第31話 8-2大国ポタンと兄の噂

「くっそ……なぁにが『来週って言いましたよね?』だこの野郎……」


 スオウは苛立っていた。

 相変わらずと言うべきか、またしても例の配信者を追う配信者に捕まってしまい、数時間話す羽目になったのだ。

 確かにあの時は一週間で戻って来るはずだったが、予想外の展開で延期が決まり二週間はかかってしまう事になった。そんなもの、スオウにも予測は出来なかった。


「予定が狂って困ってんのはこっちの方だっての」


 小箱から瓶を取り出し、一本開けると一気に飲み干した。

 空になった瓶をゴミ箱に投げ入れ、上がっていく呼吸に姿勢を崩す。


「くっそ……時間がねぇのはこっちも同じなんだよ……っ」


 胸を抑え、肩で息をする。


「鎮まれ……鎮まれ……」


 呼吸を整える。一向に収まりそうにない動悸に、仕方なくピルケースを開け小さな薬を一錠、口に投げ入れる。


「頼むアウル……早くしてくれ……」


 部屋に響いた声を聞く者はいない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る