第13話お泊り会(後編)
「あぁぁああ! もう駄目。限界! 頭、爆発するぅ~」
頭をかきむしり、ほぼ大の字で体を投げ出した
「
「むむ! ちょっとバカにされている気がするぞ?
むくりと起き上がる
そのまま頬を少し膨らませながら、ジト目で
「あれ? そう聞こえた? 冗談だよ!」
「ならよろしい!」
さっきまで静かだった部屋に、笑顔の
「でも、今日の
「
にやにやと、頬杖をついて応える
「――クロのこと?」
「さすが、
いそいそと、
その姿を微笑みながら、他の二人も自分の勉強道具を片付け始める。
さっき見たのは気のせいだったのかもしれない。今の
「もう!
「それは私も聞きたかった。
「ううん、大丈夫。平気」
自らの口に手を当て、申し訳なさそうにする
――でも、さっきのあれは何だったのかしら? 勘違い? 見間違い?
まるで幻だったかのように、
「
それでも、ばつの悪そうな顔をする
ただ、カバンの中の何かを探しているのだろう。ゴソゴソとカバンの中身を取り出し始める。
「そう? そんな事、一緒に暮らしていても感じないけど?」
それは
「甘いね。甘いよ、
「そう?
「え!? 私にはよく分からないけど……。でも、あの子の目。ちょっと怖い気もする。時々獲物を狙う目で、私を見てる気がする……」
その瞬間、
その視線を感じて、両手で胸を守る
半ば身をよじりながら恥じらう姿。それはまさに、クロ好みと言えるだろう。
「
「もう! そんな無責任な事でいいの? 飼い主だよね、
和やかにほほ笑む
つられるように、
そこには自らの胸に手を当てて、よせてあげる
でも、二人の視線を感じたのだろう。
慌てた
だが、次の瞬間、人差し指を振りながら、
「そう! そこがまたツンデレな所だね! 本当はあたしにこそ抱きしめられたいくせに、あたしには近づいてこない。ホント、照れ隠しもいいところだよ」
自ら顔を赤らめて宣言する
『自分で言ってて照れてるよ』
その雰囲気に耐えるかのように、
「たいした推理だね、
「フッフッフ。それこそが真実だからね、
ビシッと指さす
僅かな沈黙。
だけど、その雰囲気に耐え兼ねて、三人とも吹きだすように笑いだす。
「それはそうと、
「それはもう! ビビッとくるもの! 授業中に寝てても分かる」
――それはどうかと思うけど、確かに
学校にきてまずクロがする事。
それは、
寒がりなクロの代わりに先に学校にいるからわかる。クロと合流するときに、
「どういうこと?
本当に驚いているのだろう。確かに、
でも、
日中、クロが家にいない事を。
「あれ?
「結構じゃないよ? 毎日だよ」
「そうなんだ……。ちっとも知らなかった……。――違う黒猫じゃない?」
「左耳だけ白い黒猫なんて、たぶんいないと思う。でも、私も
だが、何かを言おうとした
自信をたっぷりみなぎらせて。
「ふっふっふ。クロの事なら、このあたしに任せてよ! 大体二時間目の終わりに教室を覗きに来るよ。ほら、窓の外に大きなクスノキがあるよね? あそこにいるよ、いつもそう」
「もしかして、
「もっちろん! クロに歓迎のハグをするためだよ!」
完全にドヤ顔の
「でも、あと一歩の所で逃げられるんだよね。あたしが来たことがわかると、木から降りて『にゃーん』って挨拶して逃げるんだよね」
「そうなんだ? 何て言ってるんだろ?」
その一言が、
「そう! なんだか、『ほら、俺をつかまえてみな!』って言われてる気がするんだよね。追いかけて離されても、時々こっち見てるし。あたしが追いかけてばてた時は、休憩もいれてくれるんだよ! 自分は何もない所で、何か捕まえてるふりをしてさ!」
「そうなんだ。三時間目までの休み時間、ずっとそんなことしてたんだ」
「そうなんだ……」
呆れる
うつむく
「その後、たぶん学校中を歩き回ってるみたい。たまに男子が『黒猫だ!』って騒いでるでしょ? アレ、全部クロだよ。間違いないよ。わかるもん」
「
ジト目の
だから、二人はまったく気づいていない。
今の
「な、ぎ、さぁ~?」
「えへっ、ばれた?」
問い詰める
「もういいわよ。人が話してる途中でどこかに行くと思ったら、そういう事だったのね」
言葉とは裏腹に、ほんの少しだけ怒っているように見せつける
「ごめん、
そのまま両手を合わせて謝る
「別に、怒ってるわけじゃないけど、それならそうと、言ってくれたらいいのに」
「まあ、大して言う事じゃないしね。それに、さっきも言ったけど。クロってすぐどこかに行っちゃうし。見つけたら、迅速な行動が必要なの。でも、あたしの姿見つけたら、すぐ逃げちゃうけどね」
「それでも追いかけるんだ?」
「甘いね、
「なるほど、わかった。
「ハッ! あたしって、そうだったんだ! そうか、これが恋……」
自らの感情に初めて気が付いたように、
「いまさら? どうする?
小さくため息をつきながら、
さっきまで一切会話に参加しないでいた
そのとき二人は初めてその事に気が付いたのだろう。
二人の視線が
うつむいたままの
「……………………いいよね、
「
「どうしたの、
それは無意識に
その視線を遮るかのように。
吐露した感情を霧散させるかのように。
「ううん、そうじゃないの。そうじゃないよ。ただ、クロは私のこと嫌いだろうから……」
言葉とは裏腹に、笑顔の
「
困った
だが、
「どうして
珍しく怒る
その事は
「どうしてって……。説明できないよ。ただ、そう感じるの」
再びうつむく、
「
見かねたように、
その気遣いと
「うーん、感じるって言われてもなぁ。でも……。
「なに?
改めて、
その間で、
「
目を閉じ、整理するかのように、
「どうって……。シロはかけがえのない存在だった。言っても意味が分かんないかもしれないけど……。私の事……。たぶん色々守ってくれてた……。クロは、シロがいなくなった時に、私の所に来てくれた。多分、シロがいなくなった事と、関係あると思う……。多分、今。シロの代わりに私を守ってくれてるんだと思う……」
――ほんと、驚いた。勘の鋭い子だという事は分かってたけど、ここまでわかっているなんて……。
それは、
「そこだよ、
「え!? どういう――」「シロはシロ! クロはクロ!」
「たとえ、
「
眼に涙を浮かべ、まっすぐに
でも、
それが大事なことだと言わんばかりに、いつにない真剣な眼差しを向けて。
「ねぇ、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます