アイカツ!童話「おじいさんのドレス」

とある町に、おじいさんがひとりで住んでいました。


おじいさんの仕事は、きれいなドレスをつくることです。


よいしょ、よいしょ。


毎日、毎日、こつこつとつくります。


ドレスをつくるのは、とてもたいへんです。


でも、ドレスを着たアイドルはみんなを笑顔にします。それを見て、おじいさんは、またがんばってドレスをつくります。


よいしょ、よいしょ。


こんこん。


よいしょ、よいしょ。


こんこん、こんこん。


だれかがドアを叩きます。


「おじいさん、こんにちは」


水色のワンピースを着た、ちいさな女の子がにこにこと笑っています。


「なんの用かな?」


「わたしにもドレスをつくってほしいの」


うーん、とおじいさんは考えます。


「今は他のアイドルのドレスをつくっているから、また今度」


「今度って、いつ?」


「君がもう少し大きくなったらね」


「うん、わかった」


にこにこしたまま、女の子は帰りました。


それから、次の日。


こんこん、こんこん。


「おじいさん、こんにちは」


「今日はどうしたのかな」


「昨日より大きくなったから、わたしにもドレスをつくってほしいの」


「うーん、もう少し大きくなったらね」


「うん、わかった」


女の子は帰りました。


それから、次の日。


こんこん、こんこん。


「おじいさん、こんにちは」


その次の日も、そのまた次の日も。


「おじいさん、こんにちは。昨日より大きくなったよ」


こまったおじいさんは、部屋の奥から小物入れを持ってきました。かぼちゃの形をした、透明なガラスの入れ物です。


「ここに毎日、一粒ずつかぼちゃの種を入れなさい。いっぱいになったら、ドレスをつくってあげる」


「ありがとう、おじいさん。毎日忘れずに入れるね」


昨日よりもにこにこして、女の子は帰りました。


それから、女の子はおじいさんの家に来なくなりました。


おじいさんは、ほっとして、仕事に戻りました。


よいしょ、よいしょ。


今日も、明日も、ドレスを作ります。一着、二着、三着……いろんなアイドルが、おじいさんのドレスで踊りました。


こんこん。


ある日、誰かがドアを叩きました。


なんだかひさしぶりです。


けれど、ドアを開けても誰もいません。


「はて、聞き間違いかな」


ドアを閉めようとすると、こつん、と何かが引っかかりました。


それは、かぼちゃの小物入れでした。透明だった入れ物は、ぎっしり詰まったかぼちゃの種で、すっかり黄色くなっていました。


けれど、あの女の子はどこにもいません。


「かぼちゃの入れ物を持った、水色のワンピースを着た女の子を知らないかい?」


おじいさんは、町の人に聞いて回ります。


けれど、知っている人は見つかりません。


それでも、聞いて回ります。


数えきれないぐらい、たくさんの人に聞きました。


一体、どこまで探しに来たでしょうか。


大きな広場で座っている人が、やっと教えてくれました。


「あの家に、いつも水色のワンピースを着た女の子が住んでいましたよ」


指さしたのは、広場の隣にある二階建てのお家でした。


「病気がちで、いつも二階の窓から顔を出してね。かぼちゃの入れ物を抱えながら、広場で踊るアイドルを眺めていたなぁ。大きくなったら、アイドルになるんだって言って。でも、かわいそうに、このあいだ亡くなってしまったそうですよ」


おじいさんは、とぼとぼと家に帰りました。


それから、おじいさんはすぐに新しいドレスを作りはじめました。


よいしょ、よいしょ。


毎日、毎日、こつこつと作ります。


ドレスをつくるのは、とてもたいへんです。


よいしょ、よいしょ。


それでもおじいさんは作ります。


よいしょ、よいしょ。


とうとう、できました。最後の仕上げに、ドレスをカードに変えます。ドレスを飾った機械の前で、おじいさんは思いました。


「これも、一緒に」


かぼちゃの小物入れも、入れました。


ボタンを押すと、ドレスは四枚のカードになりました。


かぼちゃのような、かわいらしいドレスです。


それから毎年、ハロウィンの季節になると、たくさんのアイドルがこのドレスを着ます。かぼちゃのドレスを着たアイドルは、みんな言いました。


「水色の、やさしい顔をしたおばけが助けてくれたよ」



-おしまい-

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