情報集めと戦闘準備

「此処がレースティリ王国か…」



 コウヤは1時間程前にヨレム村を旅立ち、レースティリ王国に到着していた。



(しっかしあの天使の言ってた事は本当の様だな。中世ヨーロッパ程の街並みだな…)



 ここでレースティリ王国を始めとした大国についてを説明しておこう。名称や方角はあの天使が言っていた通りだ。



 東に『レースティリ王国』西に『スレイル帝国』南に『クレイム法国』そして北に『ドルス魔国』この四つの国が大国と呼ばれている。



 だが、ドルス魔国は先の戦争で既に国は崩壊したとされており、極寒の吹雪が常に吹き荒れるとされる様な場所に行く様な者も居ないので、ずっと放置されているらしい。



 そして、今俺がいるレースティリ王国は

 ヘイズ・レイリ国王の統治の元にあり、様々な小国と友好的な繋がりを持っている。



 まぁ、簡単に言えば、魔王を倒す為に異世界から勇者を召喚しそうな、漫画や小説に出てくる様な如何にも異世界って感じの国だ。



 国の話は置いといて、今の俺についてを説明しておこう。まず、この次元に来てヨレム村の村民達に話しかけていた時に気づいた事。言葉による意思疎通が出来る事だ。理由は全く分からないが普通に日本語で話しかけてみたら普通に通じたし、俺が分かる筈もないこの次元の言語を俺は日本語を聞いている様に自然に理解出来た。



 これは恐らく神、もしくはあの天使のおかげだろう。次は俺の外見について。流石に高校の制服を着て人が多い大国に行く訳にもいかないので、ヨレム村の村民達にお願いして、俺が着れるサイズの服を譲って貰った。真っ黒のTシャツに真っ黒な長ズボン。その上から羽織る様にして、同じく真っ黒なロングコートを着ていた。これで変に思われる事もない。白髪が唯一つの心配点ではあったが、この次元には赤髪や青髪、他にも様々な髪の色があるので其処も心配要らない様だ。



 この街で最初にやるべき事は宿の確保だ。この街ではやるべき事が沢山あるので、数日間この街にいる事になる。なら、夕方に宿をとるより、出来るだけ早くしていた方が良いだろう。



 どこの宿にするかは村長にオススメを教えて貰っていたので、直ぐに決まった。金の心配は要らない。俺が日本でたまたま買って持っていた100円のお役立ちグッズと、宝石に似せて作られたガラス製のストラップをたまたま村に来ていた行商人に見せると、目の色を変えてその全てを金貨50枚ずつで売ってくれと土下座されながら頼まれたので、



「金貨75枚ずつでなら売っても良い」



 と言ったら快く売ってくれた。それだけで金貨450枚。日本円で例えると、金貨1枚は1万円とほぼ同じ価値なので、100円グッズ5つと100円のストラップ、合計約600円が450万円になる。それはつまり、7500倍の価値になったという事だ。



 わかりやすく説明すると、宝くじ当たったとか、株当てたとか仮想通貨で億いったとか、そういうレベルの話だ。これでもう金の心配は要らない。



 ――――――――――――――――――――



 取り敢えず一週間宿を取った。次にするべき事は情報集めだ。村長から、常識的なことは教えて貰ったが、これから集めるのは専門的な情報だ。この国には他の国には類を見ない程の大きな図書館があると聞いた。この国に来たのもぶっちゃければその図書館目当てだ。一週間その図書館に通い続け、専門的な情報も全て頭に叩き込む。



 そうして考えながら歩いている間にその図書館に着いた。大きさは日本の図書館とそう変わらない。図書館の中に入ると確かに大量の本があった。歴史的な書物から小説まで、様々な本があった。やはりこの図書館を選んで正解だった。



 ――――――――――――――――――――



「流石に疲れたな…」



 俺は今、宿のベットで寝転んでいる。日本で言えば12時ぐらいだろうか?思ったより疲労感がある。そうすると、ポケットから板チョコを取り出し、パキッと音を鳴らせながら食べる。口の中に甘みが広がる。



「…甘い、な。やっぱこれだな…疲れたときにはチョコレート、だな。けど、もうあと3枚しかない…どうするか。こっちにチョコレートはあるのか…明日探すか…せめて菓子は買っておかないとな…」



 そして別次元での始めての睡眠がはじまった。



 ――――――――――――――――――――



 目が覚めた。別次元とはいえ、7度目の事となると普通の人間でも慣れてくるものだ。『異常者』と呼ばれたコウヤにとっては、家で起きた様な感覚になっていた。そして、今日でこの次元に来て一週間。図書館で集められる情報は全て頭に叩き込んだ。この次元でもう分からない事は無い。



 なので今日武器などを買い揃えて、明日迷宮ダンジョンに行く。其処で実践経験を積んで、実力を上げる。何故なら、この6日間で情報を集めただけで人間ランクが青から赤に上がったからだ。情報を手に入れた事で戦闘での問題の対処などができる様になったからだろう。ならば更に実践経験を積めば人間ランク銀程度にはなれるだろう、と予想を立てたからだ。



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 で、武器屋に来た。中に入ると、剣や盾。鎧や弓など、様々な武器があった。これにはコウヤも満足だったが、1つ残念だったのは銃や爆発物などの近代的な武器が無かった事だ。


 

「まぁ、分かっていた事だが、仕方ないよな。ここは科学より魔力が発達した世界。銃なんて作らなくても火とか雷とか起こせるんだから。まぁそれは置いといて、なにを買うか…」



 コウヤはぶらぶらといろんな武器を見ていたが、ある1つの物に目が止まった。



「…まさか…この刀身、この重み、この刃文…間違いない…『日本刀』だ。…恐れいったよ。こんな偶然があるとはな。…けど、中々高いな…100万か…まぁ別に良いが…」



 この事実に驚きつつも喜んでいた。何故なら、コウヤは地球のあらゆる事において『異常』なのである。当然、『剣道』においても『異常』だ。子供の頃からやっていて好きだったし、実力も剣道二段、1度だけ出た全国大会でも優勝しているので武器は剣が欲しいと思っていたところだ。



「よし、これを買う」


――――――――――――――――――――




 日本刀『魔滅』をいつもの全身真っ黒のコートとともに腰につけ、十分な量の食糧と飲み物と『保険』を懐にしまい、宿を出る。そして、レースティリ王国にある迷宮ダンジョンの入り口に向けて出発する。

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