第5話渚と葵
「こんにちは、
「
可愛らしいと清楚、そして若葉のような生命力にあふれる声に、思わず耳が反応する。
(クロのスケベ。エッチ、ヘンタイ、色魔!)
耳の中に隠れているアキハに何と言われようとも、この本能は止まらない。だが、この俺は硬派で通っている千年守護獣。そう易々と、小娘ごときの色仕掛けには屈しない。
だから、しずかに薄目を開けて様子を見ることにする。
そう、これは確認なのだ。
「
「大丈夫だよ、
なるほど、なるほど。やはりコイツが
うん、抱きしめられるなら、コイツだな。ヒゲがビビッときたから間違いない。
たしか
頑張れ、
成長するのが、若さの特権ってやつだ。
だから気を落とすな、
――おい、
「クロ~? なんだかよからぬこと考えてないかな?」
(クロ? ちょっと痛い目、見た方がいいんじゃないかな?)
「
「シロが、あたしに挨拶しない。そして黒い。しかも、なんだか反抗的。不良だ。不良になってしまった。これは一大事」
――いや、
「これは少し調教し直す必要がある。ちょっと黒くなったくらいで、いきがるなんて。でも、大丈夫。あたしの猫じゃらし
――おい、ちょっとまて、
「ふふ、クロもちょっと反省した方がいいよ。
(そうだ! そうだ!)
――な!? お前は守護獣の心が読めるのか? そんなのシロの記憶にもない――『あの子は勘のいい子です』――ってあったよ! でも、良すぎるだろ、その勘! っていうか、アキハだまれ!
「ふっふっふ、抵抗しても無駄だよ、君。ほらほらほら~」
(クロ、シロさんの遺言守ろうね!)
――いや、そっちは思い出したくない! それより、クソ! マタタビめ! おい! アキハ!
(きこえなーい。聞こえてても、きこえなーい)
「クロ~。そろそろ観念したら~」
「そうか、君はクロというのか。相変わらず、
――いや、だから別人だって……。って、お前わかって……。クソ、猫の体が反応する!
「ほほう、まだ抵抗するかね。無駄にクロにジョブチェンジしたわけじゃないんだ。でも、甘い。左耳だけ白いままだよ? ふふん。さては、この
――いえ、結構です。そっちの
「クロ? 私が抱っこしてあげるからね。
「……………。にゃーん」
「うん、よろしい」
沸き起こる笑い声。耳の中でも大爆笑が続いている。
「あらあら、たのしそうね。ねえ、
「はーい」
「おばさま、私達が
「ありがとう、
「おばさん、あたしもいるよ」
「そうね、
「もちろんだよ」「
沸き起こる笑い声。
――チッ、これだから人間は……。
「じゃあ、二人共お願いね」
すでに部屋を出る準備をしていた
残された俺と
何かある。何か言いたいことがある。いや、それだけじゃないか……。
シロの記憶にはないけど、この雰囲気を以前どこかで感じたことがある。
言霊というものを信じている者がもつ、言葉にしたくないという思い。でも、自分の心の中では、その想いに溺れそうになっているものがもつ雰囲気だ。
「あの子の
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