第18話犬神の家
「よく来たね、アンタたち。ここは何にもないところだよ。だからこそ今のアンタらにはちょうどいい環境だろうよ。特に
開口一番、とんでもないことを言う
だが、
ここにいる人間たちは、いったいどう考えているのだろう。
どうでもいい、
八人乗りのボックスカー。
二列目の中央に
そして、最後尾には
はっきり言って屈辱だった。
電車に乗るというから、俺はおとなしく
だが、状況は変化した。車だ。移動が電車から車に変化した。
瞬時に俺は、俺の華麗な計画を思いついた。
車は完全な密室。しかも、人間は席を自由に移動できない。
だが、俺は違う。やりたい放題だ。
まず、
そこで、すかさず前の列に移動する。
最終的に、
問題は、常に真ん中の位置にいる
コイツが厄介だ。
だが、
この瞬時にひらめいた、俺の
それが、
クソ! 暴れてやろうか!
車の中で、
だが、そのたびに
まあ、予想外の
甘えた声を
結局、ほとんど
だが、俺も
まあ、それはできないのだがな。
今回、
元々、
『ほら、いろいろ説明がまだだろうし、通報されても困るしね。年頃の女の子が、体一つでどこかに行くなんてありえないから。
遠い目をしていた
おそらく何歳か老けたのかもしれない。――絶対本人には言わないけど……。
降りるときに、
「ほんと!? ラッキー!
パジャマのまま、一人喜びの声を上げる
「あっ、でも。クロと遊ぶものがないや……。ねえ、
――おい、
「わかったよ。今回アンタだけは完全にお客さん扱いしてやるよ」
「ホント? ラッキー! クロ! 待っててね!」
「おや、アタシは違うのかい? そいつはつれないじゃないかい?」
一つ頭が出ているところから、それらしく文句を言う
だが、俺には何となくわかっていた。
その言葉に反応した、
「アンタが勝手につれてくると言って飛び出したんだろ? アタシの用事は、そこの黒猫と
小さく鼻を鳴らす
「快適だったよ! 人里から離れたここは空気も美味い。それに、アンタの料理も格別だったね! 欲を言えば、肉が欲しかったところだけどね。まあ、ここは山の中だ。どうしても欲しくなったら、その辺から仕入れるよ。家賃がいるなら、今から帰る
なるほど、
だが、肉がないのは不便だな。
よし、
「シズさんや、そういう事は聞こえないところで言っとくれ。
「アタシは、隠し事が嫌いなんだよ。どうもこの子は、それがわかってなくてね。大事な事を言わないんだよ。だからついついでしゃばってしまう。ほら、早く荷物を入れな、
ここからでは、
「ボロ屋は一言多いんだよ、シズさん。ここは、平安時代からある由緒正しい
「おや? そうだったかね? 年寄りになると、物覚えが悪くてね。どのみち、足元には気を付けた方がいいってことだよ。まあ、こんな所で立ち話もなんだ。山の上とはいっても、太陽の下は暑いからね。早く入ってゆっくりとするか。車はいいけど、どうもあたしには窮屈だよ。ほら、アンタらもさっさと入んな。何にもないところだけど、遠慮しなくていいからね」
「アンタはちょっと遠慮してほしいところだよ、シズさんや。そうだ、アンタが勝手に人数増やしたんだ。責任とって、
「まっ、しょうがないね。
俺の目の前を通り過ぎるようにして家に入る
その背中が視界から消えるとき、
「
「ふん、いい面構えじゃないか。そう焦りなさんな。あとでいい所に連れてってやるよ、クロ」
――あいにく、圏外認定した婆さんと一緒に行く趣味はない。隙を見て、逃げ出してやる。なぁ、アキハ。
(……………………)
――アキハ? どうした?
(……………………)
――なんだ? まだ寝てるのか? まあ、いい。移動中にあれだけ寝てたくせに、まだ寝るとは、ますます横に広がっても知らんからな。
(ねえ、クロ…………。私…………、ここ……知ってる気がする……)
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