第20話クロと雫と犬神と
「一番端を見てみな。ほら、ここに来た時の入り口の穴があるだろ。その右上だよ。あそこから順に、ぐるりとこの壁画は始まっていくのさ。だから、あの最初のは神話の時代だね。だから、今は詳しく説明しないよ。簡単に言うと、彗星には神様がいるとかなんとか書いてあるんだよ。まっ、アタシも詳しくはないからね。そもそも神話なんて、大部分は伝承の寄せ集めが多いからね。そうそう、
それを凝視する
「うん、おばあちゃん。わかるよ。あれがハレー彗星なんだね。そして、誰かがハレー彗星に両手を広げてる。その後ろにも人がいるね。その人の前には、
「そうだね、両手を広げているのが、
ここにきてから色々と思いだしているが、その中でもこれは最悪の奴だ。
いやな記憶を呼び起こしてくれたものだ。俺が忘れたかった記憶を、よくも思い出させてくれたな、
だが、何故だ。
俺が思っている以上に、俺は俺自身の事を忘れている。どうしても、アイツの名前を思い出せない。
「
「そうだね、やっぱりそこから始めないといけないのかね……。まあ、いいだろう。そもそも、
「だから、
再び
「さあね。アタシがそうなったわけじゃないしね。でも、怖くなかったはずだよ。伝承が正しければね」
おいおい、
「そう……。死ぬことが怖くないって、いいよね……。でも、
――
(…………………)
「…………どうだろうね。昔の人の気持ちはわからないね。ただ、
「封印? 感情を? どうやって? 何のために? そもそも、そんなことが可能なの?」
「どうやってかは、さすがのアタシもわからないね。伝承にも秘儀とされているから
――なんだと!?
(…………………ねえ、クロ……。私……)
――なんだ、アキハ。今はこの
(うん……)
「記憶? 何故? そんな事してどうなるの? 殺されちゃうんだよ?」
「ほら、神話の壁画の所にあるだろ?
――封印の儀にそんな役割があったのか? しかし、あれから千年経っている。ひょっとして、生まれ変わっているのか?
(…………。クロ…………)
「そうなんだ……。なんだか、親切なのか迷惑なのか分からないね。でも、
「そうでもないよ。言っただろ?
「そうなんだ……。魂か……」
それだけじゃない。その体質は
「まあ、誰にでも出来るわけじゃない。
なんだ? それは俺も知らない事だぞ? でも、当たり前か。俺が
たしかに、はるか昔ここに来たことはある。
『アイツが、そこに描かれていることが必要になります』と言うから……。
「そうなんだ。それはお母さんも言ってたよ。私の目の色が変わったのは、あの後だって。これって、アースアイっていう珍しい目なんだって。自分で言うのもなんだけど、毎年色が変わっていく気がするんだ。最初は薄い茶色だったのに、だんだん青くなっていくの。よく『カラコン?』って聞かれるから、最近は『そう』って答えてるんだ」
小首をかしげ、微笑みを浮かべる
それを悲しげな顔が受け止める。
高校になり、人と深くかかわらないようになった
だが、それよりも――。
「
「ごめん、おばあちゃん。クロが話の続きを聞きたがってる」
「ふん、クソ生意気な黒猫だね。まあ、いいだろう。教えてやるさ。『
――なんだと!? それは一体どういう事だ? 詳しく話せ、
(………………………………)
「え? それって、どういう……」
「アタシもはっきりとは知らないよ。だけど、アンタが誰かの生まれ変わりなのかもしれないってことだよ。
「
(クロ…………)
「クロ? どうしたの? 今までおとなしかったのに。抱っこ? 最近、私に抱っこされるの、好きだよね……。ちがうか……。しってるよね。私がクロを利用してるんだもん。でも、今はちがう? クロ? 何か気になることがあった?」
――そんなことはどうでもいい。今はお前がそれを見てるかどうかが知りたいんだ。抱っこしろと言ったわけじゃないぞ? でも、どうしてもお前がしたいのなら、させてやる。ほら。
(クロ。覚えてないの?
――なんだと!? いつだ? そんな事、いつ話してた?
(クロがちゃんと聞いてないから……。でも、クロの記憶が漏れてるんじゃなくて、
「
「うるさい黒猫だね。何をそんなに必死になってるんだい?
「…………見てないよ。見たことないよ、そんな夢……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます