第29話 夜の時間
この間の診察時、診察後こ面談で私は夜の時間が好きだと行った。それはどうして、と聞かれて、暗いほうがほっとするからと答えた。
私はずっと、夜の闇が苦手だったのに、去年退院してから、そこは大きく変わったなぁと思う。
入院時、眠れなくて少しうろうろする日もあれば、とんぷくをもらう日もあった。同じように夜にさまよう患者はわりと見かけた。一時間に一度の看護師の見回りは、よく寝たふりをしていた。
私はあの時、特別暗闇が好きになったわけでもなかった。暗闇というか、廊下の電気は明々とついているわけだし。
退院して、病勢により、昼の時間がただ苦痛で仕方がない時、それは思うように身体が動かずだるいわりに、心だけがせかせかして、行き場のないような苦痛。そんな昼を過ごすと、眠れる夜が待ち遠しくて仕方がない。ほんとうに、叫びたいような気分とは、身体や心のコントロールが自分では不可能なときになる。
夜は周りも静かになる。暗闇に自分の心が溶けていくような感覚を覚える。私の心は暗いのかもしれない。今はまだ暗闇に、ずっと以前から暗闇にいたのかもしれない。
いつか抜けるかもしれないという予感を抱いて。
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