下だなんて、この世の最悪ですね)。
でも支配人さんに直訴しますので、少しは良くなるかも(――小鬼さんが面白がって邪魔をしなければ、の話ですけど)。
おっとと、小鬼さんはまだ登場していませんでしたか。
お喋りが過ぎてしまいました。
何せ、こうしてお話しさせて頂くのも、十年ぶりなもので……。
【観覧車編🎡】
十年前の、あの日。
裏野ドリームランドで凄惨な事故が起きました。
みんな、しんでしまいましたね。
おしまい。
十年後、夏。
主役の真澄くんが、いとこの坊ちゃん達と共に、ひっそりと稼働していました夜の裏野ドリームランドへ再訪してくださいます。僕はとても嬉しくて、ずっと受付台に立ち続けていました。この夜を十年も心待ちにしていたのですから。
でも夜の遊園地は、お楽しみがいっぱいです。幻想的な灯り飾りに誘われて、真澄くんはあちこちで足を止めては、ぼんやりそれを眺めておいでです。僕はもう待ちきれず、「乗りますか?」とお声かけしました。少し怖がらせてしまいましたが、真澄くんはやはり素直な坊ちゃんなので、僕を気遣いながらもまた観覧車のカゴへ乗り込んでくださいました。
そして一通り、観覧車を一巡り。
やっと、あの日のことを思い出してくれたのでした。そこで、僕は十年間、ずっと心に決め込んでいたことがあります。真澄くんを従業員として観覧車へ迎え入れることです。それを告げると、「はい」と即答でした。
この日、この瞬間、僕は遊園地で働くようになり、はじめてです。ウサミーくんに感謝をしたのです。十年も入園ゲートのまえへ立ちっぱなしで、ついに真澄くんを、観覧車の子どもを、連れてきてくれたのですから。ウサミーくんには今度ミラーハウスで、苺ジャム酒をぜひ奢らせて頂こうと思います。
僕はべつにウサミーくん、嫌いではないんですよ。
――まあ特別好きでも、ありませんがね。
【アクアツアー編⚓】
アクアツアーは、遊園地が営業していた頃から不気味な噂のあるアトラクションでした。アトラクションの運河の底を、ずうーっと大きな、得体の知れない影が通り過ぎるという目撃談が絶えないのです。お客様にはそれが酷く不評で、従業員にも嫌がられていたのが印象的でしたね。
ここを冒険しているのが、真澄くんと同い年のいとこのひとり、優くんですか。
大変だと思います。アクアツアーは園内で一番謎に包まれた……言い換えれば、遊園地最奥の秘密のアトラクションですので。ああ、どうやら地上へ戻っては来れたようですね。
・アクアツアーの乗り場に漂う、強い薬品臭。
・なぜか巻き上げられていた、跳ね橋。
・地底湖で、こつぜんと消えたボートの乗客たち。
・地底湖でみつけた、水中洞窟とその先。
・洞窟内でみつけた、不気味な生き物たち。
・地上へ戻るための、大がかりな装置(水閘門)
現在、こんなところでしょうか。
ところで、一番の謎はしろくんですね。しろくん……、おもしろい名前を付けましたね。
では、アクアツアーの続き、ぜひお楽しみください(――お行儀の良い観覧車と違って、アクアツアーは野蛮で残酷なお話ですがね)
僕ら従業員一同、皆さまの幸運を地上より祈っています。グッドラック!
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