魔人
言っている言葉意味を理解するのに数秒かかった。そして何度も脳内の中でその言葉が繰り返された。
〝魔力を持たないという事。魔力を持たない…魔力を持たない…魔力を持たない〟
「えっと、つまり…僕には…魔力が無いと…」
「残念な事にな…」
「他の人間はみんな持ってるのに、僕だけ持ってないって事ですか?」
「そう…じゃな」
絶句。文字通り言葉が出なかった。科学より魔力が発展した次元であると、あの天使は言っていた。つまり魔力が無い人間なんてこの次元ではゴミに等しい。
(ゲーム優勝なんて言ってられるレベルじゃない。このままじゃ一年後には土に還っちまう)
だが、焦ったのはほんのコンマ数秒。すぐに次の思考を巡らせる。
(いや、落ち着け!俺は何を焦っている!まだ、魔力が無いってだけだ。この次元のあり様によってはまだ可能性がある!)
そう自分に言い聞かせ、気を落ち着かせる。
(何にしても今は情報を集める。『諦め』だけはしてはいけない)
「そ、そうですか…。あの、魔法についてで他に何かありますか?」
(魔力が無いのだったら誰よりも魔力についてを知っておかなければならない。今のままじゃその辺の子供にも簡単に殺される)
と、コウヤは考えた。魔力が無い、ならば魔力を持つ者を魔力無しでどう倒すか、どう殺すかを考えておかなければならない。だが、その考えは甘かったと思わされる事になる。
「そうじゃ!まだあの事を言っとらんかった」
(あの事?)
その言葉に眉がピクリと動く。
(イヤな予感がする…)
「ズバリ、『
(な、何だそのスーパーサ○○人みたいなのは⁇)
「人間の体の表面には魔力を体外に放出する為の小さな穴が空いとる。その穴から常に一定量の魔力を放出し続ける事で、
『
『
「は、ははは…」
(マズイな…本当に…)
村長はこの事実について可能性を指摘したのでは無い。出来ない、と断言したのだ。コウヤはその事実に悲しみよりも、もう笑いが込み上げてきた。
「もう魔力についての説明はいいです。…それよりもこの村の人達から聞いた『
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結果、神のゲーム優勝は絶望的であるという事が分かった。だからこそ、コウヤは広い野原で寝そべっている。寝転んでいた方が良い考えが思いつきそうだと考えたからだ。
地球では勉強、スポーツを筆頭に様々な分野で『異常』と呼ばれた男がそこまで追い詰められているのは『
(よし、まずは情報の整理から始める。村長の話によると、『
『
何よりも危惧すべきは『魔獣』の存在である。簡単に説明すると、魔力を持った猛獣である。魔獣は身体のどこかに『
『魔獣』はこの再生能力だけではなく、人間と同じく魔力を持つので魔法を使ってくる個体もいる。
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魔獣の危険度は上の様になる。
そして更に絶望的なのが魔人族だ。魔人族は固有魔法を持たない代わりに殆どの個体がレベル5の魔力量を誇り、魔人族の長『魔王』に至っては、人には誰1人として存在していないレベル6の魔力を持つ。
ここまではまだどうにか出来る範疇だった。だが、魔人族は約100年前に人との全面戦争を起こしており、その戦争の敗戦により、魔人族の数は激減。形だけの国が残されているが、基本的に魔人族は散り散りになっているので、その全てを見つけ出して殺すのは不可能に近い。
だからこそ『異常者』たるコウヤでさえも手を拱いている状況にある。
――――――――――――――――――――
1時間だ。コウヤは1時間考え続け、こう結論を出した。
「まず、1番近くにある大国、レースティリ王国に行き、情報を集め、装備を整える。その後、
コウヤは立ち上がり、空を見上げ、
「強くなる。ゲーム優勝を狙うにしろ、この世界で生きていくにしても何をするにも強さがいる」
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雨が降っていた。その雨と同じ様に身体から赤い液体が流れ出る少女と、その少女を抱き抱える、その雨と同じ様に目から液体を出し続ける傷ついた白髪の少年がいた。
「もう…二度と……負けない………で…ね。」
「あぁ。……約束だ!…俺は…もう…」
そして、少年は決意した。
「誰にも負けない!」
無敗でい続ける事を
――――――――――――――――――――
「俺はもう、負けられないんだ…」
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