ゲームオーバー

第2話 2-1ゲームオーバー

 ピーンポーン。

 チャイムの音で目が覚める。暑苦しい空気に布団を蹴り飛ばし、もうひと眠りしようとしたところで、追い打ちをかけるようにさらに鳴る。

 ピーンポーン。

 仕方なくベッドから出て、インターホン越しに来訪者を確認する。


「…………はい」


 男がボタンを押し、声を出来るだけ低くして応答する。


「お届け物でーす」

「今出ます」


 何度聞いても、この配達員は酒焼けしたような声をしていた。聞き取り辛いが、本人も気にしているかもしれないと思うと聞き返す事も出来ない。


「こちらにフルネームでサインをお願いします」

「はいはい」


 雑な字で【立花潤】と書く。配達員は端末で何かを打ち込んだ後、シールを剥がすと後ろへ下がった。


「ありがとうございます」


 箱を受け取り、玄関を閉める。そこそこ重量のある段ボールを両手で抱え、そのまま玄関へ下ろすとカッターを取り出し手早く開封した。

 中に入っていたのは小さなエナジードリンクの箱がいくつかと、真新しいゲームのパッケージが数本だった。


「まだ積みゲーも消化出来てないんだけどなぁ……」


 エナジードリンクに手を伸ばし、一本取り出して開け、飲み干す。


「ん……?」


 寝惚けていた頭がスッキリするのを感じていると、小さく電子音が鳴っている事に気が付いた。

 散らかった部屋を器用に歩き、パソコンを確認するとスオウからの着信がいくつも来ていた。あまりの数に、緊急性を感じ心臓が跳ねあがる。

 慌ててヘッドセットを装着するも、かかっていたのは音声通話だった。


『やっと出た‼ おいアウル、大変な事になってんぞ‼』


 応答ボタンを押した瞬間にスオウが叫ぶ。


「なに、どうしたの」

『お前のクロックアカウントが消えてる‼』

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